ハードチューンながら公道走行を想定!?

アメリカのタイムアタックシーンに殴り込みをかける!

例年、SEMAショーに意欲的な作品を出展しているフロリダのグーイチ・モータース。24年のSEMAショーでは、ワイドボディにV6ツインターボを換装したレーススペックのCR-Xで周囲の度肝を抜いた。

例年、SEMAショーに意欲的な作品を出展しているフロリダのグーイチ・モータース。24年のSEMAショーでは、ワイドボディにV6ツインターボを換装したレーススペックのCR-Xで周囲の度肝を抜いた。

「せっかくならあれもやろう、これもやろうと、クレイジーなアイデアがエスカレートしていったんだ。エンジンはV6スワップでいこう、じゃあついでにツインターボにしちゃおう!って感じでね(笑)」。

サムがそう語る通り、CR-Xはネタが渋滞気味なほどの超絶メイクを実現しており、どこから書いていけばいいか悩んでしまうほどだ。

で、悩んだ挙句、最新のアメリカのクルマ作りらしいトピックという意味で、まずはワイドボディから取り上げよう。大開口のフロントバンパーとブリスター形状の前後ワイドフェンダーは、3Dアーティストのジョン・シーバルがこのCR-Xのためにデザインした一点物。車体の3Dスキャンデータを元にジョンがPC上でレンダリングを作成し、次はそのデータを元にCNCマシンで型を削り出す専門業者に型の製作を依頼。FRPで成形してマウントするという製作工程を経ている。

ポイントは工程のほとんどがデジタル化されていることと、各パートを得意とするスペシャリストが分業で関わっていること。それぞれのピースをパズルのように組み合わせたグーイチのプロデュース能力が具現化した、ワンアンドオンリーのワイドボディと言えるだろう。

そして、エンジンはアキュラのTLなどに搭載されたJ32型のV6に換装。新品のエンジンをP2Rパワーレブレーシングが組んだユニットで、スリーブドブロックに各種鍛造のパーツを使用している。それをギャレットのタービン2基を搭載したツインターボに仕上げ、ピークパワーは850psから1000psを想定しているそうだ。

ターボレイアウトやチタンパイプを使ったターボ周りのエキゾーストはグーイチによるカスタムメイド。ハスポートのエンジンマウントを流用しているが、CR-XにJ型を載せるキットがあるわけではなく、創意工夫を凝らしている。燃料系にはラディウム・エンジニアリングのコンポーネントを使用し、エンジン制御にはハルテックのR3 ECUを採用した。

さらに、パワートレインはAWD化されており、これまたパズルを組み合わせるかの如く、さまざまなアフターパーツが活用されている。

まず、J2Kアダプターと呼ばれるJ型エンジンとK型用ミッションのベルハウジングを合わせるプレートを使い、ドラッグカルテルがK型のAWD化用としてリリースしているクワイフのシーケンシャルミッションとビレットのトランスファーケースをドッキング。後輪方向には途中にビスカスカップリングを仕込んだ3ピースのS1ビルト製プロペラシャフトを使い、レース中でも手軽にファイナルギヤを交換できるレーステックのクイックチェンジへと接続。前輪がスリップすると後輪にもトルク配分される四輪駆動システムを実現させた。

車内を剛結するフルロールケージに、OMPのレース用バケットシートと、完全にレースレディなインテリア。メーターはハルテックのIC-7デジタルダッシュで、OMPのステアリングにはワイヤレススイッチとパドルシフトがついたパッドも装着されている。クワイフのシーケンシフターの前にはハルテックのキーパッドがマウントされ、電装系の操作に対応。アンチグラビティ製の軽量リチウムイオンバッテリーも備わる。

以前ウェブオプションでも取り上げたZ4 GT3に続いての登場となった、チーム・グーイチ・モータース。一番右が車両オーナーのジェイソン・ベーコンで、左から2番目がショップオーナーのサム・モリスだ。ラスベガスで開催されるSEMAショー終了後は、CR-Xを積載したトレーラーを引くトラックに全員乗って、交代で運転しながらノンストップで東海岸のフロリダまで帰ったというから、仲の良さが伝わってくる。

リヤに「I♡JDM」というプレートが備わるが、正真正銘本物のフロリダプレートで、希望ナンバーで「I」と「JDM」の間にスペースを設けて申請し、後から♡マークを付け足したんだとか。そう、なんとこれでれっきとしたストリートリーガルなのである。

「そこがこのプロジェクトの肝だったんだ。ストリートリーガルなタイムアタックマシンとしてSEMAでデビューさせる。どう、ぶっ飛んでるだろ?」。チーム・グーイチの面々は、唖然とするこちらを見ながら、してやったりと笑顔を浮かべた。

Photo:Akio HIRANO  Text:Hideo KOBAYASHI

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