「W1」=「650-W1」(1966年)
1966年に発売された「650-W1」は、当時のカワサキ北米市場向け戦略機種で、今でも型式名の「W1(ダブワン)」の呼び名で愛されている名車だ。

このモデルは、当時の最大排気量である624ccの空冷並列2気筒エンジン、通称バーチカルツインを搭載。その高性能な走りが話題となり、日本や北米などを中心に、世界的に大ヒットを記録した。
そのスタイルはもちろん、伝統のバーチカルツインなどは、現在も773ccエンジン搭載のネオレトロモデル「W800」が継承。兄弟車「メグロK3」と共に、多くのファンに支持されている。
また、2024年には、Wブランドの新型として、232cc・空冷単気筒を搭載する「W230」も登場。同じく兄弟車の「メグロS1」と共に、カワサキ往年の名車をオマージュしたモデル群を形成しており、幅広いユーザーから人気を得ている。




「Z1」=「900スーパー4」(1972年)
1972年に登場した「900スーパー4」は、型式名の「Z1(ゼットワン)」を愛称に持つ名車。2017年の登場以来、大型バイクとしては異例の大ヒットを続けている人気モデル「Z900RS」の元祖となっていることもあり、いまだに多くのファンから支持されているモデルだ。

登場した当時は、世界的に大排気量&ハイパワーなモデルが人気だった時代。とくに1969年にホンダが発売した「ドリームCB750フォア」は、市販車初の空冷並列4気筒エンジンを搭載し、かなりの高性能ぶりを発揮したことで大ヒットした。

そして、そんな時代にカワサキが投入した世界戦略車がZ1だった。搭載するエンジンは、900cc・空冷並列4気筒で、最高出力82PSという当時としてはかなりのハイパワーを発揮。また、ティアドロップ型の燃料タンクなどによる流麗なフォルムも人気で、現行モデルの「Z900RS/SE」にもそのテイストが受け継がれている。

登場から50年以上が経った今でも、そのスタイルやイメージがZ900RSに継承され、色あせることなく輝き続けている。そういった意味で、Z1はまさに「カワサキ伝説の1台」と呼ぶに相応しいモデルといえるだろう。
「H1」=「500SSマッハⅢ」(1969年)
型式名の「H1(エッチワン)」を通称に持つのが、1969年に発売された「500SSマッハⅢ」だ。

このモデルは、500ccの空冷2ストローク3気筒エンジンを搭載したスポーツモデルで、その猛烈な加速力から「じゃじゃ馬」という愛称でも親しまれた。
カワサキでは、このモデルの成功により、その後、250cc版や350cc版、750cc版など、さまざまな排気量のモデルをリリースしシリーズ化。いずれも、数多くの伝説を生み出し、世界中のライダーを虜にした。
とくに、1971年に登場した750cc版「750SSマッハⅣ」は、当時「H2(エッチツー)」の愛称で人気があったモデル。その名称は、現在も998cc・4気筒のスーパーチャージドエンジンを搭載する「H2」シリーズに継承。高級ツアラーの「ニンジャH2 SX SE」やストリートファイターの「Z H2/SE」など、カワサキ製スポーツモデルの頂点として現在も君臨し続けている。


「J1」=「85J1」(1964年)
1964年に登場した「85J1」は、「J1(ジェイワン)」の名称で知られる85ccの2ストロークエンジンを搭載した小型モデルだ。

販売は、川崎重工業(現在のカワサキモータース親会社)と合併する前の川崎航空機(現在の川崎重工業航空宇宙システムカンパニー)が担当。この会社は、戦前に戦闘機なども手掛けていたそうだから、J1にも航空機で培った技術が投入されたこともうかがえる。
主な特徴は、当時の最新技術だったロータリーディスクバルブ吸入方式を採用したこと。軽くてハイパワーな2ストロークエンジンのなかでも、特に優れた出力を生み出すことで知られていた方式だ。
当時、カワサキには「高性能マシン」と呼べる機種がなかったのだが、この技術の投入や性能が大きな話題に。また、その後、多くのカワサキ製2ストロークマシンに採用されることになった。
残念ながら、2ストロークモデルは、排気ガス規制などの影響で絶滅の一途をたどっているため、J1の後継といえるモデルは現在存在しない。だが、先に紹介したH1やH2など、その後のカワサキ製2ストロークバイクの礎を築いたという点では、やはり名車の1台に挙げるべき1台だといえるだろう。