BMW M

モータースポーツ活動とスポーツモデル製造を両立

今回取材したのは富士スピードウェイで開催されたBMW & MINI Racing 2025のラウンド5。
今回取材したのは富士スピードウェイで開催されたBMW & MINI Racing 2025のラウンド5。

その名にMotorsportsの頭文字を刻んだBMW M社は「名は体を表す」ということわざのとおり、モータースポーツを愛し、モータースポーツとともに歩みを刻んできた、世界屈指のブランドといえる。

戦前から行われていたワークス活動、プライベーターへのエンジン、パーツ供給といった事業を統合した、BMW M社の前身であるBMWモータースポーツ社(BMW Motorsport GmbH)が誕生したのは1972年5月1日のこと。それまでもメーカーのモータースポーツ部門が独立したケースはあったが、BMWモータースポーツ社が特徴的だったのは、そのコアイメージとなるミッドシップスーパーカー「M1」を発表し、モータースポーツ活動とスポーツモデル製造を両立させてきたことだ。

「今、世界的にBMW Mモデルは好調で年間約20万台販売されています。日本では販売台数のおよそ16%がMモデル(M2やM3、M4)あるいはMパフォーマンスモデル(M340i xDrive、X3 M50 xDriveなど)で、これは当然ながらアジアではトップクラスです。特に人気なのがM2で、今年の生産量を増やしたくらいです」

そう語るのはBMWセールス・ディビジョン/ビジネス・デベロップメント/BMW Mの巻波浩之シニア・マネジャーだ。日本における躍進は、年初に開催される東京オートサロンで展開される様々な趣向を凝らしたBMWブースや、全国を巡るキャラバンといった地道な活動の成果であるとともに、モータースポーツと密接な関係にあるBMW Mのイメージが、多くの人々に浸透している証左であるともいえる。

BMWのテクノロジーを最大限活かして楽しむレース

中でも象徴的な活動が「BMR」、特にBMW M2 CSレーシング・シリーズだ。現在BMW M社は、Mモデルの開発、製造やMパフォーマンス・パーツの製作だけでなく、「M4 GT3」などのピュアレーシングカーの開発およびレース活動を行なっており、この「M2 CS レーシング」もBMW M社が一般カスタマーがディーラーで購入できるワンメイクレース用に開発したマシンだ。

「より多くの人に興味を持ってもらうため、日本でもカスタマーレーシングの裾野を広げたい。レースと市販車のつながりをアピールしたい」という想いを込め、欧州に続いて日本でも2022年からシリーズ戦がスタートしたのがM2 CSレーシング・シリーズだ。レースは1日2レース開催のダブルヘッダーだが、レース1ではスタンディングスタート、レース2ではレース1の上位60%をリバースグリッドにした上、ローリングスタートで実施する。さらに前戦優勝ドライバーは最高出力を450PSからダウンするBoP(性能調整)も実施される。

「BMWのテクノロジーを最大限活かしてレースを楽しんでいただきたい。そのためにひとり勝ちならないよう工夫しています。だから出るのはもちろん楽しいけれど観ても楽しい。今日のレースも中々面白かったでしょう?」

新型M2レーシングが2026年に投入

そんなBMRは2026年シーズンに大きな変革期を迎える。「新型M2レーシングが投入されます。2.0リッター4気筒ターボで最高出力313PS。11月に開催されるラウンド6のもてぎ戦で新型をお披露目したいと思っています。現在7ディーラーが参戦していますが、マシンが代わることで来年以降台数を増やしたいですし、まだ参戦していないディーラーにも、お客様をサーキットに招待するなど、Mの魅力を伝える場として活用していただきたいです」

ではBMWとしてBMRの活動の先に、何を見据えているのだろうか?

「BMWのモータースポーツ活動は、WEC(世界耐久選手権)ハイパーカークラスのMハイブリッドV8、LMGT3クラスのM4 GT3 EVOによるマニュファクチャラーとしての活動を頂点に、スーパーGTやスーパー耐久などカスタマー・チームによるレース、そしてBMRと続くピラミッドになっています。その下にBMWドライビングエクスペリエンスなどが位置しますが、今後Mモデル購入者が、欧州プログラムに参加することも考えています。それに加えて国内にもきめ細かなプログラムを整備して裾野を広げたいですね。またBMRからスーパー耐久やGTアジアにステップアップしたいという人を支えたいなど、さらなる発展性があると考えています」

そのためのPR活動もより一層力をいれていくと巻波氏は語る。

「2025年はM3 CSツーリング、XM by Kith、M4 CS VR46、M2 CSといった新型Mモデルがリリースされましたし、レースアンバサダーにも活躍してもらってBMW M、そしてBMRを盛り上げたい。これはすごく重要です。来年のオートサロンでは、BMRのレース詳細や新リーディングカーも発表する予定です」

モータースポーツで光る市販車の良さ

そうした熱い意気込みがあるのも、BMW Mシリーズの圧倒的なクオリティとパフォーマンスがあってのことだと、巻波氏は力をこめる。

「M4 GT3のエンジンは市販車と基本的に同じです。M4 GT4に至ってはトランスミッションも同じ。つまり市販車の良さが重要になるわけです。私自身、リーディングカーのM4でサーキットを走りますが、富士のストレートでは260km/h出るし、何周走ってもブレーキも問題ない。そんな普通の市販車で実現できないことができるのがMなんです。その魅力をもっと伝えていきたいですね」

PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)