SF2025 OKAYAMAのミーティング会場はレアな国産車が並ぶ

2025年7月21日(月・祝)、カルチュア・エンタテインメント株式会社ネコパブ事業部と自動車雑誌『Tipo』による共催で「Bosch Car Service presents SPEED FESTIVAL 2025 OKAYAMA with TOHM」が(以下、「SF2025 OKAYAMA」)岡山国際サーキットにて開催された。

懐かしのレーシングカーにスーパーカーから軽自動車まで!いろいろなクルマが岡山国際サーキットを走るイベントを見てきた!! | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

岡山国際サーキットで開催されたクルマ好きの真夏の祭典 2025年7月21日(月・祝)、岡山国際サーキットにてカルチュア・エンタテインメント株式会社ネコパブ事業部主催のサーキットイベント、「Bosch Car Servic […]

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『Bosch Car Service presents SPEED FESTIVAL 2025 OKAYAMA with TOHM』レポート vol.1はこちら。

そのメインイベントは国内外のさまざまな車種がサーキットを楽しく走る「クルマの運動会」であるが、パドックやミニコースでは豪華なゲストを招いたトークショー、企業やショップによる出展、最新モデルを運転できる試乗会など、クルマ好きにとっては魅力的なアトラクションが目白押しだった。

そのなかでも大勢の参加者で盛り上がりを見せていたのが、ミーティング会場となったCパドックだ。この場所では約100台のGT-Rが集結した平手晃平選手主催のGT-Rミーティング「Ring’s」や『Tipo』読者によるミーティングが開かれていた。

地元・岡山はもちろんのこと、西日本を中心に希少で日頃なかなかお目にかかれないレアなマシンが集まっていたので、今回はその中から国産車を中心に紹介しよう。

オーナーの愛情が詰まったコンディション極上の「トミーカイラR」

ミーティング会場となったCパドックのGT-Rミーティング「Ring’s」車両展示エリアで珍しいR32型スカイラインGT-Rを発見した。オーナーの手で大切に維持されてきたと思しき美しいコンディションのそのクルマの車体側面には、筆記体で「Tommy kaira」の文字が踊る。そう、このR32型スカイラインはただのGT-Rではなく、1992年秋に発表されたトミーカイラRなのだ。

R32型スカイラインGT-Rのコンプリートカー・トミーカイラR。

トミタ夢工場創業者の富田義一(とみた・よしかず)氏と解良喜久雄(かいら・きくお)氏の名字を組み合わせたトミーカイラは、前身となるトミタオート商会が1967年に京都にて創業し、1986年にトミーカイラに改組。まだチューニングが違法な存在としてアンダーグラウンドにあった1980代からコンプリートカービジネスを始めた先駆者だった。

ボディサイドに筆記体で書かれた「Tommy kaira」のデカールがこのマシンが特別な存在であることをアピールする。

同社は1995年には完全オリジナルのトミーカイラZZを発表し、1999年までに220台を販売。しかし、さまざまな外的要因によって惜しまれつつ生産を終了した。さらにはメインバンクの破綻などの影響もあって2003年に倒産している。

「Tommy kaira」のデカールはレスオプションを選ぶことができたため、デカールが貼られていないトミーカイラRも存在したようだ。

倒産前に分社化されたトミタ夢販売(のちにエム・ディレクションに社名変更)とオートバックスセブンが事業を引き継いだが、2009年に両社のビジネスは終了する。その後、トミーカイラZZはEVとして復活するが、こちらもブランド以外の資産が外資に売却されたことで、少数が販売されただけに留まり、それ以上の進展はなかった。

リヤウイングは控えめなサイズのものを備えている。

現在、トミーカイラの中古車販売やメンテナンスなどのサービスは関連会社のGTS株式会社が担当する一方、富田氏はトミーカイラZZIIを発表し、京都市上京区に「トミーカイラ・サロン」というショールームをオープンしている。

トミーカイラZZII(PHOTO:Tommykaira

コンプリートカーとはいうものの、トミーカイラRの外観は前述のボディサイドのデカール以外は控えめな意匠で、NISMOのものに似たエアロバンパー、専用のメッシュグリルなどを除くとほぼノーマルといった印象だ。しかし、ホイールは専用の17インチホイールが装着され、ボディの前後には誇らしげにTommy kairaのバッジが輝いていた。

トランクリッド左側には「NISSAN」のバッジに代えて「Tommy kaira」のエンブレムが装着される。
ランクリッド右側には「R」のバッジと「TOMITA」のデカールが備わる。

インテリアも同様で、ステアリングホイールのホーンボタンが専用品となり、シフトノブが変更されていること以外、ほぼ日産の工場から出荷された状態のままだった。

トミーカイラRのインテリア。コンプリートカーながらストックの雰囲気を色濃く残している。

しかし、パッと見にはわからないが、専用のアルミ製のストラットタワーバーを追加するなどボディは強化され、サスペンションはオリジナルセッティングのビルシュタイン製ダンパーにバネレートを高めた専用スプリングを組み合わせたものとなる。

17インチのトミーカイラR専用ホイールには245/40R17サイズのブリヂストン・ポテンザRE-71RSが装着されていた。

記憶に間違いがなければ、トミーカイラRには3グレードあり、このクルマはコーションプレートに「スペックR」とあることから最上級グレードだとわかった。

エンジンルーム内のコーションプレート。

ということは、心臓部はRB26DETTをベースに、大流量のメタルタービンやECU、インタークーラー、クラッチなどをトミーカイラが専用のものに交換し、独自にチューニングを施したことで、公称で350ps、噂によるとそれ以上の最高出力を発揮するパワーユニットへと強化された。

トミーカイラRのエンジンルーム 。RB26DETはチューニングによって350psまで強化されている。

オーナー氏によると、まだ岡山にトミーカイラの代理店がなかったことから、京都までわざわざ出向いて購入したという。つまりは貴重なワンオーナー車だ。話を聞くと、しばらくは通勤にも使用していたそうだが、現在は趣味車としてイベントや走行会のみに使用し、ガレージで大切に保管しているとのことだ。

新車当時の価格は698万円。近年の中古車相場の高騰により、現在の価値は想像すらできないが、オーナーがこのクルマとともに過ごした30年以上の時間はプライスレスである。

本物と見間違えるほどの完成度! RX-7 IMSA GTO仕様

思わず、本物かと目を疑うほどの完成度を誇っていたのが、写真のマツダRX-7のGTO仕様だ。IMSA(International Motor Sports Association:国際モータースポーツ協会)GT選手権に参戦した実際のレースマシンはFC型だったのに対して、こちらはその後継として1991年にデビューしたFD3S型をベースとしている。

FD3S型マツダRX-7をベースに、リバティーウォーク製のワイドボディキットを装着し、IMSA GT選手権に参戦したRX-7 GTO風にカスタマイズしたマシン。

そこで記憶の糸を辿って行くと、2年前の大阪オートメッセに岡山県倉敷市のロータリー車のプロショップ・三好自動車が出品した「LBスーパーシルエットFD3S RX-7」のことを思い出した。残念ながらその年のオートメッセを訪れてはいないので、実車を見る機会はなかったのだが、その迫力あるルックスはイベントのリポート記事を見て覚えていた。

リヤハッチはガラス製からFRP製の社外品に変更し、大型のGTウイングを装着している。

オーナーに話を聞くと、このクルマは「LBスーパーシルエットFD3S RX-7」と、三好自動車のショーカーにも使用されたリバティーウォーク製のワイドボディキットを装着。1990年のデイトナ24時間レースでクラス2位(総合7位)、同年のIMSAシリーズ・GTOクラスで総合優勝したRX-7 GTOを参考に内外装をカスタマイズしたそうだ。

ホイールはワーク製の特注ワイドホイールを履いていた。

極めて完成度の高いマシンで、エクステリアだけでなくメカにも手が入れられており、そのルックスに負けない熱い走りを披露するそうである。

チューニングメニューの詳細はオーナーに聞けなかったが、かなり手が加えられていることはひと目でわかるエンジンルーム。

レプリカ覆面パトカー軍団のなかにマシンXと移動オービスが!?

Cパッドックのミーティングエリアに並ぶ覆面パトカー(のレプリカ)軍団。

Cパドックの一角に陣取っていた覆面パトカー軍団。そのなかに1980年代に少年期を過ごした人にとっては、なんとも懐かしいブラウン管の中のヒーローがいた。そのクルマの名前は「マシンX」。ご存知の通り、1979年10月~1984年10月までオンエアされた刑事ドラマ『西部警察』に登場する特捜車両だ。

レーダー・スピード感知器、インタークーラーを模したオイルクーラー(機能はしない)、ゴールドに塗装されたイタリア・カンパニョーロ製マグネシウムホイールなどの装備は劇中車に準じている。

このマシンXレプリカは、ベースは劇中車と同じく”ジャパン”こと日産スカイライン2000ターボGT-EX(GC210型)である。実用性を考えると、さすがに助手席を取り去り、捜査用のマイクロコンピューターを組み込むことはしていないが、外装は忠実に再現されている。

グリルにはレーダー・スピード感知器(もちろんダミー)、フロントバンパー下のインタークーラー(それっぽく見えるようにオイルクーラーを改造して設置)、ゴールドに塗装されたイタリア・カンパニョーロ製マグネシウムホイールなどの装備は劇中車そのままだ。そして、ダッシュボードには回転灯と”団長”こと大門部長刑事(演:渡哲也)が愛用していたレミントンM31ショットガンが飾られている。

5代目スカイライン”ジャパン”をベースにしたマシンXのレプリカ。外観は劇中車そのままに忠実に再現されている。

カスタムはオーナー自らが行ったそうで、ホンモノそっくりのマシンXからはオーナーの『西部警察』とスカイライン愛がひしひしと伝わってきた。

移動オービスのレプリカ!? ネズミ取りのコスプレ!?

さて、覆面パトカー軍団なかにはマシンX以外にも興味深いクルマがあった。それが写真のステップワゴンだ。一見すると何の変哲もない3代目ステップワゴンなのだが、注目すべきは車両本体ではなく、一緒に展示されている装備品のほうだ。

手製によるダミー移動オービスと交機仕様の3代目ステップワゴン。

三脚の上に白い箱……全ドライバーが路上で会いたくないであろう移動オービスである。オーナーは折りたたみ式のパイプ椅子に座り、目の前にはジュラルミン製のアタッシェケースとパイロンが置いてある。もちろん、すべてダミーで機能はしない。

ルーフにはマグネット式の回転灯、ボディサイドには「止まってください」の旗が備わる。

オーナーに話を聞くと、仲間との集まりでウケを狙って移動オービスの実物模型を手作りしたとのこと。公道でいたずらをしていないか尋ねると「そんなことはしていませんよ。あくまでもイベント限定のジョークです」と彼は笑顔で答える。よく見ればレプリカだとわかるのだが、パっと見には本物に見える。

自作の移動オービス本体。近くで見ると手作りによるダミーだとわかるが、遠目には本物にしか見えない。

こういうアイデア勝負の冗談は嫌いではない。ただ、くれぐれも「SF2025 OKAYAMA」のようなミーティング以外では、本物かレプリカかを問わず、お目にかかりたくないアイテムではある。正直、心臓に悪い(笑)