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今日は何の日?■キューブをロングバージョン化したキューブ・キュービック
2003(平成15)年9月3日、日産自動車はコンパクトなハイトワゴン「キューブ」の3列シート版「キューブ・キュービック(cube3)」を発売した。2代目キュービックのホイールベースを170mm延長し、伸びた部分に3列目シートを配置した斬新な7人乗りワゴンである。

ベースとなったキューブ2代目
初代キューブは、その名の通り立方体フォルムのコンパクトなハイトワゴンとして1998年2月に誕生した。

マーチをベースに、ホイールベースは同じだがマーチより全幅を20mm広げて、全高はマーチより200mm高く設定したハイルーフによって広い室内と荷室スペースを実現。パワートレインは、最高出力82psの1.3L直4 DOHCエンジンと4速ATおよびCVTの組み合わせ、駆動方式はFFである。

キューブは、使い勝手を重視したシンプルなデザインによって、若者や若いファミリー層から支持されて大ヒット。初期には、10ヶ月で10万台を達成、登録台数1位を記録したこともあった。
2002年10月、好調な販売を続けていたキューブは、初めてのモデルチェンジで2代目に移行。コンセプトは“マジカルボックス”、これはコンパクトな外観からは想像できない広い室内スペースと充実した収納装備を持つ魅力的なハコを意味する。

初代よりもさらにボクシーさを強調したキュービックなスタイリングと親しみのあるフロントマスクとなった2代目、さらに左右非対称デザインと横開きのリヤゲートなどで個性をアピール。ホイールベースを70mm延長し、ロング&ワイドルーフの採用により開放感のあるヘッドルームを実現し、さらに使い勝手の良いラゲッジや多彩な収納スペースも確保した。

パワートレインは、最高出力98psの1.4L直4 DOHCとCVTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFをベースに電動4WDの”e・4WD”も設定された。e・4WDは、FFをベースに後輪をモーターで駆動する電気式4WDで、通常走行はFFだが前輪がスリップすると後輪が駆動して4WDに切り替わる。
2代目キューブを長くしたキューブ・キュービック
そして翌2003年9月に、キューブに対して全長を150mm、ホイールベースを170mm延長した3列シート7人乗りの「キューブ・キュービック」が追加された。3列目シートのアクセスを容易にするため、リアのドア開口部は大きく設定された。

スタイリングは、キューブと同様に角を丸めた立方体スタイルを基本とし、前後オーバーハングをできるだけ切り詰め、小回りの利く扱いやすさを実現。インテリアについては、キューブの特徴であるソファのようなシートで快適性を追求し、前席はベンチシート、2列目はリクライニング&スライド機構をもつ分割式ダブルフォールディング、3列目はあくまで緊急用といったシートで一体化可倒機構が採用された。

パワートレインは、最高出力98ps/最大トルク14.0kgmを発揮する1.4L直4 DOHCと電子制御4速ATおよびCVTの組み合わせ。駆動方式はFFのみに絞られた。

車両価格は、標準グレードで139.8万円(4速AT)/144.6万円(CVT)。キューブ・キュービックは、扱いやすいコンパクトサイズでお洒落なスタイリング、利便性に優れる3列シートなどが若いファミリー層から支持されて人気を獲得した。

1世代で生産を終えたキューブ・キュービック


キューブ・キュービックの販売は、発売当初は順調に滑り出したが、その後は徐々に右肩下がりになった。その結果、2008年11月キューブが3代目にモデルチェンジしたタイミングで、キューブ・キュービックはモデルチェンジすることなく1代限りで生産を終えた。

キューブ・キュービックは7人乗りながら、もともと3列目は緊急席で大人の乗員が座るには厳しい、それなら割り切って安価でスペース効率に優れる軽のスーパーハイトワゴンの方が使いやすい、また3列シートを日常的に使うならトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」のような5ナンバーのコンパクトミニバンを選ぶ…という具合に、ユーザーは流れていったのだろう。そう考えると、斬新であったキューブ・キュービックは、一方で中途半端と捉えられた可能性がある。

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ミッドサイズSUVでも緊急的な用途で3列シートを用意しているモデルも存在するが、3列シートに乗車することは稀であり、5人乗りで荷物がたくさん積めることを期待して購入しているのだろう。そう考えると、コンパクトクラスは7人乗車は現実的には厳しいと言わざるを得ない。
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