お台場地区の回遊性を高める新モビリティとしての活躍に期待
トヨタは9月15日、次世代モビリティ「e-Palette（イーパレット）」の販売を開始した。移動手段のみならず、移動店舗やサービス空間など多様なモビリティサービスを担うバッテリーEVだ。
導入はまず、10月3日開業予定の「TOYOTA ARENA TOKYO（トヨタアリーナ東京）」と、9月25日開業予定の「Toyota Woven City（トヨタウーブン・シティ）」から始まり、自治体や販売店との実証実験を通じて展開が広がる。価格は2900万円で、環境省の補助金対象となり、約1583万円が助成される。
イーパレットは2018年、アメリカ・ラスベガスで開催された世界最大級のテック見本市であるCES（Consumer Electronics Show）でコンセプトモデルを発表。それ以降も開発が続けられていたが、7年の歳月を経てついに発売に至った。
イーパレットのボディサイズは全長4950mm、全幅2080mm、全高2650mm。直方体のシルエットであるため、間近に立つと大きく見えるのだが、全長は5m以下に抑えられている。東京オリンピック2020仕様が全長5255mm、全幅2065mm、全高2760mmだったため、全幅が15mm広がった以外は、ややボディは小型化された。
イーパレットの最高速度は80km/h。72.82kWhのバッテリーを備えており、航続距離は約250kmを確保している。90kWの急速充電では40分で80％充電が可能、6kWの普通充電では12時間程度で満充電となる。車両が停止した状態でも給電が可能で、災害時には非常用電源としての活用も想定される。
室内は運転手を含めて、最大17人が乗車可能。後部には座席が4つ、サイド部には折り畳み式の座席が3つ設けられている。実際に乗り込んでみると、ボディサイズから想像する以上に、広々とした印象を受ける。低床設計と大開口スライドドア、電動スロープにより、車いす利用者が介助なしで乗降できるユニバーサルデザインも特徴だ。車高調整機能も備わっており、通常時は370mmのフロア高を270mmまで下げることも可能。歩道の高さが15cmの場合でも、車いすの方が介助なく自力で乗降することができる。
イーパレットではその広い室内空間を生かして、一日の中で朝・晩はシャトルバス、日中は充電しながらの移動店舗といった異なる用途での利用も可能。デジタルサイネージを車内外に装備して、利用者自身で編集可能なソフトウェアが提供されるというのも新しい試みだ。イーパレットはトヨタアリーナ東京で移動販売車両としても活躍する予定だが、インパネの横に1500WのACコンセントが設けられており、展示車はその電気を使って飲料用の冷蔵庫を冷やしていた。
コンセプトモデルや東京2020仕様では未装備だった運転席だが、市販モデルのイーパレットでは運転席を車両前部の中央に配置した。ステアバイワイヤシステムの採用により、ステアリングは上下を切り取ったようなヨーク型を採用。「最初は慣れが必要かもしれませんが、いったん慣れてしまうとすごく運転しやすいです」と、展示車両の説明員が教えてくれた。ちなみに、イーパレットの運転をする際には、中型免許が必要となる。普通免許では、乗車定員が10人以下の車両しか運転ができないためだ。
そして、イーパレットで注目なのは自動運転への対応だ。発売時点ではレベル2相当のシステムに対応しつつ、2027年度にはレベル4準拠の自動運転システムを市場導入する計画を掲げる。車両制御インターフェース（VCI）により多様な開発会社のシステムを搭載可能とし、社会実装を見据えた開かれた設計思想を打ち出している。
9月15日に行われたトヨタアリーナ東京の開業記念式典では、小池百合子 東京都知事が臨海副都心における「回遊性の向上」が重要であるとし、トヨタグループと連携することで、「誰もが快適に移動して気軽に楽しめるそんな魅力ある街づくりを進める」と述べた。イーパレットは、そうした魅力的な街づくりの一翼を担う存在としての活躍も期待される。
トヨタ・イーパレット 主要諸元
サイズ
全長×全幅×全高：4,950mm×2080mm×2650mm
室内長×室内幅×室内高：2865mm×1780mm×2135mm
車両重量：2950kg
定員（座席＋立席＋運転手）：17（4＋12＋1）人
フロア高：370mm（車高調整オプション使用時270mm）
ドア開口幅／開口高：1280mm／1900mm
性能
最高車速：80km/h
最小回転半径：6.5m
航続距離：約250km
動力用主電池
種類：リチウムイオン電池
バッテリー容量（総電力量）：72.82kWh
電動機（モーター）
種類：交流同期電動機
最高出力：150kW
最大トルク：266Nm
充電時間
急速（DC90kW・200A）：約40分（満充電量の約80％充電）
普通（AC6kW・30A）：約12時間
価格
2900万円
