リヤ駆動を基本とするBセグメントEVが全5グレードになった

BセグメントSUV唯一の後輪駆動というチャームポイントを持つボルボEX30のモデルレンジが大幅に拡大された。

従来から設定される「EX30 Ultra Single Motor Extended Range」は、69kWhの三元系リチウムイオンバッテリーを積み、最高出力272ps(200kW)のモーターでリヤタイヤを駆動する2WD仕様で、一充電走行距離は560km。

VOLVO EX30 Ultra Twin Motot Performance(ヴェイバーグレーメタリック)

同等の性能で装備を簡略した「EX30 Plus Single Motor Extended Range」を追加設定したほか、LFPリチウムイオンバッテリー(51kWh)を積んだエントリーグレードとして「EX30 Plus Single Motor」も新設定している。

フロントにも駆動モーターを積み、システム最高出力428psを誇るのが「EX30 Ultra Twin Motor Performance」だ。バッテリー総電力量は61kWh、パワフルに進化しながら一充電走行距離は535kmを確保している。

リヤのツインモーター搭載を表すエンブレム。

ツインモーターのパワートレインは共通としながら最低地上高をアップするなどクロカン寄りに仕上げたのが「EX30 Cross Country Ultra Twin Motor Performance」で、こちらの一充電走行距離は500kmとなっている。

BセグメントのプレミアムEVとして人気を博しているEX30の選択肢が増えたのである。しかも、エントリー系からハイパフォーマンス系まで守備範囲を広げたのだから、売れ行きが伸びているというのも納得だ。

●EX30(2026年モデル)価格一覧
EX30 Plus Single Motor:479万円
EX30 Plus Single Motor Extended Range:539万円
EX30 Ultra Single Motor Extended Range:579万円
EX30 Ultra Twin Motor Performance:629万円
EX30 Cross Country Ultra Twin Motor Performance:649万円

VOLVO EX30 Ultra Twin Motot Performance

ツインモーターの0-100km/h加速は3.6秒とボルボ史上最速

新しくなったボルボEX30のラインナップから、初試乗のパートナーに選んだのは新設定されたハイパフォーマンスグレード「EX30 Ultra Twin Motor Performance」とした。

リヤ駆動を基本としながら、フロントに最高出力156psのモーターを追加した四輪駆動モデルで、前述の通りシステム最高出力428ps、0-100km/h加速性能はボルボ史上最速の3.6秒を実現しているという。

全長4.2m少々、全高1550mmと日本で使いやすいサイズの小さなボディに、これだけの出力を与えられるのはEVならではといえるだろう。仮にエンジン車で同等の出力を得ようと思えば、巨大なエンジンを載せるか、もしくは高ブーストのターボエンジンを積むしかなく、前者はスペース的に非現実的であり、後者は荒々しく騒々しい乗り味になることが予想されるからだ。

そして予想通り、EX30 Ultra Twin Motor Performanceの走りは、驚くほどジェントルだった。

スタンダードのドライブモードを選んでいるときは、基本的には後輪駆動となるためパフォーマンスはおとなしめ。それでもアクセルペダルをグッと踏み込めばEVらしいスムースで、鋭い加速を見せてくれる。

VOLVO EX30 Ultra Twin Motot Performance

400馬力オーバーのコンパクトカーと聞けば、ハードに締め上げたシャシーを想像するかもしれないが、まったくそんなことはない。どちらかといえば、フワッとした部分もある”ボルボらしい”乗り心地を実現している。

特筆すべきは、このサイズながら後席に座っても突き上げ感が抑えられており、前席同様の乗り心地となっていること。これには、前後重量配分が50.5:49.5というバランスの良さ、390㎏のバッテリーを床下に積んだ低重心パッケージが効いているのだろう。

そうしたパッケージングにおけるアドバンテージは、ワインディングで本領を発揮する。

このステージでは、常時四輪駆動となるパフォーマンス・モードを選んだ。アクセル・オンで即座にフロントが駆動することで異次元の加速感を味わうことができるが、アクティブ・ヨーコントロールといった電子制御が適切に機能しているおかげもあって、四輪スタビリティに不安を覚えることはない。

ただし、後輪駆動メインで走っているときに比べると、フロントに駆動力が加わる分だけステアリングフィールに雑味を感じる瞬間もあった。その感覚はインプレッサWRX STIやランサーエボリューションといった電制4WDマシンにも通じる部分がある。日本の伝統的ハイパー4WDに乗ってきたオーナーの、次期愛車候補としてもEX30 Ultra Twin Motor Performanceはオススメできそうだ。

また、EX30はハイ/ロー2タイプのワンペダルドライブモードを持つ。ハイモードではアクセルオフによる回生ブレーキで最大0.3Gの減速が可能となっている。ワインディングであってもブレーキペダルへ踏み替えることなく、運転できることが確認できた。

アクセルペダルを踏んだり、戻したりするだけでリズミカルに走るのも、EVらしいスポーツドライビングの楽しみ方であり、そうして走っている限りシャシー性能とのバランスも高いレベルに仕上がっている。

ただし、絶対的な車重は1880kgとコンパクトなボディにしては重量級。ハードに振り回すようなステアリング操作をするにはサスペンションの引き締めが足りないと感じる部分もあり、メカブレーキ自体もスポーツカーのようなシステムではない。むしろ、ワンペダルで滑らかに運転することが、EX30にマッチした走らせ方といえるかもしれない。

479万円のエントリーグレードも不満なし

VOLVO EX30 Ultra Twin Motot Performance

EX30のラインナップ拡大における、もうひとつのトピックスが、エントリーグレードとして新設定された「EX30 Plus Single Motor」だ。こちらは479万円という手の届きやすい価格が魅力であり、LFPリチウムイオンバッテリーを積んでいるのが特徴となる。

日本語ではリン酸鉄と表記されることもあるLFPリチウムイオンバッテリーの特徴は、充電を繰り返した際の劣化が、三元系リチウムイオンバッテリーに対して少ないこと。ただし容積あたりのエネルギー密度の点では劣る傾向にある。そのため、EX30 Plus Single Motorの一充電走行距離は390kmと、三元系リチウムイオンバッテリーを積むグレードより短く、バッテリーパックの重量は重くなっている。

しかし、後輪を駆動するモーターの最高出力は272psと三元系リチウムイオンバッテリーを積むグレードと同様で、街乗りでの加速性能は十分すぎるレベル。18インチタイヤを履いていることで、むしろ軽やかな走り味となっていることも好印象だった。

インテリアにはリサイクル素材を活用している。

この他にも、リサイクル素材を活用したサステナブルなインテリア、ボルボ・ブランドに期待するであろう先進運転支援システムなどEX30のトピックスは多くあるが、グリルレスのスカンジナビアンデザインを引き立てるEVらしいスムースな走り味こそ、このクルマの魅力だと思うし、そうした魅力を実感できる走り味に仕上がっていた。

今回のラインナップ拡充により、四輪駆動グレードも登場したことで、降雪地域のボルボファンだけでなく、4WDのEVを探しているユーザー層からも支持を集めるだろう。実際、販売の初動において、最低地上高を195mmとしたEX30 Cross Country Ultra Twin Motor Performanceが4割近い比率を占めているという。EX30の進化が、市場の期待に応えていることを証明するエピソードといえそうだ。

EX30ウルトラツインモーターパフォーマンス主要スペック

VOLVO EX30 Ultra Twin Motot Performance(ヴェイバーグレーメタリック)
全長×全幅×全高:4235mm×1835mm×1550mm
ホイールベース:2650mm
車重:1880kg
サスペンション:Fストラット式 R マルチリンク式
駆動方式:4WD
電動機
種類:交流同期電動機
フロント定格出力:41kW
フロント最高出力:156ps(115kW)/6000-6500rpm
フロント最大トルク:200Nm/5000rpm
リヤ定格出力:75kW
リヤ最高出力:272ps(200kW)/6500-8000rpm
リヤ最大トルク:343Nm/5345rpm
駆動用バッテリー
種類:三元系リチウムイオン電池
総電力量:69kWh
総電圧:392V
一充電走行距離(WLTCモード):535km
交流電力量消費率(WLTCモード):145Wh/km
タイヤサイズ:245/40R20
車両本体価格:629万円
左リヤフェンダーに充電ポートを集約。三元系リチウムイオンバッテリー搭載グレードの受電性能は、普通充電9kW、急速充電(CHAdeMO)が150kWとなる