マイナーチェンジされたカローラクロスはハーシュネスが抜群!
2025年5月に一部改良を受け新しくなったカローラクロス。フロントのデザインも変わり、ヘッドライトもLEDを使い、また路面に矢印を投射するシグナルロードプロジェクション(SRP/「Z」に標準装備)も付いているね。

基本的にはプリウスと同じCセグメントのTNGA。エンジンは1.8LにTHSを組み合わせている。カローラクロスには2WD(FF)とE-Four(4WD)があるが、今乗っているクルマはE-Four。新しく設定された「SNOW EXTRAモード」は実用的によくできている。冬になって外気温が下がって路面状況をE-Fourが判断したときにSNOW EXTRAモードになるというようなシステムらしい。まぁ真夏の炎天下をSNOW EXTRAモードで走る必要は全くないし、むしろ燃費を取りに行くような制御かなと思う。

走り出してすぐに分かったのは、乗り心地や音・振動が結構良くなっている。タイヤのマイルドな“エンベローブ効果(※タイヤのトレッド面が路面の凹凸を包み込むように変形し衝撃を吸収する性質)”なんていう言葉があるくらい、路面のちょっとした段差などでの当たりがいい。特にタイヤの内側にスポンジが入っているわけじゃないけど、一般道(下道)ではロードノイズも抑えられている。この辺はタイヤだけではなく、クルマの方も遮音性がいいのかな。
それとシートがいい。腰から背中にかけてシェル型になっていることで、スポッ!と体を包み込んでくれるような感じ。



【カローラクロス 価格】(※全て税込)
Z:3,430,000円(2WD)/3,689,000円(E-Four)
S:2,980,000円(2WD)/3,239,000円(E-Four)
G:2,760,000(2WD)/3,019,000円(E-Four)
GR SPORT:3,895,000円(E-Four)
カローラ全種合わせて世界No.1の販売実績
2024年グローバルで車種ごとの販売台数が発表になった。トップはRAV4で3番目がカローラ。ただカローラはツーリングやクロスなど3車種に分れているので3位にはいるが、カローラ・ファミリー全体で見たら155万台くらい。1位のRAV4が120万台くらいだから、ブッチ切りでカローラが販売の世界No.1。

ランキングを見ていくと、ホンダは唯一CR-Vがあるだけ。意外にテスラやBYDが10ベストにいるし、フォードもピックアップトラックのF150がいる。それを見れば、電動化とかカーボンニュートラルとかいろいろ言われていても、果たしてユーザーが何を求めているのか…いろいろと推測できるよね。
単一車数で今、世界で1番売れているカローラは歴史もある(初代:1966年)。クラウン(初代:1955年)よりは10歳くらい若い。60年代に生まれたクルマとしては、ポルシェ911(初代[901型]:1964年)、初代ゴルフ(17型)は1974年だから、カローラはゴルフよりもお兄さん。

ちなみに! 私もカローラTE27レビンで、滋賀高原ラリー2連勝とか、プロドライバーになる前にプライベートでTE27レビンで美味しいおもいをした。元々ラリーを始めた時は1972年の箱スカGC10(スカイライン)だけど、実際にラリーで優勝できたのはTE27レビン。自分の青春は箱スカとTE27レビン! その後プロになった時はチーム・スバルに入ったのでレオーネだったが、それは職業ドライバーとしてな。
清水和夫がハイウェイで思う、ADAS、LKASの重要性
さぁ、高速道路(首都高)に入るよ。高速道路は路面のつなぎ目もあるからハーシュネスや、路面もだいぶ古くなって荒れているのでタイヤやサスペンションの評価にはうってつけ。カーブも結構きついからADAS(先進運転支援システム)やLKAS(車線維持支援システム)などの評価にもいいと思う。

首都高速は60km/h制限、LKASがすごくいい。ちゃんとトレースしているね。
自動車メーカーの中には、『自分たちは楽しいクルマを作っているから、ADASのようなものはあまり要らないんじゃないか…』みたいなことを言ったり思ったりしている人がまだかなりいるが、そうではない! 面倒クサかったらスイッチを切ればいい。ADASに任せるというよりも、ハンズオンで走っているから、ガイドで電動パワステが動いてくれるというのは間違いがない。老眼鏡かけるとちゃんと見えるようになる、みたいな感じ。だから“スポーツカーだから要らない”とか“駆け抜ける喜びだから要らない”じゃなくて、ADASは本当に必要だと思う。だから古い考え方はやめて欲しいのだ。
昔、某雑誌で、横滑り防止装置(ESC)などがついた時に“オレはこんなもん要らない!”とか、最初にABSが入った時に“オレはポンピングブレーキができるから要らない”とか。でも、足が2本しかなくてペダルが1個しかなくて、ABSとか横滑り防止装値は4つのタイヤを個別に制御してくれる。絶対に人間ができないことやってくれているので、あえてそういう技術を積極的に取り入れて、さらなる楽しい快適な走りを求めよう!っていう風になんないのか? なんかさ、そういう人が多いんだよ日本人は。


だから、カローラがスポーツカーであったとしても、GRカローラであったとしても、トヨタセーフティセンスは必要。長距離ではシステムに任せるのではなくてシェアードコントロール(人間と機械が協調して制御を行なう方式)だから。電動パワステがカーブをちゃんと見て、スピードも設定速度のままカーブに突っ込むのではなく、カーブのRに合わせて自然にスピードを減速してくれる。これが『プロアクティブドライビングアシスト(PDA)』という技術。ACCとかADASをセットしなくても裏側でいろんなことをやってくれるので、それがこのカローラクラスにきちんと入ったっていうことがいいね。
高速道路でインプレッションしたら、あれ…ロードノイズがうるさいゾ!
下道だと良かったのに高速ではロードノイズがちょっとうるさい。やっぱりスポンジ入りタイヤを装着して欲しいな。クルマの出来がいいのにもったいない。っていうか、道が悪すぎる! 最近はインフラがどんどん老朽化しているからロードノイズはどんどんデカくなるし、道はテコボコが増えてくるのでますますタイヤ/サスペンションには厳しくなってきている。そこも競争領域なんだよな~。

あぁ~ADAS、LKASが使いやすい。ヤバい!
カローラクロスは最初のモデルでガソリン車の安いグレードがあったので、ネット上で“カローラはヤリスより安い…”みたいな話もあった。元々タイで企画されたクルマだが、今は東北に工場を移すことができ、それを機会にかなり改良が加えられたのがこの新型カローラクロス。

今まではステアリングが軽くセンターあたりにちょっと手応えがなかったのだが、今度のは手応えがしっかりしている。トヨタの方に聞いたら、別に電動パワステは変えていないが、サスペンションの締め付け締結のトルクを上げているそうだ。しっかりと締め付けてキチッと作った、と。そういうことは組み上げ工場がちゃんとやってくれないといけないので、そういう意味でも東北・岩手の工場で作ることになり、締結をしっかりつけた新型が出てきてくれた。

今回は乗っていないが、スポーツモデルのカローラクロスGRスポーツ(価格:3,895,000 円[税込])は2Lハイブリッドで、8月4日の発売を発表したら1年分の販売台数が埋まっちゃった!みたいな感じだそう。今回乗った普通のカローラクロス、1.8LハイブリッドE-Fourは400万円を切っているから価格も魅力的(2,760,000 円[G]~3,689,000 円[Z]/[税込])。
THSの凄いところ、知ってる?
今、LKASを使いカメラで白線を見ているが…おぉ~このくらいのカーブはガンガン正確に行っちゃう。もちろんハンズオンの状態だけど、電動パワステがきちっとカメラで白線を見ながら切っていく。ハンズオフができるくらいしっかりとトレースをしてくれている(※とはいえハンズオフは絶対にNGだよ!)。お、ハイビームも自動だね。

トヨタのハイブリッドシステム(THS)が凄いのは、ロバスト性が高いというか、どんな路面、どんな走行条件でもある一定以上の燃費が出るというところ。ある条件下だけだったら、例えば日産のE-Powerやホンダのe:HEVも頑張れるのだが、トヨタのTHSはハイスピードから街中から、どんな条件でも燃費がいいっていうのが得意技。しかもドライバビリティも悪くない。
いや、マジで首都高のつなぎ目の段差があってもサスペンションとタイヤのハーシュネスがいいし、ちょっとした突起を乗り越える時のダンピングもいい。なんかちょっとヨーロッパの香りがするな、このクルマは。ゴルフよりも乗り味はマイルドだけど、ゴルフのライバルとしてはすごい存在感あるんじゃないかなと思う。
最近ゴルフもMQB8.5が出てきて、1.5L eTSIで48Vマイルドハイブリッドを持っている。ソイツがリッター20km/Lくらい走っちゃうので、やっぱりゴルフは侮れない。ドイツのクルマだから速度無制限でしっかり走るクルマなので、ハイスピードはやっぱり得意。でも、日本のスピードレンジの使い方だったらカローラクロスは悪くない。最もこのカローラクロスもヨーロッパに輸出しているけど、まぁヨーロッパ仕様は乗ったことがないけど、もうちょっとサスがしっかりしているんじゃないかな?と思う。
ここでチョイBreak♪ 欧州車ハイブリッド事情と国産車ハイブリッド事情
最近、メルセデス・ベンツも2Lターボで400ps出してプラグインで600psくらいで走る…みたいなクルマをやっていたが、結局ユーザーが“ハイパフォーマンスなメルセデスに4気筒はないだろう!”ってことで、意外に売れなかった。やっぱりスペックだけじゃダメで、ユーザーがメルセデス・ベンツに期待しているものはでっかいエンジンなので、もう1回V8作る…みたいな話が出ている。技術とか機能、スペックではなく、そのブランドに対してユーザーが何を求めているのか?ということがビジネスでは大事。小さいエンジンをモーターで速くする、なんていうのは誰もメルセデスには求めていない…っていうことが分かった。

メルセデス・ベンツは元々6L、12気筒などでかいエンジンで高級車を作り続けてきたメーカーなので、燃費が厳しいからといってダウンサイジングしたメルセデス・ベンツにユーザーは触手を伸ばさなかったっていう風に分析できるよね。
ホンダのe:HEVとか各社ハイブリッドが出てきていて、日産は今年2025年、第3世代のe-POWERが出てくるが、いろいろ乗り比べると、トヨタのハイブリッドシステムは1発だけではなくて、どんなところを走っても圧倒的に燃費がいい。燃費のロバスト性みたいなところで見ると、やっぱトヨタは強いな!っていつも思うね。
そういう文脈で捉えた時に、ユーザーはトヨタに何を求めてるのか?っていうと、静かで、燃費が良くて、ロバスト性が良くて、使いやすいハイブリッドシステム…みたいなものを求めている。プリウスはハイブリッドの代名詞、まぁハイブリッド以外はないが、このカローラ(全種/カローラクロスはMCでハイブリッドのみになった)に関してはいろんなものがあるので、ユーザーは使いやすいファミリー感をカローラに求めているのだろうと思う。
値段が400万円くらいのクルマだが安かろう悪かろうではない。実際にこのカローラクロスに履いているタイヤはミシュラン・PRIMACY 4(プライマシーフォー)。ロードノイズは静かだし、ハーシュのダンピングもいい。
清水和夫のカローラクロス総評!
今回カローラクロスの新型(マイナーチェンジバージョン)に乗った。ヤリスのヤリスクロスがあって、カローラのカローラクロスがあったのだが、ちょっと存在感がなかった。その上にRAV4があって、それより上っていうとランクルみたいな世界になっちゃう。ちょうどそこ(ヤリスクロスとRAV4の間)をカローラクロスの世界がもっとしっかりとポジションを取らないといけないのかな?ということは思っていた。先代のカローラクロスは、走りっぷりがいろんな意味でもうちょっとかな?っていう感じを受けていたが、今回この新型を乗ってみたら本当に乗り心地も良くなり、ハイブリッドシステム1.8LのTHSも良くなっていた。

驚いたのが、首都高速でのADAS。特にACCとLKASが凄い。ハンズオンだけど電動パワステで走っていき、システムと人間が一緒になって動いている。首都高のきついカーブまでグ~ッと正確にカメラで白線を見ながら行く。このクラスとすれば、今の日本ではちょっとデカいけどスバル・フォレスターのアイサイトがあるが、カローラクロスも相当いいクルマに仕上がっているな、というのが印象。
今日は道を間違えてオフロード行っちゃったんだけど、でもサスペンションのストロークはあるし、多少デコボコ道へ行っても問題ない。技術改正書などを見てみると、サスペンションにも拘り、ロードノイズのキャビンへの侵入を抑えたりと上質なクルマになっている。
値段は今日乗った仕様「Z (ハイブリッド/E-Four)」で400万円くらい。ベースの[G]で2,760,000 円~、[Z]でも3,689,000 円(税込)。ライバルでいえばそうだな…スバルのフォレスターやクロストレック、あとは日産もe-POWERのエクストレイルなんかも出てくるが、結構激戦区になるのかなという気がしている。
しかし、THSという強いハイブリッドシステムにいいサスペンション、このクラスでは上級車種になんら引けを取らないADAS、特にLKASが良かった!というのが印象的だった。かなり気に入ったよ!

【SPECIFICATIONS】(今回の試乗車)
車名:トヨタ カローラクロス Z (ハイブリッド/E-Four)
全長×全幅×全高:4455×1825×1620mm
ホイールベース:2640mm
トレッド(前/後):1560/1560mm
車両重量:1490kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.2m
エンジン種類:直列4気筒
内径×行程:80.5×88.3mm
総排気量:1797cc
エンジン最高出力:72kW(98ps)/5200rpm
エンジン最大トルク:142Nm(14.5kgm)/3600rpm
燃料タンク容量:43L(無鉛レギュラー)
フロントモーター最高出力:70kW(95ps)
フロントモーター最大トルク:185Nm(18.9kgm)
リアモーター最高出力:30kW(41ps)
リアモーター最大トルク:84Nm(8.6kgm)
ミッション:電気式無段変速機
燃料消費率(WLTCモード):24.6km/L
サスペンション(前/後):マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(前/後共): 225/50R18
車両本体価格(税込):3,689,000円