点火時期のコントロールでレスポンス良くパワーを制御!
豊富なノウハウを軸にGR86&BRZのトラコンシステムを最適化
6&BRZのチューニングに積極的にアプローチしてきたオートクラフトが、数年前から力を注いできたのがトラクションコントロールシステム(以下、トラコン)の開発だ。
ご存知の通り86/GR86/BRZには純正でトラコンやVSCが備わっているが、これらは基本的に「FR車を安全にドライブするための装備」であり、スポーツ走行時にはオフにするのが常識だった。
しかし、オートクラフトが生み出した新システムは一味違う。安全性の向上はもちろん、サーキットでのタイム短縮にも直結する“攻めのトラコン”なのだ。

「自分も以前は“走りを楽しむならトラコンは不要”と考えていました。でも、ある欧州スーパースポーツの制御を体験したとき、考えが180度変わったんです。滑りやすい路面やグリップの落ちた状況でも、決して邪魔せず、むしろ絶妙にアシストしてくれる。その驚きを86&BRZでも再現したいと思ったのが開発のきっかけです」。そう語るのは、オートクラフト代表・白髭さん。
システムの心臓部はECU-TEKのレースロムだ。ノーマルECUの未使用領域に独自プログラムを組み込み、各輪に備わる回転センサーの信号からスリップ率を算出。その値が一定以上になると、点火時期を遅角させてパワーを制御する仕組みを採用している。
当初はスロットル制御も試みたが、レスポンスや精密さに欠けるうえ、GR86(C型以降)では不具合が発生することが判明。結果、現行仕様では点火時期制御のみで最適化されている。

最大のポイントは「違和感なくドライバーをアシストする」こと。介入のタイミングや度合い、解除時の自然なフィーリングまで徹底して作り込まれた。設定の自由度も高く、介入強度を複数用意したり、車速やスロットル開度に応じた条件設定も可能だ。
「GT3やGT4の最新レーシングマシンに近い感覚です。制御はスムーズで応答性も高い。完全にスライドを止めるのではなく、ドライバーの操作領域を残してくれるのが素晴らしい。初心者には安心を、上級者には武器を与えてくれる、そんな制御です」とインプレッションを語るのは、テストドライバーを務めた佐々木雅弘選手だ。


切り替えはクルーズコントロール用レバーで操作可能。4つのマップや設定を選び、タコメーターの針の動きで確認できる仕組みだ。操作中はエンジン回転数とは無関係に、1000rpm刻みでモードを表示する。

白髭さんはこう締めくくる。「初心者には安心感を、上級者には限界域でのトラクションを。過給機で大幅にパワーアップした車両や、アクセルコントロールがシビアな仕様にも最適ですよ」。
気になる価格は、まずECU-TEKによるECUチューニング(22万円)が前提。すでに導入済みであれば、追加費用4万円でトラコン機能を組み込める。対応はZ#8系だけでなく、Z#6系にも及ぶ。
もはや「ただのトラコン」ではない。GTマシン直系のドライバーアシストとして、86/BRZチューニングの新たな必須メニューとなるだろう。
●取材協力:オートクラフト京都 京都府京田辺市大住大峯1-7 TEL:0774-64-6466
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