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今日は何の日?■GDIはじめ三菱の最新技術が投入された8代目ギャラン
1996(平成8)年8月29日、三菱自動車はミドルクラスセダン「ギャラン」の8代目とそのステーションワゴン「レグナム」を発売した。最大のトピックは、量産車初のGDIエンジンの採用であり、また6代目から設定されている高性能ターボを搭載した4WD車「ギャランVR-4」も注目された。


量産車初となる筒内噴射(GDI)エンジン搭載の8代目ギャラン

三菱重工時代には、小型セダン「コルト」シリーズが中核モデルとなって総合自動車メーカーとして着々と成長してきたが、1970年に重工から三菱自動車として分離独立すると、その役目は「ギャラン」に引き継がれた。初代「コルト・ギャラン」は、1969年12月にコルトより若いユーザーの獲得を狙って誕生した。

1973年6月には2代目に移行して「ギャラン」の単独ネームとなり、1976年5月に登場した3代目「ギャランΣ」のヒットもあり、ギャランは三菱ミドルクラスの主軸として確固たる地位を確立した。


そして、1996年8月のこの日に8代目ギャランが、ステーションワゴンのレグナムとともにデビューした。8代目ギャランは、逆スラントしたアグレッシブなフロントマスクにコーナー部のダイヤモンドカット、抑揚感のあるボディラインを持つ、ワイドで安定感のある3ナンバーボディとされた。


最大の注目は、量産車初となる筒内に直接ガソリンを噴射する筒内噴射ガソリン(GDI)エンジンである。しかも、三菱独自の手法によって、空燃比40(空気40に対してガソリン1の重量割合)という従来エンジンの2倍以上の薄いリーンバーン(希薄燃焼)を実現し、約35%の燃費向上を果たしたことだった。

パワートレインは、最高出力150ps/最大トルク18.2kgmを発揮する1.8L直4 DOHC GDIエンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFである。
車両価格は、標準グレードで179万円(5速MT)/188万円(4速AT)に設定された。
レガシィに対抗した高性能ステーションワゴンのレグナム
1990年代後半になると、市場はRVブームから人気の中心がステーションワゴンに移り、スバルの「レガシィ・ツーリングワゴン」を中心とした高性能エンジンを搭載した4WDのステーションワゴンが隆盛を極めた。このブームに対応して、三菱は8代目ギャランと同時にステーションワゴンのレグナムを投入したのだ。

スタリングは、8代目ギャランをベースにワゴン化し、基本メカニズムもギャランをベースにした。サスペンションは、ギャランと同じ前後マルチリンク式だが、ステーションワゴンに合わせてマッチングされた。
パワートレインは、先述の1.8L直4 DOHC GDI、145ps/18.5kgmの2.0L V6 SOHC、175ps/23.5kgmの2.5L V6 SOHCの3種エンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDが選べた。
レグナムは、ステーションワゴンブームの後押しもあり、順調に滑り出した。
スポーツ派ドライバーのための真打VR-4
1980年代半ばになると、高性能ターボエンジンとフルタイム4WDを搭載した「アウディ・クアトロ」によるWRCでの活躍に端を発し、セダンながら高性能な4WDモデル、いわゆるスポーツセダンが登場した。三菱は1987年にデビューした6代目ギャランにWRC制覇を前提に開発されたトップグレード「VR(Victory Runner)-4」を設定した。

6代目ギャランVR-4は、最高出力205ps/最大トルク30kgmの2.0L直4 DOHC IC(インタークーラー)ターボエンジンとフルタイム4WDを組み合わせ、それをベースとしたラリー車は、WRCに参戦して6回の優勝を飾った。

8代目ギャランでは、VR-4はセダンとレグナム両方に設定され、搭載エンジンは280ps/37.0kgmの2.5L V6 ICツインターボで、トランスミッションは5速MTおよび5速ATの組み合わせ、駆動方式は当然4WDだ。また、走りを極めるため、ABSはもちろんランエボにも搭載されたAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)やASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)が装備された。

車両価格は、ギャランVR-4が298.0万円(5速MT)/309.4万円(5速AT)、レグナムVR-4が306.0万円(5速MT)/317.4万円(5速AT)と、標準モデルよりも約100万円高額だった。8代目のVR-4もスポーツ派ファンから支持されたが、時代背景の違いもあり、6代目VR-4ほどの人気は獲得できなかった。
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世界的にも注目されたGDIという新技術をアピールした8代目ギャランとレグナムだったが、逆にそのGDIの信頼性不足が露呈して足を引っ張ることになり、販売面では途中から急降下した。実績のない世界初や日本初の技術を市販化する場合、どうしてもリスクが高くなってしまう。
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