リニアなハンドリングによる素直な操縦性

走り始めてまず感じるのは、乗り味の上質さだ。シリーズで唯一15インチタイヤを装着する「RS」は、タイヤの大径化に合わせてダンパーも専用の減衰力設定が与えられている。

一方、ブッシュやスプリングはNAモデルと同じだというから、そのサジ加減はかなり絶妙なのだろう。路面からの入力に対しては減衰といなしが上手にバランスしていて、しっかりしているのにとても乗り心地がいい。

特に空荷でも突き上げないリヤサスペンションの落ち着き具合は見事で、トーションビームでもここまでやれるのかと感心させられた。リヤシートに座ってもその印象は変わらず、その広い居住空間に相応しい快適性が得られている。

ハンドリングも、操舵応答性がリニアだ。「RS」という名前ほどスポーティではないけれど、ステアリングの切り始めからダンパーが素直に減衰力を立ち上げて、最後までロールスピードを穏やかにコントロールしてくれる誠実さがある。

その素直な操縦性には、NAモデル以上に”スーパー”じゃないハイトワゴンのボディバランスがわかりやすく反映されている。スピードを高めても路面の起伏でルーフが揺すられず、高速道路でトラックに抜かれたときや、横風に対しても影響が少ない。

優れたDNGAシャシーにターボエンジンはベストマッチ
こうした扱いやすいシャシーに対して、直列3気筒ターボはベストマッチだ。流れが早い首都高速道路の合流もスムーズにこなせるし、追い越し加速でもストレスがない。ターボエンジンは回転が上がっても静かで、NAエンジンと比べれば段違いで余裕がある。

街中でのゼロ発進加速で、アクセルの踏み始めにトルクが立ち上がり過ぎてしまう制御には洗練が必要だが、このシャシーを生かしきるパワーユニットとしては、断然筆者はターボ推しだ。

そしてちょっと大げさだけれど、新型ムーブの「RS」には、いわゆる軽ハイトワゴンの枠を少し超えた、現代的なシティコミューターという印象すら抱いた。そこには電動化の“で”の字もないけれど、まったく不足を感じない。

ダイハツは今後、軽自動車に「eーSMART HYBRID」を投入してくだろう。仮にムーブにシリーズハイブリッドが搭載されれば、その出足はよりスムーズでトルキーになるはずだ。しかしNAエンジンとの組み合わせであれば、回したときの静粛性はターボエンジンの方が上かもしれない。

またその分価格も高くなるはずだから、ハイブリッドモデルが登場したとしても、トータルパフォーマンスでRSはまだまだ現役ど真ん中な予感がする。むしろスーパーハイトで車重も重たくなるタントの方が、e-SMART HYBRIDは合う気がする。

ヨーロッパの街並みにも馴染みそうな優れたデザイン
ムーブRSをして現代的なシティコミューターと感じた理由に、デザイン性の良さも挙げておこう。
いきなりだけれど、新型ムーヴはかっこいい。カスタムを廃止した影響か、まずフロントマスクが精悍な表情となった。そして驚いたのは、フロントフェンダーからボンネットにかけてのうねりだ。ショートオーバーハングのスペースのなかで、スポーツカーばりにラインがもりあがってからノーズに向けて、ストンと落ちているのである。

A、B、Cピラーはブラックアウトされて、ツートーンカラーを選べてルーフはまるでフローティングしているかのよう。後端はリヤフェンダーからシャークフィンのように、パネルが上に伸びている。ドアパネルには絞りの効いたプレスラインがくっきりと入り、サイドフォルムが厚ぼったく見えない。
そもそもムーヴは歴代デザインにこだわってきたけれど、そのターゲットが徐々に「子離れ世代」へと移行したことで、現行モデルではより明確にこれを訴求したのだという。ちなみにそのAピラーも、実用性を損なわない範囲で兄弟車であるムーヴキャンパスよりも寝かせられている。ようするにそれは「クルマ好きに刺さるデザイン」であり、その世代にいる筆者は、まんまとダイハツの狙いにはまったわけである。

とはいえ悔し紛れにいうのではなく、新型ムーブのデザインは洗練さていると思う。軽自動車のパッケージングで無理矢理スポーティさを表現したのではなく、モノフォルムのコミューターとして完成度が高い。このままヨーロッパの街中を走らせても、まったく問題ないどころかむしろすんなり溶け込むような気がする。
上質感を高める加飾に「RS」専用装備でスポーティさも演出
「RS」はムーヴの中でも最上級グレードに位置するため、ACCやスイッチ式のパーキングブレーキが標準になるほか、右側スライドドアのスイッチやアダプティブヘッドライトなどの運転支援機能が充実。
さらにステアリングやシフトノブが本革巻になり、メーターも回転計を加えた2眼タイプになるなど、スポーティさも演出される。


ワンモデルをアクセサリーで差別化する「アナザースタイル」
そんな新型ムーヴには、ターボモデル「RS」と、NAモデルの上級グレード「G」に、「アナザースタイル」という形で、ふたつのバリエーションが追加された。
どちらもメーカーとディーラーオプションを組み合わせたカスタマイズで、新車時のみ選択できるパッケージだ。「DANDYSPORT STYLE」(ダンディ スポーツ スタイル)は内外装をブラック基調のパーツで仕上げており、ムーブの精悍さをさらに高める仕様。もうひとつの「NOBLE CHIC STYLE」(ノーブル シック スタイル)は、温かみのあるカッパーカラーでエレガントさを演出している。




いまどき「ダンディ」なんて言われると少し気恥ずかしいが、ホイールまで漆黒に彩られたムーヴはちょっと迫力がある。ノーブル・シックはカッパートリムがややファンシー過ぎる気もするけれど、女性ユーザーの需要はあるだろう。
ホームページではその着せ替えができて、色々試すと結構楽しい。
上質感とスーパーハイトワゴンにはない走りの良さが魅力

軽自動車といえば維持費の安さやスペース効率の良さばかりが優先されるけれど、ハイブリッド化を見越したであろう現行プラットフォームを得たことで、特にターボモデルの「RS」には高い質感までもが備わった。スーパーではないハイトワゴンボディがもたらす走安性も、お勧めできる強い理由のひとつだ。総じて新型ムーヴは、レベルの高い正常進化を果たしたといえるだろう。
| 車名 | ムーヴ | |
| グレード | RS | X |
| 全長 | 3395mm | |
| 全幅 | 1475mm | |
| 全高 | FF:1655mm 4WD:1670mm | |
| ホイールベース | 2460mm | |
| 室内長 | 2140mm | |
| 室内幅 | 1355mm | |
| 室内高 | 1270mm | |
| トレッド | F:1300mm R:1290mm | F:1300mm(4WD=1295mm) R:1290mm(4WD=1265mm) |
| 最小回転半径 | 4.7m | 4.4m |
| 最低地上高 | FF:150mm 4WD:165mm | |
| 重量 | FF:890kg 4WD:940kg | FF:860kg 4WD:910kg |
| 乗車定員 | 4名 | |
| エンジン | KF-VE型 直列3気筒DOHC12バルブインタークーラーターボ | KF-VE型 直列3気筒DOHC12バルブ |
| 排気量 | 658cc | |
| 最高出力 | 64ps/6400rpm | 52ps/6900rpm |
| 最大トルク | 100Nm/3600rpm | 60Nm/3600rpm |
| 燃費(WLTC) | FF:21.5km/L 4WD:19.9km/L | FF:22.6km/L 4WD:20.6km/L |
| サスペンション | F:ストラット R:トーションビーム(4WD=3リンクリジッド) | |
| 駆動方式 | FF/4WD | |
| トランスミッション | CVT | |
| タイヤサイズ | 165/55R15 | 155/65R14 |
| 価格 | FF:189万7500円 202万4000円 | FF:149万500円 161万7000円 |
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