地球に寄り添う技術哲学で「エネルギー極少化」、ヒトに寄り添う技術で「本質価値極大化」を実現へ

スズキは今年2月に新中期経営計画を発表し、「チームスズキは生活に密着したインフラモビリティ」を目指す姿として掲げ、コーポレートスローガン「By Your Side」を設定した。

このたび発表した技術戦略2025では、従来の環境・エネルギー問題への対応に加え、人々の移動に関わる社会課題にも、スズキの技術で積極的に取り組んでいく。

生活に密着したインフラモビリティ企業として、従来の行動理念「現場・現物・現実(3現主義)」に加え、「原理・原則(2原)」を取り入れた「3現・2原」を新たに掲げ、地球に寄り添う技術哲学で「エネルギー極少化」、ヒトに寄り添う技術で「本質価値極大化」を実現し、「Right x Light Mobile Tech(ライトライト モビルテック)」として、顧客に寄り添う価値を提供していく。具体的な取り組み内容は以下のとおり。

軽くて安全な車体
安全で軽量な「HEARTECT(ハーテクト)」をさらに進化させ、軽量化技術によるエネルギーの極少化に取り組むなかで、昨年掲げた「100㎏の軽量化を目指す」という目標に対し、先人の知恵を学ぶために過去モデルを研究し、二輪・四輪の部門を超えた活動により、約80㎏の軽量化を達成できる目処が立った。今後も、性能を担保しながら「丁度いい」全体最適を行い、部品のひとつひとつ、ボルト1本に至るまで突き詰め、目標達成に向けて開発を進める。

効率良いICE、CNF技術(ICE:Internal Combustion Engine、CNF:Carbon Neutral Fuel)
昨年発表した「スーパーエネチャージ」を、車体の軽さを活かしたハイブリッドシステムとして先行開発しており、掲げていた目標性能を達成できる見込み。また、これまでのエンジン開発で培った、高速燃焼、低フリクション技術に磨きをかけ、その技術を横展開した高効率エンジンの新開発を進めている。
カーボンニュートラル燃料車については、インドで二輪車の「GIXXER SF 250 FFV※」の量産を今年1月に開始。四輪車では各モデルのE20燃料への対応を行った。四輪車もFFV対応エンジン搭載モデルを年度内に投入できるよう開発を進めていく。
※ FFV:Flexible Fuel Vehicle(フレックス燃料車)の略

バッテリーリーンなBEV/HEV(Battery Electric Vehicle/Hybrid Electric Vehicle)
小さく効率の良い電動ユニット、小さく軽い電池など、スズキの行動理念のひとつである「小・少・軽・短・美」を体現し、エネルギーを極少化した電動車開発を進めている。スズキ初のBEV 新型「eビターラ」はその第一弾で、EVとしての先進性やSUVの力強さを兼ね備え、航続距離もしっかり確保したバッテリーリーンなBEVだ。
二輪車では、インドで発表した「e-ACCESS」も同様に、バッテリーリーンなちょうどいいEVスクーターとして各国で投入を予定している。

SDVライト(SDV:Software Defined Vehicle)
スズキのカスタマーに「丁度いい」高性能電装品の実現手段と定義。新型「eビターラ」よりSDVライトの考え方を適用し、BセグメントSUVを求める方にちょうどいいとスズキが考える機能を搭載している。今後も、各モデルのユーザーに丁度いい機能を厳選し、価値ある電装品を搭載していく。

リサイクルしやすい易分解設計
スズキは、リサイクルや再利用を前提とした分解しやすい製品設計を行うだけではなく、軽量化設計の「Sライトプロジェクト」と連携した樹脂部品の減量や、リサイクルを促進する材料統合、分解不要なモノマテリアル化を進めている。また再生プラスチックの活用技術も進化しており、順次製品に導入していく。

そして、カーボンニュートラルに向けた取り組みについては以下の内容が発表された。

チームスズキCNチャレンジ
昨年に引き続き鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦した「チームスズキCNチャレンジ」は、ライダー以外はすべてスズキ社員で構成したチーム。カーボンニュートラル社会の実現に向けた「エネルギー極少化」を技術哲学とした技術開発と同時に、社員の挑戦する意欲を高め、強いチームワークを生んでいる。マシンは、タイヤ、オイル、カウル、ブレーキをはじめとした部品にサステナブルな材料を採用し、100%サステナブル燃料を使用して挑戦した。今後も、レースを通して環境負荷低減の可能性をはじめとしたサステナビリティへの取り組みを推進する。

バイオガス事業
今年7月、同社のバイオガス事業が、国際連合工業開発機関(UNIDO)が公募した産業協力プログラムに採択された。現在建設中のバイオガスプラントは2025年より順次稼働を開始する。供給されるバイオガスは、インド乗用車市場の約2割を占めるCNG車の燃料として使用可能で、温室効果ガスの排出抑制にも貢献する。また、この事業はエネルギー自給率の向上や、新たな雇用創出に加え、牛糞の買い取りや牛糞から作る有機肥料を通じて農村の所得や生活水準、生産性の向上につながる。今回の採択を受け、日本の技術を導入した新たなバイオガスプラントの建設に向けて、引き続き取り組んでいく。

スズキ・スマートファクトリー
製造領域でもカーボンニュートラル社会の実現に向け「スズキ・スマートファクトリー」と名付けたプロジェクトを進めている。デジタル技術を活用して操業を見える化し、品質と生産性を向上させることで製造のエネルギー極少化を進めている。今年6月に稼働を開始した湖西工場の新塗装工場では、この取り組みにより使用エネルギーを大幅に削減している。