緑に囲まれた美しい風景の中にあるサーキット
MotoGP第13戦オーストリアGPが開催されたレッドブル・リンクは、オーストリアの首都ウィーンから、南西に約200km離れたシュピールベルクにある。筆者・伊藤英里はまずウィーン国際空港に到着したのだが、ここで偶然にもレッドブルKTMテック3のメディア担当にばったり会った。
カフェで順番を待つ間の立ち話で「レッドブル・リンクに行くのは初めてだ」と言うと、彼は「とても美しいサーキットだよ。楽しんで!」と教えてくれた。余談ではあるが、空港内の通路にはクラシックが流れていた。わたしはクラシックはからっきしなので、「さすが……」という感想しか抱くことができなかったが、「ウィーンにいるんだな」と実感できた瞬間だった。
果たして、レッドブル・リンクは彼の言葉通り、美しい風景のなかにあった。緑に囲まれたサーキットは高低差が大きく、65mもある。丘陵の中にあるサーキットである。
サーキット自体は1969年に建設されて、当時の名称は「エステルライヒリンク」といった。1970年に初めてF1が開催された。サーキットの歴史をたどっていくと、F1は古くから開催されてきたことがわかる。
二輪はというと、1996年には再建工事により「A1リンク」となり、ロードレース世界選手権(WGP)が初開催されている。サーキットの改修により「レッドブル・リンク」となったのは2011年のことだ。レッドブル・リンクのシンボル、サーキットの中央に立つ雄牛の像は2012年に完成した。2016年には19年ぶりにMotoGPが開催されている。
こうしたサーキットの歴史は、レッドブル・ウィングというメディアセンターやウェルカム・センターのある建物地下通路の壁に見ることができる。当時のポスターや、レジェンドライダーたちが壁に並んでいるのだ。



グラーツで見たノーヘルの電動スクーター
レッドブル・リンクに近い大きな街としては、グラーツがある。オーストリアGP後、10日ほどグラーツに滞在したので、その様子もお伝えしたい。
オーストリアのスーパーマーケットに行くと、ソーセージがたくさん並んでいることに気が付く。ソーセージの種類がとにかく多い。大きなスーパーマーケットになると、パックに入ったソーセージのほか、精肉エリアでもソーセージが売られている。
また、シュニッツェル(ドイツ風カツレツ)などもよく見かける。シュニッツェルは日本のとんかつによく似ているが、下味がしっかりついているのでソースなしで食べる。マヨネーズがあるとさらにおいしい。とんかつは冷めるとおいしさが損なわれてしまうけれど、シュニッツェルは冷えていてもおいしいから不思議だ。ちなみに、駅構内などで売られているシュニッツェルのサンドウィッチは、冷えていることが多かった(でも、おいしかった)。食文化としては、ドイツとオーストリアはかなり近いようだ。
そして、気になったのは自転車の多さである。グラーツでは本当に自転車が多かった。駅前や街中には自転車置き場があって、たくさんの自転車が停められていた。そして、道路にはきちんと「自転車レーン」がある。
オーストリアは、「自転車マスタープラン」(2024年策定)により、2030年までに自転車分担率を13%に引き上げることを目標としている。インフラの整備も進んでいるので、自転車がクルマやバイク、そして歩行者と共存できるような環境だと感じた。
そして、驚いたのは電動スクーターだ。ノーヘルで走る電動スクーターを見たときは驚愕した。そのときは「危ない人もいるものだ」と思ったのだが、後日、街を歩いていると、ノーヘルで走る電動スクーターもいれば、自転車レーン、さらには歩道を走る電動スクーターもいるのである。調べたところ、定格出力250W以下、最高速度25km/h以下のものは「自転車」に定義されるということだった(2025年8月30日時点)。
このルールについてはともかく、グラーツでも、そしてその後に訪れたザルツブルク(作曲家・モーツァルトの生家がある)でも電動スクーターが街を走っているのを見かけた。「頻繁に」というほどではないが「まれ」というわけでもない。自転車のように、電動スクーターも普及しつつあるのかもしれない。
というわけで、MotoGP取材で訪れたオーストリアのレッドブル・リンクと、グラーツの雰囲気をお届けした。




