Monterey Car Week

20年前はウィークエンドだったけど

2025年のモントレー・カーウィークも、色々思うところはあるとはいえ、クルマ好きにとってのパラダイスであり続けていたことは間違いない。

何度かの欠席はあるものの、1996年から8月の第3週にはモントレーを目指してきた。その昔を思い出せば、イベント入場料とホテル代と飛行機代(エコノミー)を全て足しても30万円くらいだったけれど、今となっては夢のような安さだ。今や街道沿いの安宿(モーテル)でも場所が良いと10万円近くする。

イベントも増えた。何しろ20年くらい前にはまだモントレー・カーウィークエンドと言っていたのだ。それが今やウィークなのだから、イベントも増えるわけである。お金と時間があれば丸っと1週間、車漬けになって楽しむことも可能である。

イベントそのものも栄枯盛衰、新たに興ったイベントもあれば、廃れたのもある。変化に対応して人気を得たものもあれば、全く変わらない(入場料以外)のもあった。

ミウラ通なら“おかしい”と思う理由

1971年式ミウラP400S #3804として紹介されたが実は……。
1971年式ミウラP400S #3804として紹介されたが実は……。

私のモントレー2025は、数多あるイベントに目移りしつつ温故知新、シンプルに有名イベントだけに絞ってじっくり楽しむことにした。アレもコレもと欲張った若い頃とは自分自身も変わっている。

木曜日の夕方、ペブルビーチゴルフコース脇の別荘を借り切ったランボルギーニの特設ヴィラから始まった。翌日発表される「フェノメノ」についてステファン・ヴィンケルマンCEO以下サンタアガタの首脳陣から直接レクチャーを受けるためだ。ヴィラには美しいミウラが飾られていたが、これがまたレアな個体だった。紹介文には「1971年式ミウラP400S #3804」とあるが、ミウラ通なら“おかしい”と思うはず。

実はこの個体、最初はP400としてデリバリーされている。その時は緑×タンだった。2年後にファクトリーに戻され、車体番号とエンジン番号(#1787)を変えずにP400S(黄×青)へとアップグレードされて違うオーナーの元へ納車された。さらに1年後、みたびファクトリーに戻されオレンジ×黒に作り直されて、最後期のSとして同じオーナーの元へデリバリーされたのだった。だから1971年式なのに#3804なのだ。

とまぁ、こんな具合に出会うクルマそれぞれに面白いストーリーがあって全てを語り尽くすことなど到底できないけれど、モントレーの1週間が天国であることだけは理解いただけると思う。

ホテルにチェックインすると、ハイパーカーやスーパーカーがずらりと並ぶ、バレーサービスがすでにモーターショー状態だった。

圧倒的な集客能力を誇るモータースポーツ・ギャザリング

クエイルロッジで行われる「モータースポーツ・ギャザリング」。

金曜日。朝からクエイルロッジへと向かう。高額チケットが瞬く間に売り切れることで有名な「モータースポーツ・ギャザリング」を観覧するためだ。元はと言えばクラシックレーシングカーやスポーツカーのギャザリングで、昼間にはラグナセカからその年のテーマレーシングカーが自走でやってくるなど、モータースポーツ色の強いイベントだった。

近年、その圧倒的な集客能力と金曜日というベストタイミングに目をつけた世界のラグジュアリーブランドがこの場所でプレミアすることが増えている。ランボルギーニもそのひとつで、既報の通りフェノメノを披露した。

他にもブガッティやケーニッヒグセグ、パガーニ、RUF、ヘネシー、ジンガー、レクサスなど錚々たるブランドが会場を取り囲み、シンガーやエッセンツァスーパーレッジェーラ、ギュンターワークスなど流行りの高級レストモッドも注目を集める。

変化に柔軟なイベントで進む世代交代

メイン展示で面白かったのはF50の30周年で、総勢17台が集まった。かつて日本にあった個体も散見される。しかもベストオブショーはF50 GTというのも驚いた。世代交代が進んでおり、このイベントは変化に柔軟である。

もうひとつ、クリスチャン・フォン・ケーニグセグにも久しぶりに会えたが、最初のプロトタイプをドライブしてご満悦だった。この場所でもJDMがじわじわと人気を得ている。

高まるJDM人気。「日産GT-R 400R」も注目の的。
高まるJDM人気。「日産GT-R 400R」も注目の的。

期間中はイベント専用の駐車場にも変わったクルマがたくさんやってくる。昔は駐車場巡りなども積極的に楽しんだけれど、もうそんな元気はない。

市内に戻ってRMオークションに顔をだす。友人たちと待ち合わせたり、懐かしい顔を探したいと思ったりしたら、有名オークション会場に出向くことが手っ取り早い。ただし、友人知人を見つけて話し込むことの方が忙しくてクルマをじっくり見ることができないのは玉にキズ。

夕方にはマクラーレンハウスへ。週末の夜、各ブランドは顧客を招いてのパーティを開く。数件掛け持ちなんてVIPもざら。招待状の数も限られて、入ることが年々難しくなっている。夜遅く、へとへとになってホテルに戻れば、面白いクルマも帰ってきた。ポルシェ911のハイライダー、いろんなタイプを見かけるようになった。

世界最古にして最大のランボクラブ

土曜日は朝からラグナセカへ。コークスクリューで有名なサーキットで行われるクラシックなレースイベントで、戦前のレースカーからグループ5やグループCあたりまでのレースが行われる。昨年、ちょっとエントラントが少ないように見えて心配したけれど、今年は盛り返していた。F1グランプリの75周年という企画も当たったのだろう。

午後からはランボルギーニが貸し出してくれたレヴエルトを駆ってビッグサー(Big Sur)までランチドライブを洒落込む。レストランについて見ればそこもまたちょっとしたイベント級のモデルが集まっていた。赤いLFA、かっこいいなぁ。

レヴエルトに乗って、そのまま今度はランボルギーニクラブアメリカのパーティへ。世界最古にして最大のランボクラブというだけあってメーカー主催のパーティに負けず劣らず盛況で、ランボ首脳陣も登壇、食事もまた素晴らしかった。

これがあるからこそのモントレー・カーウィーク

そして最後の日曜日。昔から変わらないイベント、「ペブルビーチコンクール・デレガンス」である。入場料だけは(為替もあって)5倍くらいになった気もするけれど、それ以外は相変わらずの格式で、このイベントがあるからこそモントレー・カーウィークなのだと改めて実感した。もちろん、ここでも世代交代は起きていて、スーパーカーの展示も増えているし、今年はおそらく初めて日本製エンジン(ホンダF1)がランウェイを走った。

来年、皆さんもいかがですか? ちなみに来年もペブルビーチコンクールは第3日曜日に予定されており、その前の1週間がイベントウィークになる。2027年からは1週間繰り上がる予定らしい。

PHOTO/西川淳(Jun NISHIKAWA)、Automobili Lamborghini

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