連載

GENROQ アストンマーティンアーカイブ

DBS SUPERLEGGERA(2018-2023)

トゥーリング独自の工法の名前

DBSという名は、そもそも1969年に登場した「DB6」の後継車に付けられたものだ。その後2007年に登場した「ヴァンキッシュ」の後継車にも与えられたが、2018年にフラッグシップモデル「DBSスーパーレッジェーラ」として復活することとなった。“スーパーレッジェーラ”とは、かつて「DB4」や「DB5」のボディを手がけたイタリアのカロッツェリア・トゥーリング独自の工法の名前でダブルネームとなる。

ベースとなったのは「DB11」で、スーパーレッジェーラ(=超軽量)の名にふさわしくクラムシェルボンネット、ルーフ、トランクリッドなどにカーボンを使用するなど、「DB11 AMR」に比べて72kgもの軽量化を実現。また最先端のエアロダイナミクスを投入し、リデザインされたボディは大型ウイングなどのデバイスなしに180kgものダウンフォースを獲得していた。

スペックから想像できない軽快さ

ノーズに収まるV12DOHCツインターボは、5.2リッターの排気量はそのままに最高出力を725PS、最大トルクを900Nmへと大幅にチューンナップ。あわせて8速ATと機械式LSDを組み込んだデファレンシャルもアップデートされたほか、シャシーにはリヤサブフレーム・ブッシュを強化したVHプラットフォームを使用。サスペンションもフロントで10mm、リヤで20mmトレッドを拡大したほか、全高も5mmローダウンしている。

これらの改良により、そのパフォーマンスは0-100km/h加速3.4秒、最高速度340km/hを発揮。またシャシーだけでなく、電動パワーステアリングのセッティングも見直された結果、全長4712mm、車重1693kgというスペックからは想像もつかない軽快なハンドリングも手に入れている。

さらに2019年には、電動ソフトトップの装着やボディの剛性強化により150kgほど車重が増えたにもかかわらず、クーペとほとんど変わらないパフォーマンスを誇るオープンの「ヴォランテ」も追加。2022年モデルから名称が「DBS」に変更されたが、レギュラーモデルにおけるフラッグシップという重責を担い続けた。

アストンマーティンの量産モデル史上最強

そして2023年にDBSのファイナルモデルというべき、「DBS 770アルティメイト」がデビュー。これは吸排気系、点火系をアップデートし、ターボの過給圧を最大で7%アップするなど改良を行なった結果、アストンマーティンのマスプロダクトモデルとしては史上最強となる最高出力770PS、最大トルク900Nmを発生する5.2リッターV12DOHCツインターボを搭載した2シーターハイパフォーマンスGTである。

それにあわせて8速ATには専用のセットアップが施されたほか、新採用のソリッドマウント・ステアリングコラム、カーボンセラミックブレーキを標準で装備。シャシーもフロントクロスメンバーの追加や、リヤアンダートレイの厚みを増すことで、フロントエンドの横剛性が25%、シャシー全体のねじり剛性が3%アップするなどの改良が施されている。またボディも770PSのV12ユニットのためにクーリング性能を強化。それと同時に全体のエアロダイナミクスもアップデートされ、よりアグレッシブなスタイリングとなった。

一方インテリアでは縦方向のキルティングとパフォレーテッド・パターンを組み合わせたフルセミアニリンレザーとアルカンターラのコンビネーションによるスポーツプラスシートを標準で装備。そのほかカーボン製のギヤシフトなど専用の装備が奢られている。

クーペが300台、ヴォランテが199台の限定生産となったDBS 770アルティメイトは、発表されるや否や完売し、DBSシリーズの有終の美を飾ることとなった。

「DB11」から採用される新世代のVHプラットフォームをベースとする。

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