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今日は何の日?■ヴィッツのセダンとしてプラッツがデビュー
1999(平成11)年8月31日、トヨタの革新的なコンパクトカー「ヴィッツ」」の派生車であるコンパクトセダン「プラッツ」がデビューした。ヴィッツの魅力を生かし、広いキャビンとトランクルームを持ちつつ、優れた走りと燃費の両立を実現したコンパクトセダンである。

世界で認められた革新的なコンパクトカーのヴィッツ
1999年1月、長くトヨタの看板コンパクトカーだった「スターレット」の後継として「ヴィッツ」はデビューした。“世界に通じるコンパクトクラスの新ベンチマークとなる”をコンセプトに掲げて、プラットフォームや主要コンポーネントすべてを一新した新世代コンパクトカーとして注目を集めた。

従来のシンプルな2BOXのコンパクトカーでなく、丸みを帯びた世界に通用する欧州車風のハッチバックスタイルを採用。ロングホイールベース化することで広い室内空間を実現し、さらにワンランク上のインテリアで上質感をアピールした。

パワートレインは、小型・軽量化を図った最高出力70ps/最大トルク9.7kgmを発揮する1.0L直4 DOHCエンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は基本FFだが、遅れて4WDも用意された。また4WDのために、88ps/12.3kgmの1.3L直4 DOHCエンジンも追加された。

さらに世界戦略車に相応しいように走行性能や安全性能も高められ、海外では「ヤリス」とネーミングされて世界中で人気を獲得した。すべてにおいてワンランク上の革新的なコンパクトカーのヴィッツは、発売当初から月販1万台を越え、日本と欧州でカー・オブ・ザ・イヤーをW受賞した。
車両価格は、2WDの標準グレードが83万円(3ドア)/87万円(5ドア)に設定された。
ヴィッツ派生のコンパクトセダン、プラッツ
ヴィッツの7ヶ月遅れの1999年8月のこの日、ヴィッツをベースにした3BOXの5人乗り4ドアセダンのプラッツがデビューした。

全長はヴィッツより535mm長く、独立したトランクルームを設けて、フロントとリヤ周りを専用のデザインとしたが、ホイールベースや全幅、全高のサイズはヴィッツと共通。トランクルーム容積は、先代の「コルサ」に比べて30%強も大きかった。

スタイリングは、専用デザインのヘッドライトとグリル形状にすることで、ヴィッツよりややソフトな雰囲気となった。パワートレインは、ヴィッツと同じ1.0Lと1.3Lエンジンに、110ps/14.6kgmの1.5L直4 DOHCエンジンも加わり、トランスミッションはヴィッツと同じ5速MTと4速ATが組み合わされ、駆動方式もヴィッツと同じFFおよび4WDが選べた。

車両価格は、2WDの標準グレードが92.3万円(1.0L)/119.3万円(1.5L)。当時の大卒初任給は19.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約108万円/140万円に相当する。
ヴィッツと同様、革新的なコンパクトセダンのプラッツも人気を獲得したが、ヴィッツの大ヒットの陰に埋もれて人気は限定的だった。なお、プラッツの車名は1代限りで終わり、2代目ヴィッツベースの4ドアセダンは、車名が「ベルタ」に変更された。

プラッツと同じ日にヴィッツ派生のファンカーゴもデビュー
プラッツに続いて同じ日に、ヴィッツの派生車「ファンカーゴ」もデビューした。ファンカーゴは、2列シートのハイトワゴンで、フロントまわりはヴィッツのイメージを持ち、ルーフラインは前席頭上からわずかにキックアップしていた。

全高は、ヴィッツより180mm高く、ホイールベースが130mm、全長は250mm伸ばして広いキャビンが実現された。また広くフラットな荷室には、一般的な自転車だけでなく大型のクロスバイクなどのスポーツ系自転車もそのまま楽に収容できた.
パワートレインは、ヴィッツ搭載の1.3L直4 DOHC&1.5L直4 DOHCと電子制御4速ATの組み合わせ。

ファンカーゴは、レジャーやビジネス用途に使えるマルチパーパスなコンパクトカーとして人気を獲得し、ヴィッツとプラッツとともに“1999~2000年日本カー・オブ・ザ・イヤー”を受賞した。
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プラッツも後継のベルタも、セダン人気が低迷した時期に登場し、また小型セダンは“オヤジくさい”というイメージが定着していたので若い層からの人気が獲得できなかった。さらに、人気のヴィッツと同じプラットフォームだったので、それならヴィッツでいいとして敬遠されたこともあったようだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。