歴史 S13シルビアに込められた901活動の魂・理想的な動きを実現したマルチリンクリヤサスペンション 【時代の名車探訪 No.3-10】 日産シルビアS13・1988(昭和63)年 S13技術 1・足まわり 前編【写真・24枚目】 日産901活動の申し子たち。 皮切りはS13シルビア(1988年)。 R32スカイライン(1989年)。 Z32フェアレディZ(1989年)。 P10プリメーラ(1990年)。 S13シルビアで始まったマルチリンクリヤサスペンション。 ストラット式サスペンション。ここでは乗用車では国産初採用だった、初代カローラのストラットサスをお見せしよう。といってもこれは前輪のストラットサスペンションだが、前であろうと後であろうと全体は同じだ。ついでにいうと、この頃の大衆車のリヤサスはリーフ式が一般的だった。 初代カローラ(1966年)。 S13・・・じゃなく、その前のS12シルビア/ガゼールのターボモデルのリヤサスは、セミトレーリングアーム式だった。図はカタログからのものだが、えらく簡易的な線図だ。 S12シルビア(のハッチバック)。1983年。 国産車で初めてセミトレーリングアーム式リヤサスペンションを用いた3代目510型ブルーバード(1967年)。 リヤサスの話だから、いちばん安い2ドアセダン、1300スタンダードの後ろ姿をお見せする。 サンプルとして4代目プレリュードのリヤダブルウィッシュボーンサスの絵を持ってきた。 90年代のホンダはダブルウィッシュゴーンを4輪に備えるクルマが多かった。ボンネットを低くするにはダブルウィッシュボーンのほうが都合がよかったためだ。 4代目プレリュード(1991年)。 左に旋回中(というほどでもないが)のS13シルビア。 日産が満を持して量産化したマルチリンクリヤサスペンション。 左後輪部上面視。ダブルウィッシュボーンでは1本だったA型アッパーアームが、フロントアッパーリンク、リヤアッパーリンクの2本に分かれている。 サイド視。A字のロワアームは、車体に対して前開きなだけでなく、水平から上向きにも配されていることがわかる。 後ろ側から。ただの某にしか見えないラテラルリンクも重要な役割を果たす。 本文では触れなかったが、ダブルリンクには、対地90°のほか、スカッフ変化の抑制と・・・、 アンチスクワットとアンチリフトによるフラットライドの実現もある。 図は右旋回なのに、本文や写真では左旋回なのは申し訳ない。 サス型式によってはロールセンターが刻々と移動することにより、ジャッキアップ現象が起きる可能性がある。 ダブルアッパーリンク構造にすることで、そのロールセンター位置をも自在に設定できればジャッキアップを抑えることができる道理だ。当時資料では、これを「ロールセンターの動的コントロール」と呼んでいる。 DARSシステム。 横力を受けたときのコンプライアンス・トーインの説明図。 車輪に後ろ向きの力を受けたときのコンプライアンス・トーインの説明図。 実はこの動きにも細かな配慮が与えられている。 それは次のダブルアッパーリンク方式の項で・・・ 6代目B12サニーや3代目N13パルサーのリヤを担っていた、リヤパラレルリンクストラット式サスペンション。 2本のパラレルリンクは、直進時は名のとおりへ移行だが・・・、 タイヤに後ろ向きの力がかかると、車体とハブ部で平行四辺形をなす。タイヤはトー変化しない。トー変化しないのもトーコントロールのひとつだ。 B12型6代目サニー(1985年)。 N13型3代目パルサー(1986年)。 1987年、U12型ブルーバードの4WDモデル・ATTESA(アテーサ)のリヤサスに組み込まれたSTC-sus(スーパートーコントロールサス)。 サニーやブルーバードのFFでは等長だったパラレルリンクを不等長にし、タイヤ上下動によるトー変化抑制を防ぐ他・・・、 トーコントロール機能も有し、車両旋回時や高速での車線変更時は前輪と同位相側を向き、ブレーキング時はトーインになる・・・何だ、S13の前年から、マルチリンクリヤサスやHICASの機能をFFベースのATTESAで先取りしているではないか。 U12型ブルーバードATTESA(アテーサ)。1987年。 ダブルアッパーリンク説明図。 現実にはタイヤにぶっ刺さってしまうから設けることのできないキングピン軸を仮想化してタイヤ内に設定。 軸線上方をタイヤ外側に置いて上開き逆ハの字の仮想キングピン軸とした。 これがフットブレーキであろうとエンジンブレーキであろうと、適正なトーイン量を実現できた種だ。 国産初採用が快挙だった、3代目ブルーバード(510型)のリヤセミトレーリングアーム式サスペンションの上面視。 アームの取付が斜めになっているからセミトレーリングアームなのだ。 これがこの写真で見て水平だとトレーリングアーム式となる。 この画像の記事を読む