路面グリップのいいミサノで経験を重ねる

ミサノ・サーキットは小椋藍(アプリリア)が好むサーキットである。そして、前戦カタルーニャGP決勝レースでは、6位フィニッシュという好結果で終えている。こうした状況から期待したくなるサンマリノGPだったが、MotoGPはそう簡単ではない。

カタルーニャGPの6位には、理由があった。小椋は、タイヤをいたわって走ることに優れている。レース序盤から終盤にかけて、大きくタイムを落とさずにペースを刻むことができるのは、小椋のMoto2クラス以前からの強みだ。

だからこそ、カタルーニャのように路面グリップが低いサーキットでは、周りのライダーがタイムを落とすところ、小椋はその落ち幅を抑えて戦うことができる。

一方、サンマリノGPが開催されるミサノ・サーキットは、路面グリップがいい。こうしたサーキットでは、他のライダーのタイムが上がる。「バイクの上での頑張り方をわかっている」からだ。頑張った分だけ、バイクが応えてくれる。そして、タイムが上がる。小椋は、その「上がり幅」が小さいのである。路面グリップのよさを、他のライダーほどタイムにつなげられていない。もちろん、「今の小椋は」ということだが。

木曜日、囲み取材で小椋は「ここはすごく路面グリップがいいみたい。だから、どうでしょうね。難しいかな、とは思っていますけど」と語っていた。

金曜日、小椋はプラクティスを21番手で終え、予選2(Q2)ダイレクト進出を逃した。プラクティスでトップ10に入ればQ2にダイレクトで進むことができる。Q2に進めば、その時点で12番手以上の予選順位が確定するため、プラクティスでトップ10に入ることはとても重要だ。

翌土曜日、予選1(Q1)から挑んだ予選で、小椋は5番手。予選順位としては15番手となった。スプリントレースは前のライダーが走らなかったため、14番手からスタートし、12位でゴールした。

とはいえ、MotoGPクラスのルーキーである小椋は、ここまでにしっかりと経験を積んでいた。確かに、順位だけ見ればカタルーニャGPほど好調ではない。ただ、ほとんどすべてのサーキットがMotoGPマシンでの初走行となるルーキーの小椋にとって、今、最も重要なことは、今後に向けたあらゆる経験値を得ることだ。小椋自身、今季はそこにフォーカスしている。

「金曜日から土曜日にかけての上がり幅は、ほかのサーキットとあまり変わらないと思います。土曜日よりもずっと上手に乗れているとは思いますし、いつもと同じような上がり方をしていると思いますけどね」と、小椋は言う。

もちろん、ライダーなのだから満足はしていない。小椋の表情は、そう語っている。当然のことである。だが、週末のなかで前進はしている。

小椋は、日曜日の決勝レースに向けて「土曜日から日曜日にかけて『成長できたな』と思える走りができたらいいんじゃないかなと思います」と語っていた。

しかし、決勝レースの3周目、12コーナーで小椋は転倒を喫した。この転倒は中継に映っておらず、この日の囲み取材も行われなかったので詳細な状況は不明だ。また、小椋は翌日の公式テストにも参加しなかった。

9月15日時点でのチームからの情報によると、月曜日の朝に検査を行ったところ、右手の人差し指、中指、薬指の中手骨基部(中手骨の下の部分)に骨挫傷が確認されたという、また、小指を含むすべての指に炎症が見られ、手首、左足のかかとにも腫れがあるということだ。

次戦日本GP(9月26日~28日、モビリティリゾートもてぎ)は小椋の母国グランプリとなる。早期回復を願いたいところだ。

小椋が転倒したのは高速の右コーナー。大きな怪我ではなかったことは幸いだった©Trackhouse Racing