連載
今日は何の日?■トヨタのフルライン戦略で登場したコロナ・マークII

1968(昭和43)年9月21日、トヨタは上級志向を持つ「コロナ」のオーナーを対象に、コロナよりひと回り大きな車格と上級な装備を持った「コロナ・マークII」を発売した。1960年代後半に入り、クルマが急速に一般ユーザーに普及した中で、トヨタのフルラインナップ充実のため、コロナ・マークIIが投入されたのだ。
マークIIのベースとなったコロナ
トヨタは1955年の完全オリジナル乗用車「トヨペットクラウン」、1957年モノコックボディを採用した「トヨペットコロナ」、1961年には大衆車「パブリカ」を発売。さらに1966年には、今日まで続くロングセラーの初代「カローラ」を市場に投入した。

初代コロナは、クラウンの足回りやトヨペットマスターの車体を流用して短期間で造り上げ、丸みを帯びたフォルムから“ダルマ”の愛称で親しまれた。搭載エンジンは、最高出力33psの1.0L 直4サイドバルブエンジンだったが、パワー不足や耐久性の問題から販売は目論見通りに伸ばせず、ライバルの「ダットサン110/210(1959年から「ブルーバード」にバトンタッチ)」の後塵を拝した。

コロナが人気を獲得したのは、すべての設計を刷新した1960年の2代目からだった。そして3代目で始めてブルーバード超えを果たし、ここから日産のブルーバードとの長期にわたるBC戦争と呼ばれた闘いが始まったのだ。

3代目コロナの上級バーション・マークII登場

1968年9月のこの日、3代目コロナをベースにして、コロナとクラウンの中間層を狙ってデビューしたのがコロナ・マークIIだ。コロナから一気にクラウンに乗り換えるにはハードルが高いと考えるユーザーがターゲットになった。一方で、約半年前には日産からハイオーナーカーを謳った「ローレル」がデビューしており、実質的なマークIIのライバルだった。

スタイリングはコロナのボディを大型化した上で、躍動感のあるフォルムとし、メッキパーツを多用して上級化を図った。インテリアについても、その豪華さや充実ぶりでライバルの日産「ローレル」を上回った。ボディタイプは、4ドアセダンと2ドアハードトップ(HT)、ワゴン、商用車(バン、ピックアップ)と多彩なことも特徴のひとつである。

エンジンは、最高出力85ps/最大トルク12.5kgmを発揮する1.6L 直4 SOHC、100ps/15.0kgmの1.6L 直4 SOHCの2種エンジンと、3速/4速MTおよび2速/3速ATの組み合わせ。
車両価格は、1.9L仕様で74.9万円(セダン)/84.8万円(HT)に設定。当時の大卒初任給は3.1万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で556万円/629万円に相当する。


コロナ・マークIIはバリエーションの豊富さや上質な装備、強力な販売網で、先進性を誇った日産ローレルを圧倒した。
その後のマークIIの絶頂期と低迷
・2代目トヨペットコロナ・マークII(1972年~1976年)
先進的なデザインで初代より大型化し、より上級かつ上質感をアピール。
・3代目トヨペットコロナ・マークII(1976年~1980年)
丸型ヘッドランプとスクエアライト、独立したフロントグリルというヨーロピアン調の優雅な雰囲気へと変貌し、コロナのイメージから完全に脱皮。
・4代目トヨタコロナ・マークII(1980年~1984年)
先代の柔らかい曲線を持つデザインから直線基調のデザインに変わり、主力がセダンからピラードハードトップに変更。また兄弟車「チェイサー」と「クレスタ」も加わり、“マークⅡ 3兄弟”と呼ばれた。
・5代目トヨタ・マークII(1984年~1988年)
車名からコロナが消え、スポーティな高級セダンを指す“ハイソカー”という造語が生まれて、マークII 3兄弟は空前の大ヒットとなった。1985年には、月販台数は1.2万台を超え、その後2万台を超えることもあった。
・6代目トヨタ・マークII(1988年~1992年)
ハイソカーの中心的存在として定着したマークII、6代目はバブル景気と重なったバブリーなモデルとして、歴代マークIIの中で最も多い販売台数を記録。
・7代目以降のトヨタ・マークII(1992年~2004年)
プラットフォームを刷新して3ナンバーサイズとし、先代を凌ぐ高級感と高性能を実現。しかし、発売は不幸にもバブル崩壊時期と重なり、この頃からマークII人気に陰りが見え始め、その後8代目、9代目と続いたが、もはやクルマ自体の出来栄えとは関係なくセダン市場は衰退の一途となり、遂に9代目を最後に2004年マークIIブランドは幕を下ろした。
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初代はお洒落な中型セダンとは言えなかったが、時代の要望に応えて一世を風靡するハイソカーの代表となったクルマに大変身したマークII。日本の自動車の聡明期から絶頂期までを駆け上がり、盛り上げた名車のひとつである。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。










