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今日は何の日?■タフながら都会派SUVを目指したテラノ・レグラス
1996(平成8)年8月27日、日産自動車は本格4WDオフローダー・2代目「テラノ」の派生車「テラノ・レグラス」を発売した。RVブームの中で、三菱「パジェロ」とトヨタ「ハイラックスサーフ」に対抗するために日産が放った「テラノ」だったが、テラノ・レグラスはアーバンテイストのラグジュアリーSUVへ舵を切った。

RVブームのなかで日産が放った初代テラノ
1980年代半ば、米国で流行したアウトドアブームが日本にも波及し、走破性の高い4WDを装備した本格オフローダーのRVブームに火が付いた。

いち早く人気を獲得したのは、1982年に登場した三菱自動車の「パジェロ」、トヨタの「ハイラックスサーフ」で、それらに対抗する形で1986年に日産自動車が投入したのが、米国で基本デザインを描いたテラノだった。

小型ピックアップのシャシーを使って、2ドアハードトップのボディを被せたオフローダーらしい逞しいスタイリングで、乗用車のように座席位置を低めに設定していたのが特徴。パワートレインは、最高出力85psの2.7L直4 OHVディーゼルと5速MTの組み合わせ、駆動方式はパートタイム4WDが採用された。
その後テラノは、140psの3.0L V6 SOHCガソリンエンジンや100psのディーゼルターボ、4ドアモデルなどを追加して商品強化を図ったが、パジェロとハラックスサーフの勢いを脅かすことはできなかった。
フルタイム4WDで本格SUVと進化した2代目テラノ
1995年にモデルチェンジした2代目テラノは、先代のコンセプトを継承しながら、フレームをモノコック構造のボディ内に組み込んだモノフレーム構造を採用して、強度を高めながらも軽量化を実現。2列5名乗車の先代よりやや丸みを帯びたワゴンスタイルで、全車3ナンバーながら3列シートを持つパジェロやハイラックスサーフよりコンパクトに仕上げられた。

パワートレインは、最高出力130psの2.7L直4 OHV IC(インタークーラー)ディーゼルターボと170psの3.3L V6 SOHCガソリンエンジンの2種と5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式はフルタイム4WD(オールモード4×4)および先代と同じパートタイム4WDが用意された。
“オールモード4×4”は、FRをベースに走行状態を検知して、電子制御の油圧多版クラッチをリアルタイムで最適な駆動力を算出して、瞬時に前輪へも適切な駆動力を分配する、いわゆるスタンバイ方式の4WDだ。
車両価格は、オールモード4×4の標準仕様で287.8万円、ハイグレードが323.9万円とガソリン、ディーゼルとも同額に設定された。

2代目テラノは、悪路走破性や乗り心地など本格オフローダーとして優れた性能を発揮したが、初代同様パジェロとハイラックスサーフの人気には及ばなかった。
オフロードよりも街乗りを重視したテラノ・レグラス


1996年8月のこの日、2代目テラノの派生車として都会派SUVのテラノ・レグラスがデビューした。当時RVブームは下火となり、ミニバンやコンパクトな都会派SUVが人気を獲得していたことから、テラノ・レグラスで方向転換を図ったのだ。
テラノ・レグラスは大型リアゲートを持つ4ドアのワイドボディで、テラノのワイド仕様よりも20mm広い1840mmを設定。テラノと外観上でもっとも異なるのは、テラノがネット状のメッキグリルであるのに対し、レグラスは横基調のボディ同色カラードグリルを採用したこと。さらに、ボディ同色の大型バンパー、オーバーフェンダーと一体となったサイドステップ、リアハッチのスペアタイヤなどが都会的な雰囲気を演出した。


パワートレインは、最高出力170ps/最大トルク27.1kgmを発揮する3.3L V6 DOHC、150ps/34.0kgmの3.0L SOHC ICディーゼルターボの2種エンジンと4速ATの組み合わせ。安全装備としては、全車にデュアルエアバッグ、ブレーキアシスト、ABS、ロードリミッター&プリテンショナー付シートベルトが標準装備された。


車両価格は、パートタイム4WDのRS(ガソリン)276.3万円~オールモード4×4 RS-Rリミテッド(ディーゼル)の339.9万円に設定。当時の大卒初任給は19.4万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値でRS-Rリミテッドは約402万円に相当する。
テラノ・レグラスは、オフロード性能に優れ、街乗りでは運転しやすく、しなやかな乗り心地の都会派ラグジュアリーSUVの先駆的なモデルだったが、残念ながら市場ではその魅力はあまり評価されなかった。

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都会派ラグジュアリーSUVというジャンルを開拓し、その後の世界的なブームの火付け役となったのは、1997年に登場したトヨタ「ハリアー」とされている。コンセプトとしては似通っているが、ハリアーの方がスタイリングも含めてより都会的なイメージが強調されている点が、両車の人気に差が付いた理由であろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。



