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今日は何の日?

■マイチェンで国産車初のアクティブヘッドレスト採用

1998年(平成10)9月10日、日産自動車は3代目「シーマ」のマイナーチェンジで国産車初となるアクティブヘッドレストを採用した。クルマが急増した1980年代から1990年代に追突事故によるむち打ち症が急増したことに対して、日産が率先して追突時の頸部への損傷を軽減させるアクティブヘッドレスを採用した。

日産3代目「シーマ」マイナーチェンジ
3代目「シーマ」1998年のマイナーチェンジモデル

一世を風靡したシーマ人気にも陰りが

初代シーマ(FY31型)は1988年1月に誕生した。高級セダンながらスタイリッシュなハードトップにすることでスポーティさも兼ね備えた、バブル時代に生まれたハイソカーを代表するモデルとなった。

1988年に誕生した初代「シーマ」
1988年に誕生した初代「シーマ」

車速感応式電子制御パワステや4輪ベンチレーテッドディスクブレーキ、ハイグレードには電子制御式エアサスペンションを採用するなど当時の先進技術を採用。さらにインテリアについても、100%高級ウール素材が使われ、オプションで運転席メモリー機能や後席ヒーターシートも用意された。

パワートレインは、当時最強レベルの最高出力255psを発生する3.0L V6 DOHCセラミックターボと200psの同NA(自然吸気)の2機種エンジンと、電子制御式4速ATの組み合わせ、駆動方式はFRだった。

シーマが登場した1980年代後半は、日本では空前のバブル景気の真っただ中で、“高価なモノが売れる”、“高価でないと売れない”時代だった。シーマは、400~500万円と高価格でありながら、何と1年間で3万6000台以上が売れ「シーマ現象」という言葉が生まれた。

1991年にデビューした2代目「シーマ」
1991年にデビューした2代目「シーマ」

高級車市場に確固たる地位を築いたシーマだったが、1991年にバブル崩壊が起こり、市場がRV人気に押されるようになるとシーマの輝きは徐々に失われていった。1991年8月にモデルチェンジした2代目(FY32型)シーマは、走りと高級感にさらに磨きがかけられたが、初代のような勢いは薄れてしまった。

世界トップレベルの安全性を目指した3代目シーマ

3代目(FY33型)は、1996年6月にデビューした。3代目はシーマ人気が右肩下がりとなる中で、新たな高級車を目指した。キャッチフレーズは、“日産の新しい最高”であり、次元を異にする基本性能やクオリティを目指し、なかでも特に安全性能が強化された。

1996年にデビューした3代目「シーマ」
1996年にデビューした3代目「シーマ」

ボディは、世界最高水準を謳う“ゾーンボディ(クラッシャブルゾーン+セーフティゾーン)”を採用。衝突を軽減する衝突吸収ボディ・高剛性キャビンが実現された。その他にも、運転席&助手席SRSエアバッグにELR付シートベルト、ABS&V-TCSなども装備され、世界最高水準の安全性能が確保された。

3代目シーマのボディ構造
3代目シーマのボディ構造

3代目シーマのスタイリングは、和をテーマにした従来のデザインから重厚な欧州車風に変貌。インテリアは厳選した素材を使い、バーチャルビジョンメーター、世界初のバードビューナビ付マルチAVシステムなど上質かつ機能性が高められた。

3代目シーマに搭載されたVH41DE型エンジン
3代目シーマに搭載されたVH41DE型エンジン
3代目シーマに搭載されたVQ30DET型エンジン
3代目シーマに搭載されたVQ30DET型エンジン

パワートレインは、最高出力270ps/最大トルク38.4kgmを発揮する4.1L V8 DOHC、270ps/37.5kgmの3.0L V6 DOHC IC(インタークーラー)ターボの2種エンジンと電子制御4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FRと4WDが用意された。

1996年にデビューした3代目「シーマ」
1996年にデビューした3代目「シーマ」のコクピット、前後シート

マイナーチェンジで国産車初のアクティブヘッドレストを追加設定

1998年9月のこの日に行なわれたマイナーチェンジでは、フロントおよびリアを中心に一層高級感のあるデザインとした上で、追突された時の頚部への負担を軽減させる、日本車初のアクティブヘッドレストの採用などによる安全装備の充実、盗難防止装置(エンジンイモビライザー、カーアラーム)によるセキュリティ向上が図られた。

アクティブヘッドレスト
3代目「シーマ」マイナーチェンジモデルで採用されたアクティブヘッドレスト(追突時にヘッドレストが前に移動)

アクティブヘッドレストは、追突時のむち打ち症を軽減する乗員保護装置である。むち打ち症は、運転中の追突等によって急に衝撃が身体に加わると、身体が前方に大きく揺すられ、その結果首の上の重い頭だけが後方に残る状態になる。これによって最も弱い首が損傷を受けるむち打ち症を引き起こし、最悪の場合は頸椎の骨折や脱臼を起こすこともある。

アクティブヘッドレスト
3代目「シーマ」マイナーチェンジモデルで採用されたアクティブヘッドレストのシステム概要と作動概要

シーマに採用されたアクティブヘッドレストは、追突時に背中がシートバックを押すとテコの原理でヘッドレストを前方に移動させて頭を拘束する方式であり、国産車としては初の採用である。

なおマイナーチェンジ車の価格は、2WDの標準グレードで525万円(4.1L)/507万円(3.0Lターボ)に設定された。

3代目「シーマ」マイナーチェンジモデ
3代目「シーマ」マイナーチェンジモデルのリアビュー

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最近は、むち打ち症になったという話をあまり聞かない。クルマの構造の進化やむち打ち低減シート、頸部衝撃緩和シートといったシートの進化、さらに今回紹介したアクティブヘッドレストのようなアクティブな対応が一般的に取られているからだろう。さらに自動ブレーキのような安全運転支援技術も一般化されており、追突事故そのものも今後激減することが予想される。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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