背景
近年、xEV(電動車)の駆動系において、より高効率で軽量なシステムが求められており、広い電流レンジでの高分解能な電流センシングのニーズが高まっている。特に流れる電流量の幅が大きいトラクションインバータにおいては、低速走行時から加速時までさまざまな運転条件下での正確な電流検出が求められる。従来は磁性体コアを用いて磁束を集中させるコア付き電流センサーが一般的に用いられてきたが、小型化、設計自由度の面では課題があった。旭化成エレクトロニクスが現在開発中のリニアホールIC「EZ-232L」は高精度かつ高分解能という特長を持ち、コアレス構造向けの電流センサーとして使用が可能、それにより効率的なインバータ制御に必要なきめ細やかな電流検出を可能にしている。なお、EZ-232Lの量産開始は2026年度に予定されている。

実施された概念実証について
旭化成エレクトロニクスは欧州の研究機関であるSilicon Austria Labs GmbHと共同で、EZ-232Lを用いて電流センサーを一体化したパワーモジュールを試作し、高精度の電流検出ができることを確認している。その後、本年6月には、旭化成エレクトロニクスと別の外部評価機関にて、トラクションインバータの模擬システムを用いて、コアレス電流センシングを使用して実際にインバータを駆動させるシステム検証が行われた。その結果、従来のコアを用いたシステムと同等の効率でインバータ動作が可能であることが確認された。これらの概念実証はコアレス化によるトラクションインバータシステムの小型化・効率化に向けた大きなブレークスルーとなる。
