両車のキャラクターがより明快に

新しいデリカミニとeKスペースが正式発表され、価格も明らかにされた。

ただし、8月の公開&秋発売のアナウンスを経て今回の正式発表&価格公開を迎えても購入予備軍はまだ待たされなければならないようで、正式発売は10月29日(水)の予定だ。

現行デリカミニは2023年春の発売だからたった2年半での新型化だが、前身のeKクロススペース時代を含めると6年半・・・順当なモデルチェンジである。

新型eKスペース(左)と新型デリカミニ(右)。

eKクロススペースの置き換え版が「デリカミニ」になることを初めて耳にしたとき、「いまのeK X(クロス)がすでにデリカミニじゃないの」と思ったものだが、実際の現行デリカミニが、デリカからもeKからも遠ざかったスタイリングを選んだのは大正解だった。
街で見かける頻度はeKスペースより高く、新型が現行の好評スタイリングを受け継いだのは当然だろう。

いまも販売中のeK X(クロス)。
デリカD:5。顔が似ている。

新型化したデリカミニとeKスペース、メーカーがもっぱら前面にPRするのはデリカミニのほうだ。
明らかになった機種体系がそれを象徴している。

両シリーズとも、機種構成は現行を踏襲。
すなわちデリカミニが、価格の安いほうから「G」「T」「G Premium」「T Premium」なのが新旧一緒なら、eKスペースが下から「M」「G」なのも現行と変わらない。

ただし、メーカーのデリカミニ推しが見えてくるのはここからで、新型ではこれまでのG Premium、T Premiumのさらに上を行く「T Premium DELIMARU Package」「G Premium DELIMARU Package」が新たに加わった。
したがって、デリカミニの基本機種構成は6つ。
それぞれに2WDと4WDが用意されるから都合全12機種となる。

デリカミニ機種構成&車両本体価格

まずはデリカミニの価格から見ていく。

新型デリカミニ。

2WDと4WDの価格差は、Gが21万4500円、Tが21万5600円、他が一律16万7200円となっている。
下から上まで眺めまわすと、続投機種は、現行からの価格上昇幅が大きいのが気にかかる。

ことに新設されたシリーズ最高額の値札をぶら下げる「T Premium DELIMARU Package」の4駆なんて300万円の壁がすぐそこまで迫るほどの額で、オプションなしの丸裸で買ったって、保険かけてナンバープレートくっつけて走る頃には明らかに300万円を超える。
半導体不足の影響がまだ尾を引いているのか、原材料の価格高騰があるのか、人口減による需要減をカバーするためなのか・・・邪推のひとつでもしたくなってくるというものだ。

新型デリカミニ、車両本体価格表。「T」がつくのはターボ付きだ。

もっとも、高くなるにはそれなりの理由があって、装備表を見れば、T Premium DELIMARU PackageやG Premium DELIMARU Package(以下ともにDELIMARU Package)の価格を押し上げている要因がわかる。

意外なことに、DELIMARU Packageとそのすぐ下のT Premium、G Premium(以下、まとめてPremium)とで、一般的装備や装飾装備はほとんど同じ。

軽自動車なのにDELIMARU Packageがおおよそ260万円から300万円近い価格レンジにまでおよんでいるのは、低廉寄りTとGに58万0800円で用意される、ナビ情報系デバイスなどデジタル関連装備をひとまとめにした工場オプション「コネクトパッケージB」が標準化されているからだ。

パック内訳のまず大物は、「Google搭載インフォテイメントシステム(12.3インチディスプレイ)」だ。

Google搭載インフォテイメントシステム(12.3インチディスプレイ)。

他に「セキュリティアラーム」「データ通信用USBポート Type-C×2」「HDMIポート」「ビルトインETC2.0ユニット」「3Dマルチアラウンドモニター 移動物検知機能(MOD)」「デジタルルームミラー」「前後ドライブレコーダー」「MITSUBISHI CONNECT」がセットになっている。

いまでは特に目新しくなくなった3Dのアラウンドモニターも、三菱自動車としては初採用なのだそうで。
いっぽう、DELIMARU Package限定とはいえ、ドライブレコーダーが標準だなんて聞いたら、そこいらの上級SUVだってしっぽ巻いて逃げだすことだろう。

Google搭載インフォテイメントシステム(12.3インチディスプレイ)。
データ通信用USBポート Type-C×2。
3Dマルチアラウンドモニター 移動物検知機能(MOD)画面。
デジタルルームミラー。

軽自動車なのにファーストカーにも使えそうな装備を満載するなら、そりゃあ値段だって300万円に迫ろうというものだ。

なお、コネクトパッケージBからドライブレコーダーが外され、デジタルルームミラーが自動防眩ミラーに置き換わった「コネクトナビパッケージA」が、T Premium、G Premiumに39万9300円で、TとGに45万9800円で用意されている。

eKスペース機種構成&車両本体価格

お次は標準的モデルのeKスペースだ。

新型eKスペース。

スタイリング上、あるいは車両キャラクターやネームバリューの観点から、これまでのeKスペースは、デリカミニの強烈な個性の向こう側に隠れてしまい、どうしても目立つことができない感があった。
過去の三菱車で例えるなら、ギャランに対するエテルナ、ディアマンテに対するシグマのイメージだ。
筆者はクルマのスタイルが目立たないことはむしろいいことだと思っているのでそれでもいいと思っているが、メーカーや販売店はデリカミニと同じ意気込みで売りたいだろうし、現オーナーの中には、デリカミニのアウトドアテイストを敬遠してeKスペースに逃げただけのひとがいるかも知れない。

こんどの新型はいい。
強烈な個性こそないが(それでいいのだ)、退屈そうな顔立ちをしているわけでもない。
ためらいなく、堂々胸を張って乗れる軽自動車。
デリカミニを好まないからeKスペースを選ぶのではなく、eKスペースがいいからこっちに決めた!
そんな積極性で選ぶことのできる顔に変身した。

デリカミニとeKスペース、統計的数字を持っているわけじゃないからどれくらいの販売比率なのかわからないが、新型はeKスペースの比率がこれまでより上がると思う・・・値段次第だが。

というわけで、そのeKスペース新型の価格を見てみよう。

新型eKスペース、車両本体価格表。ターボ付きはなく、すべて自然吸気エンジンとなる。

前述のとおり、機種体系は現行を踏襲。
繰り返すが、安いほうから「M」と「G」で、こちらもそれぞれに2駆と4駆があるから、トータル4機種となる。

安全デバイスの充実があるとはいえ、軽自動車も量販モデルですら180万から200万近くになり、「いったいどうなっちゃったの」と嘆いているところだが、最高値290万7300円のデリカミニ「T Premium DELIMARU Package」の値札を見た後では、eKスペースがずいぶん安価に見えてくる。

ただ、冷静に見てみると、現行モデルからの価格上昇幅は、デリカミニよりもeKスペースの廉価モデルのほうが大きい。
エントリーモデルのMの2駆こそが16万8300円も上がり、デリカミニのどの機種よりも上がり幅が大きいのが奇妙だ。

ところで機種構成を見ると、メーカーはデリカミニを前面PRしたいのが一目瞭然であるのに対し、装備表を見ると軽自動車本来の姿をめざしたのはeKスペースということがわかる。

さきのDELIMARU Packageに代表される上級SUV並みの装備を施して遠乗りにも耐える使い方もできるデリカミニに対し、こちらeKスペースはレーダークルーズコントロールを持つ機種はなく、デリカミニのDELIMARU Package、Premiumでスイッチがつくハンドル左スポークはのっぺらぼう(新型シリーズのレーダークルーズのスイッチは、通例とは逆にハンドル左スポークにつく)。

eKスペースはレーダークルーズコントロール付車がないので、全機種ハンドルスポークは写真のようになる。

凝った3D表示のモニターだって装備リストに見当たらない。
これまでどおりに周囲を確認したい方は、「マルチアラウンドモニター 移動物検知機能(MOD)+自動防眩ルームミラー(マルチアラウンドモニター)」をまとめた「先進安全パッケージ」をどうぞというわけだ。

自動防眩ミラー。写真はデリカミニのもの。

いまどき求められる最低限の装備や安全デバイス要件は満たす傍ら、収納や後席シートの使用感を大事に、大事に・・・これ見よがしな装備を控えめにして日常ユースに徹した開発姿勢が、eKスペースの車両価格に反映されている。

計器盤助手席前のドリンクホルダー付きトレイ。
リヤシートアレンジ。

もっともここまで書いたことは、あと少しだけ販売される現行デリカミニ&eKスペースも同じ。
新型では装備や機能をブラッシュアップさせながら、両車の棲み分けをより明確にさせたというべきだ。

デリカミニにもeKスペースにも、ここでちょっとご紹介した以外のパッケージオプションが用意されているし、その内訳は両車少しずつ異なる。

本記事を見なさんがお読みになっている頃にはメーカーサイトにも新型情報が公開されているはずなので、より詳細情報をお知りになりたい方はメーカーサイトをごらんいただきたい。