LINKフルコン制御のターボ仕様!

全面カーボン貼りのエンジンルームも圧巻!

若手ドライバーの登竜門として多いに盛り上がった1970〜80年代のマイナーツーリングレース。TSと呼ばれる特殊ツーリングカーによって争われ、メインレースのGC(通称グラチャン)を凌ぐほどの人気を誇った。その主役だったのがB310サニーだ。

TUNER:ノットパーツ 常陸代表(左)/OWNER:井上さん(右)

「昔から旧車は好きでしたね。若い頃は南部市場のストリートゼロヨンをよく見に行きました。20年ほど前にサニトラを手に入れてから筑波のクラシックカーレース(JCCA)を見に行くようになり、TS仕様に憧れるようになりました」とオーナーの井上さん。

「手に入れたのは年配の方が乗っていたフルノーマル車。年式なりの劣化は進んでいましたが、コンディションは決して悪くはありませんでした。ただインジェクション仕様のA14エンジンに4速マニュアルという組み合せは、とにかく非力でしたね…」と振り返る。

最初に手を付けたのは外装まわり。念願だったオーバーフェンダーやフロントスポイラーを追加してオールペンに着手。往年のTSスタイルに仕上がった。ただ、これまで所有してきた愛車はターボ車が中心。過去にはR31スカイラインのタービン交換仕様に乗るなどパワー志向も強い井上さんが、見た目だけの仕様に満足できるはずがない。

「このスタイルで、中身はノーマルっていうのもどうかな…」と思いはじめるまでに、さほど時間は掛からなかった。パワーアップに踏み切ろうと、スーパーチャージャー仕様のサニトラを手掛けていた東京都八王子市の『ノットパーツ』を訪れたという。

そしてターボ仕様のA14改15エンジン製作をオーダー。オーナーの井上さんがこだわったのは、エンジンが一発で始動できて、街乗りからストレスなくこなせる快速スペックだ。LINKのフルコンでマネージメントすることで、1年中いつでもどこでも安心して走れる万能な機関を手に入れた。

A型では珍しいターボ仕様だが、エンジン内部にもきっちりと手が入る。腰下はCPの77φ鍛造ピストンやH断面コンロッド、バランス取りしたA15純正クランクで強化。ヘッドにはターボ対応のJUN68度ハイカムやアルミ製プッシュロッドを組み込み、レブリミットは7200rpmに設定。トルクフルでありながら、上まで気持ちよく回る仕様に仕上げられた。

ちなみにタービンはS13純正を経て、現在はHKS・GT4135に変更。さらにパワーを上乗せしたうえに、立ち上がりもよくなった。最大ブースト圧1.3キロ時に245psを発揮しているが、「現状のバルブ付きワンオフマフラーはメイン60φなので実は抜けがイマイチ。今後はそのあたりの仕様を詰めて300ps近くまで持っていきたいですね」と製作を担当したノットパーツの常陸さん。

昔ながらのデスビは廃して、ダイレクトイグニッション化。高回転、高負荷時でも安定した点火を実現している。またノットパーツオリジナルの強化オイルポンプも採用。

当初、エンジンO/H時にエンジンルームの塗装を予定していたが、どうせならおもしろいことをやろうとカーボン貼りを決行。施工を担当したのは名門JUNで、サービスホールも隠してスッキリと仕上げた。ストラットタワー周辺やコアサポート前面までカーボンを貼り込んでいるが、硬化樹脂の作用で大幅な剛性アップとハンドリングの改善に繋がったという。

ターボ化に伴い、クーリング系も大幅強化。容量が大きいトラストのAE86用アルミラジエーターに交換したうえで、オイルクーラーも追加。インタークーラーはサイズと性能がよく、レイアウトしやすい形状であったハイエース純正のドロンカップ式を流用加工して装備する。

TSレースでも活躍した2ドアクーペは貴重な存在。丸目ライトの前期型で、1400S-GXEのインジェクション(EGI)仕様がベース。外装はVW純正のタングステンシルバーでオールペン済みだ。当時風にウインカーやテールレンズを逆さにしているのも渋い。ホイールはSSRマークⅡの13インチで、サイズはフロントが8J、リヤが9Jをセット。

フロントブレーキはウィルウッド製キャリパー+260㎜ローターの組み合せ。リヤはドラムのままだが、今後アップデート予定だ。ブレーキバランサーも装備する。足まわりはマツオカの車高調をチョイスする。

車内のコンディションも上々。コラム上にブリッツのブースト計をレイアウトし、コンソールまわりにPLXのA/F計や、マルチメーターをインストール。スッキリとしたコクピットにまとめ上げた。

サイトウロ-ルケージのロールケ−ジを組み込みボディ剛性をアップ。シートは運転席にブリッドのフルバケ、助手席にレカロのセミバケを装備する。

車内のタブレットは、エンジン制御を司るLINKからの情報を表示するマルチモニターとして機能する。

クイックリリースステアリングボスは、ノットパーツのオリジナル。ステアリングが手前に来すぎてしまう…という悩みを解決する優れものだ。ワークスベルの脱着式ボス(ラフィックス)に対応する。適合車両は多岐に渡るのでノットパーツまでお問い合わせを。

懐かしのTS仕様をオマージュしつつ、最新パーツ&技術の投入により見た目も走りもスキなしの1台へと生まれ変わった310クーペ。定番には捕らわれない、その作り込みに脱帽だ。

⚫︎取材協力:ノットパーツ 東京都八王子市川町 24-1 TEL:042-651-5566

「キャブなのに電子制御!?」デジタル制御で昭和のB110サニーが未来へ加速する!

【関連リンク】
ノットパーツ
https://flatknot.co.jp