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今日は何の日?■ボクサーエンジンが第3世代へと移行
2010(平成22)年9月23日、スバルは看板技術であるボクサーエンジンの第3世代となるFB型エンジンを発表。1966年に「スバル1000」にボクサーエンジンを初めて搭載以来、1989年の「レガシィ」で第2世代エンジンに切り替え、そして今回ロングストローク化した第3世代エンジンを開発、フォレスターから展開することも公表した。

第1世代(1966年~)ボクサーエンジンを搭載したスバル1000
1966年5月、スバルは「スバル360」に続いてスバル初となる小型乗用車「スバル1000」を発売した。元航空機技術者が中心となって開発されたスバル1000は、先進技術が満載だった。

スタイリングは、オーソドックスなファストバック風の4ドアセダンだったが、最大の特徴はスバルのコア技術である水平対向エンジンを初めて採用したこと。さらに駆動方式は、当時としては画期的なFFレイアウトだった。

最高出力55psを発揮する1.0L 直4水平対向OHV(EA52型)エンジンは、4速MTと組み合わせて最高速度150km/hを記録。その他にも、軽量なモノコックボディや4輪独立サスペンション、ブレーキをドライブシャフトのデフ側に置くインポート・ブレーキ、冷却性能を向上したデュアルラジエターなど、小型車として贅沢かつ斬新な機構が採用された。


技術的に優れていたスバル1000だったが、販売面では苦戦を強いられた。苦戦の理由は、ひとつは価格が高かったこと、もうひとつは同時期に発売されたトヨタ「カローラ」と日産「サニー」と較べて、スバルの販売力が大きく劣っていたことが要因だった。
第2世代(1989年~)ボクサーエンジンを搭載したレガシィ


その後、1971年10月に登場した「レオーネ」で、1.4Lや1.8Lボクサーエンジンと4WD技術を組み合わせたシンメトリカル4WDの原型が出来上がった。

1989年2月には、「レオーネ」の後継として「レガシィ」がデビュー。4ドアツーリングセダンと5ドアツーリングワゴンの2タイプがラインアップされ、注目の水平対向エンジンは1.8L SOHC(EJ18型)と2.0L DOHC(EJ20型)、最高出力220psを誇る最強グレードRS用ターボエンジンの3機種を搭載。トランスミッションは専用ギヤ比の5速MT、駆動方式はビスカスLSD付センターデフ式4WDが採用され、シンメトリカルAWDが完成形を迎えた。

レガシィは市場で高い評価を受け、特にツーリングワゴンはクルマ好きの心を掴んで爆発的な人気を獲得。“ツーリング(ステーション)ワゴン”という新しいジャンルを開拓し、スバルブランドを築き上げる立役者となった。一方のセダンはWRCで活躍し、世界中にその名を広めた。

第2世代となるEJ型ボクサーエンジンは、EA型エンジンでできなかったDOHC化やターボ化によって高性能化を極めた。シンメトリカルAWDを搭載したレガシィ、続いたインプレッサは、WRCの舞台で大活躍してスバルブランドを世界に轟かせた。
すべてを刷新した第3世代(2010年~)ボクサーエンジン誕生
そして、2010年9月のこの日に、初代レガシィに搭載した第2世代ボクサーエンジン以来、21年ぶりとなる第3世代ボクサーエンジンの開発が発表された。

次世代エンジンは、構造を基本骨格から全面的に刷新し、軽量・コンパクト、低重心、低振動など水平対向エンジンの本来の強みはそのままに、燃費向上などの環境性能と走行性能を高次元で両立させることを目指して開発された。

具体的な構造変更に関しては、現行エンジンに対してロングストローク化。ロングストロークにすることで燃焼効率を改善し、高速性能は低下するが実用域の低中速トルクを向上させることができる。その他にも、燃焼室のコンパクト化やTGV(タンブル・ジェネレーターバブル)、AVCS(可変動弁機構)、EGRクーラーの採用など、さらに主運動系の軽量化や小型オイルポンプなどの採用でフリクションを約30%低減して、燃費とレスポンスが高められた。

新世代エンジンと旧世代エンジンのスペックを2.0L DOHCエンジンで比較してみる。
・ボア・ストローク:84mm・90mm(新)/92mm・75mm(旧)
・圧縮比:10.5/10.2
・最高出力・最大トルク:148ps・20.0kgm/148ps・19.5kgm
新世代エンジンは、2010年10月にマイナーチェンジされた3代目フォレスターから搭載され、約10%の燃費向上が達成された。


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ボクサーエンジンは、その特異な機構や形状からDOHC化やターボ化、電動化でやや遅れをとった。今後、ボクサーエンジンの電動化、EV化は必須だが、今後もボクサーエンジンの魅力やスバルらしさでスバリストや多くのファンを魅了して欲しい。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。