
中古車の現状と問題点

専業というわけではないものの、当記事に協力してくれたクオリティーワークスは2ストローク全般を得意とするショップで、これまでにメンテナンスやカスタムを行ったRZ-Rは数百台に及んでいる。以下の文章では同店の代表を務める山下さんに聞いた、RZ-Rに関する話を紹介しよう。最初のテーマは近年の中古車相場。
「中古車相場は、何とも言い難いですね。旧車の価格はここ数年で全体的に上がっていて、一昔前は20~30万円前後が普通だったRZ-Rの場合は、最近は40~100万円前後と、かなりの幅があるんです。しかも、安い車両が絶対にダメではないし、高い車両が必ずしも絶好調でもない。だからこれからRZ-Rを購入するなら、価格にはあまり惑わされずに、信頼できるショップ、2ストに精通したショップで購入するのが一番でしょう」

ただし現実的な話をするなら、そういうライダーはあまり多くはないようで、クオリティーワークスでは他店やネットオークションで調子の悪いRZ-Rを購入したライダーが、修理の相談に訪れることが珍しくないと言う。
「ピストンとシリンダーの抱きつき・焼きつき、クランクベアリングのガタ、YPVSの作動不良、フレームの曲がり、電装系パーツの劣化など、調子が悪い理由は千差万別です。もっともRZ-Rの場合は、純正とリプロを合わせて考えれば、補修部品はほとんどが揃いますし、ウチでは中古部品を大量にストックしているので、修理ができないという事態に直面したことはありません」
山下さんが述べてくれた問題に加えて、ネットでRZ-Rの弱点を検索すると、ウォーターポンプシールの破損によるミッション室への冷却水の侵入、レギュレターレクチファイヤーのパンク、ガソリンタンク内の錆びを起因とする底面の穴開きなどという事例がヒットする。
「その3点は同時代の他のヤマハ車にも通じる話ですし、ガソリンタンクは補修かリプロ品の投入、レギュレターレクチファイアーは対策品への交換、ウォーターポンプシールは純正部品を使った修理で対応できるので、個人的には弱点と言うほどではないと思いますよ」
カスタムの傾向
クオリティーワークスのお客さんが所有するRZ-Rは、何らかのカスタムが行われている車両が大半で、フルノーマル車はごくわずかしか存在しない。この点については、山下さんの趣向を反映しているのだろうか。
「いえ、お客さんの趣向です(笑)。逆に僕自身は、ノーマルはノーマルで大いにアリと感じているくらいですから。と言っても、カスタムが魅力的なのは事実ですし、RZ-Rのオーナーさんは自分好みの仕様を作ることを意識している方が多いので、車両の状況と予算に応じて、こちらからカスタムを提案することはよくあります」
RZ-Rのカスタムと言ったら、一昔前は動力性能向上を徹底追及する車両が多かったものの、最近は補修を兼ねてカスタム、というケースが増えているようだ。
「十中八九以上の確率でダンパーが抜けているリアショック、現代の交通事情を考えると制動力が物足りないフロントブレーキ、ボディやスロットルバルブが摩耗したキャブレター、本来の性能を発揮していない点火系などに関しては、アフターマーケット製への交換をオススメしています。逆にそういった部品で純正にこだわると、RZ-Rは本来の資質を味わうのが難しいんですよ」

現行車と大差ない感覚で付き合える
クオリティーワークスでRZ-Rのフルレストア車を購入するとなったら、価格はどのくらいなのだろうか。
「ベース車のコンディションや、どこまでノーマルにこだわるかによりけりですが、新車に近い状態を目指す場合は、やっぱり100万円以上になるでしょう。もっともこれまでにウチが販売したRZ-Rで、納車前に徹底的なフルレストアを行った事例はわずかで、ほとんどのお客さんが納車後に少しずつ手を入れていくという路線を選択しいています。僕としてもそういった路線のほうが、バイクを長く楽しめそうな気がしますね」

当記事を読んでRZ-Rの購入を考えたライダーがいるとすれば、山下さんはどんなアドバイスをするのだろう。
「1980年代生まれの2ストと言うと、トラブルが心配とか維持が大変というイメージを持つ人がいるかもしれませんが、きちんと整備が行き届いた車両なら、現行車と大差ない感覚で付き合うことができるので、興味があるならぜひ、でしょうか。もちろん、同時代に生産された他の2ストにもそういう車両は存在しますが、日常域の楽しさや維持の容易さ、カスタムの可能性という点で、RZ-Rを上回るモデルはなかなかないと思いますよ」







