山路慎一とRE雨宮がタッグを組んで作り上げた夢のFC3S

あらゆる要素をバランスさせたサーキットスペック

とても5万円で購入した大事故車ベースとは思えない美しさだ。RE雨宮が、かつてJSS(ジャパンスーパースポーツセダンレース)で走らせていたFC3Sのノウハウを投入しながら製作した純然たるサーキットスペックである。

筑波サーキットに照準を絞って各部が煮詰め上げられたFC3Sは、最終的に車両オーナーにしてドライバーであるタケヤリ山路によって、見事に58秒台をマーク。しかも13B-Tエンジンのままで、だ。メイキングを見ていこう。

エンジンはFD3S用換装ではなくあえての13B-Tのまま。制御はF-CON Vプロで行う。

エンジンはFC3Sの13B-Tベースだ。ポート形状はサイドポート拡大に留め、そこにTD07S-25Gタービンをセット。扱いやすさとパワーのバランスを考慮した463ps仕様を作り上げている。インマニおよびスロットルボディは容量の大きいFD3S用とし、中高速域のパワー追従性能を高めている。エンジン搭載位置は25mmほど下げてリジットマウント化されている。

フロントはブレンボモノブロックキャリパーに340mmローターを合わせる。

そして足回り。FC3Sは、サスペンション形式によりロール時のキャンバー変化量が前後で異なる。その悪影響が出ないように、ある程度の範囲内のストローク量に収められるバネレート(F12kg/mm R10kg/mm)を選択しているのがポイントだ。ダンパーはクァンタムベースのRE雨宮スペック、スプリングにはスウィフトを奢る。

ブレーキはフロントがブレンボモノブロック+340mmローター、リヤが純正キャリパー+プロジェクトμのFD3S用ローターという組み合わせ。サーキットで周回を重ねてもタレないセットアップとしている。

リヤのキャリパーは純正。ローターはプロジェクトμのFD3S17インチモデル用。

なお、リヤブレーキは温度が上がりにくいので、低めの温度域で効くプロジェクトμのメタルパッドを装備。ブレーキバランサーも装備するが、あくまで微調整用だ。

エアロパーツはRE雨宮のフルカウルプロを軸に構築。

縮み側のストロークを前後同一にするため、車高バランスは前後均等にダウンされている。ちなみに、フェンダー加工なしではここまで下げられないとのこと。

フロントはツインカナードとアンダーパネルでダウンフォースを稼ぐ。

エクステリアは、最高速よりもコーナリングを重視したい筑波サーキットに合わせ、多少空気抵抗があってもダウンフォースを優先させてグリップを稼ぐ方向でのパーツチョイスが行われている。フロントはカナードだけでなくアンダーパネルもしっかりと装備。

リヤアンダーにはディフューザープロを装備する。

フロントのオーバーハングが長く、フロントのダウンフォース過多になってしまいがちなFC3S。そこでリヤウイングは極力後ろにマウントすることで、より効果を得られるようなセットがなされている。さらにディフューザーも装備。これらの努力により、463psでありながらダンロップブリッジの先までベタ踏みでいける安定性を獲得している。

ワイドフェンダー化はよりワイドなタイヤを履くためにも重要な装備だ。

ロール方向の踏ん張りを効かせるために前後共にワイドトレッド化。フロントはパンスピードのオーバーフェンダー、リヤは叩き出しで拡大されている。

湿度の影響を避けるためにタイヤは必ず窒素ガスで充填している。

ホイールは前後共にエンケイのNT03-SBC(限定カラー)。サイズはフロントが9.0J-17、リヤが10J-17の組み合わせ。リヤウイングのダウンフォースでオーバーステアは抑えられるため、アンダーステアを避ける目的でタイヤサイズは前後同サイズの255/40-17のアドバンA048を履く。

トランクルームには燃料の空打ちを防止するために、コレクタータンクを設置する。

元々、大事故車だったものをフレーム修正するとどうしても剛性が弱くなってしまう。そこでロールケージをボディと一体化させるようにフル溶接で接合。さらに、ロールケージの接点の周りを重点的にスポット増ししてボディ剛性の弱さをカバーしている。

ダッシュボード奥が金網となっていることが分かる。

ボディ剛性に関係ないドアパネルは穴空け加工、ダッシュボードの重い鉄板は取り払って金網にするなど徹底的な軽量化を敢行。ノーマルでも素性の良い前後重量バランスをさらに磨き上げて、圧倒的なコーナリング性能を手にしている。

マフラーはRE雨宮の定番ドルフィンテールマフラーのチタンモデルを装備。

タケヤリ山路の熱い想いと、FC3Sを知り尽くしたトップチューナーの技術力が混じり合って誕生した風林火山FC3S。筑波サーキット58秒台というタイムは決して奇跡などではなく、必然だったのである。

●取材協力:RE雨宮 千葉県富里市七栄439-10 TEL:0476-90-0007

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