新型ダイハツ・ムーヴは"軽"を超えた高級車!? DNGAボディの乗り心地は◎!これなら135万円のシンプルな「L」もアリかも? | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

7代目ムーヴは軽自動車の枠を超えてオススメできる 7代目となったダイハツ「ムーヴ」に試乗した。先代モデルの登場は2014年だから、なんと11年ぶりのフルモデルチェンジだ。 そして今回はその試乗記を前半でNAモデル、後半で […]

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NAモデルのインプレッションはこちら。

リニアなハンドリングによる素直な操縦性

走り始めてまず感じるのは、乗り味の上質さだ。シリーズで唯一15インチタイヤを装着する「RS」は、タイヤの大径化に合わせてダンパーも専用の減衰力設定が与えられている。

「RS」は唯一15インチのホイールとタイヤを装着。サイズは165/55R15だが、タイヤはブリヂストンECOPIA EP150で共通。

一方、ブッシュやスプリングはNAモデルと同じだというから、そのサジ加減はかなり絶妙なのだろう。路面からの入力に対しては減衰といなしが上手にバランスしていて、しっかりしているのにとても乗り心地がいい。

特に空荷でも突き上げないリヤサスペンションの落ち着き具合は見事で、トーションビームでもここまでやれるのかと感心させられた。リヤシートに座ってもその印象は変わらず、その広い居住空間に相応しい快適性が得られている。

新型ムーヴ「RS」のコックピット。「RS」専用となる本革巻のステアリングやシフトレバーを装備する。
ファブリックシートはネイビーカラーにシルバーステッチ。
形状や機能については共通。

ハンドリングも、操舵応答性がリニアだ。「RS」という名前ほどスポーティではないけれど、ステアリングの切り始めからダンパーが素直に減衰力を立ち上げて、最後までロールスピードを穏やかにコントロールしてくれる誠実さがある。

その素直な操縦性には、NAモデル以上に”スーパー”じゃないハイトワゴンのボディバランスがわかりやすく反映されている。スピードを高めても路面の起伏でルーフが揺すられず、高速道路でトラックに抜かれたときや、横風に対しても影響が少ない。

優れたDNGAシャシーにターボエンジンはベストマッチ

こうした扱いやすいシャシーに対して、直列3気筒ターボはベストマッチだ。流れが早い首都高速道路の合流もスムーズにこなせるし、追い越し加速でもストレスがない。ターボエンジンは回転が上がっても静かで、NAエンジンと比べれば段違いで余裕がある。

高速道路でもストレスの無い走りが可能なパワーを備えるターボエンジン。使用回転域がNAより低いため、静かなのも◯。

街中でのゼロ発進加速で、アクセルの踏み始めにトルクが立ち上がり過ぎてしまう制御には洗練が必要だが、このシャシーを生かしきるパワーユニットとしては、断然筆者はターボ推しだ。

KF-VE型直列3気筒DOHC12バルブエンジンはNAと同様の型式だが、インタークーラーターボを追加して64ps/6400rpm・100Nm/3600rpmを発生する。

そしてちょっと大げさだけれど、新型ムーブの「RS」には、いわゆる軽ハイトワゴンの枠を少し超えた、現代的なシティコミューターという印象すら抱いた。そこには電動化の“で”の字もないけれど、まったく不足を感じない。

ダイハツは今後、軽自動車に「eーSMART HYBRID」を投入してくだろう。仮にムーブにシリーズハイブリッドが搭載されれば、その出足はよりスムーズでトルキーになるはずだ。しかしNAエンジンとの組み合わせであれば、回したときの静粛性はターボエンジンの方が上かもしれない。

最大出力・最大トルクの発生回転数はNAとターボでそれほど大きな差はないが、NA:52ps/60Nmとターボ:64ps/100Nmの差は大きい。

またその分価格も高くなるはずだから、ハイブリッドモデルが登場したとしても、トータルパフォーマンスでRSはまだまだ現役ど真ん中な予感がする。むしろスーパーハイトで車重も重たくなるタントの方が、e-SMART HYBRIDは合う気がする。

2021年にロッキーに搭載されたe-SMART HYBRID。この先、軽自動車への展開はあるだろうか?

ヨーロッパの街並みにも馴染みそうな優れたデザイン

ムーブRSをして現代的なシティコミューターと感じた理由に、デザイン性の良さも挙げておこう。

いきなりだけれど、新型ムーヴはかっこいい。カスタムを廃止した影響か、まずフロントマスクが精悍な表情となった。そして驚いたのは、フロントフェンダーからボンネットにかけてのうねりだ。ショートオーバーハングのスペースのなかで、スポーツカーばりにラインがもりあがってからノーズに向けて、ストンと落ちているのである。

新型ムーヴ「RS」

A、B、Cピラーはブラックアウトされて、ツートーンカラーを選べてルーフはまるでフローティングしているかのよう。後端はリヤフェンダーからシャークフィンのように、パネルが上に伸びている。ドアパネルには絞りの効いたプレスラインがくっきりと入り、サイドフォルムが厚ぼったく見えない。

新型ムーヴ「RS」
新型ムーヴ「RS」
新型ムーヴ「RS」

そもそもムーヴは歴代デザインにこだわってきたけれど、そのターゲットが徐々に「子離れ世代」へと移行したことで、現行モデルではより明確にこれを訴求したのだという。ちなみにそのAピラーも、実用性を損なわない範囲で兄弟車であるムーヴキャンパスよりも寝かせられている。ようするにそれは「クルマ好きに刺さるデザイン」であり、その世代にいる筆者は、まんまとダイハツの狙いにはまったわけである。

新型ムーヴ「RS」

とはいえ悔し紛れにいうのではなく、新型ムーブのデザインは洗練さていると思う。軽自動車のパッケージングで無理矢理スポーティさを表現したのではなく、モノフォルムのコミューターとして完成度が高い。このままヨーロッパの街中を走らせても、まったく問題ないどころかむしろすんなり溶け込むような気がする。

上質感を高める加飾に「RS」専用装備でスポーティさも演出

「RS」はムーヴの中でも最上級グレードに位置するため、ACCやスイッチ式のパーキングブレーキが標準になるほか、右側スライドドアのスイッチやアダプティブヘッドライトなどの運転支援機能が充実。
さらにステアリングやシフトノブが本革巻になり、メーターも回転計を加えた2眼タイプになるなど、スポーティさも演出される。

基本的なレイアウトはNAモデルと同様だが、最上位グレードだけに装備が充実している。
メーターは回転計(左)と速度計(右)の二眼タイプとなるが、物理指針なのは同様だ。中央のディスプレイがTFTカラー液晶となるが、レイアウトは非常にコンサバティブ。
ACCが装備され、操作系はステアリングの右スポークに備わる。
あわせて、パーキングブレーキはスイッチ式になる。
フロントシートヒーター「L」以外に装着できるメーカーオプション。
スライドドアのスイッチも左右両側。ヘッドライト光軸はオートレベライザーが装備され、「X」にあった調整ダイヤルが省略されている。

ワンモデルをアクセサリーで差別化する「アナザースタイル」

そんな新型ムーヴには、ターボモデル「RS」と、NAモデルの上級グレード「G」に、「アナザースタイル」という形で、ふたつのバリエーションが追加された。

どちらもメーカーとディーラーオプションを組み合わせたカスタマイズで、新車時のみ選択できるパッケージだ。「DANDYSPORT STYLE」(ダンディ スポーツ スタイル)は内外装をブラック基調のパーツで仕上げており、ムーブの精悍さをさらに高める仕様。もうひとつの「NOBLE CHIC STYLE」(ノーブル シック スタイル)は、温かみのあるカッパーカラーでエレガントさを演出している。

アナザースタイル「DANDYSPORT STYLE」(右)は、エンブレムやガーニッシュなどをブラックやガンメタとし、フロントとリヤにロワスカート、サイドにはストーンガードを装着して、より精悍なスタイルとなっている。
「DANDYSPORT STYLE」のフロントロワスカート。
リヤロワスカートにサイドストーンガード。
ドアアウターハンドルもブラック基調に。
切削光輝スモーク塗装の15インチアルミホールは「RS」用。
「DANDYSPORT STYLE」のインテリア。インナーハンドルやシフトベゼル、ドリンクホルダー、センタークラスターの各パネルがピアノブラック調となる。
アナザースタイル「NOBLE CHIC STYLE」ではガーニッシュがカッパー×ブラックとなる。
アナザースタイル「NOBLE CHIC STYLE」のインテリア。シートやアームレストがソフトレザー調になり、パネルにカッパーの加飾が加わる。

いまどき「ダンディ」なんて言われると少し気恥ずかしいが、ホイールまで漆黒に彩られたムーヴはちょっと迫力がある。ノーブル・シックはカッパートリムがややファンシー過ぎる気もするけれど、女性ユーザーの需要はあるだろう。
ホームページではその着せ替えができて、色々試すと結構楽しい。

上質感とスーパーハイトワゴンにはない走りの良さが魅力

軽自動車といえば維持費の安さやスペース効率の良さばかりが優先されるけれど、ハイブリッド化を見越したであろう現行プラットフォームを得たことで、特にターボモデルの「RS」には高い質感までもが備わった。スーパーではないハイトワゴンボディがもたらす走安性も、お勧めできる強い理由のひとつだ。総じて新型ムーヴは、レベルの高い正常進化を果たしたといえるだろう。

車名ムーヴ
グレードRSX
全長3395mm
全幅1475mm
全高FF:1655mm
4WD:1670mm
ホイールベース2460mm
室内長2140mm
室内幅1355mm
室内高1270mm
トレッドF:1300mm
R:1290mm
F:1300mm(4WD=1295mm)
R:1290mm(4WD=1265mm)
最小回転半径4.7m4.4m
最低地上高FF:150mm
4WD:165mm
重量FF:890kg
4WD:940kg
FF:860kg
4WD:910kg
乗車定員4名
エンジンKF-VE型
直列3気筒DOHC12バルブインタークーラーターボ
KF-VE型
直列3気筒DOHC12バルブ
排気量658cc
最高出力64ps/6400rpm52ps/6900rpm
最大トルク100Nm/3600rpm60Nm/3600rpm
燃費(WLTC)FF:21.5km/L
4WD:19.9km/L
FF:22.6km/L
4WD:20.6km/L
サスペンションF:ストラット
R:トーションビーム(4WD=3リンクリジッド)
駆動方式FF/4WD
トランスミッションCVT
タイヤサイズ165/55R15155/65R14
価格FF:189万7500円
202万4000円
FF:149万500円
161万7000円