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今日は何の日?■若年層もターゲットにした「アスリート」を復活させた11代目
1999(平成11)年9月24日、日本を代表する高級セダン、トヨタ「クラウン」の11代目がデビューした。ハードトップを廃止し、一般的な高級セダン「ロイヤル」と若年層をターゲットに走りを強調したスポーティな「アスリート」の2シリーズで構成された。

クラウン誕生から10代目までの軌跡

初代クラウン「トヨペットクラウン」は、1955年に完全オリジナルの純国産車として誕生した。当時は国産車と言っても名ばかりで、ほとんどは外国製部品と技術を使って組み立てるだけのクルマ。クラウンは世界に通用する上質感と信頼性にこだわった日本自動車史に大きな役割を果たした。

・2代目(1962年~):ヨーロピアンスタイルに変わり、国産乗用車初のV型8気筒エンジンを搭載した「クラウンエイト」がデビュー。
・3代目(1967年~):静粛性や乗り心地を改良し、公用車だけでなく高級自家用車を意識したクルマに変貌。
・4代目(1971年~):“クジラ”と呼ばれた個性的すぎるスタイルが不評で、3年の短命で終了。
・5代目(1974年~):重厚さと安定感を強調したスタイルに回帰。
・6代目(1979年~):厳しい排出ガス規制をクリアしながら、クラウン初の直列6気筒ターボエンジンを搭載。
・7代目(1983年~):機能を充実させて“いつかは、クラウン”という名キャッチコピーとともに衝撃のデビュー。
・8代目(1987年~):バブル絶頂期に登場し贅沢装備と最新技術を採用し、歴代で最も販売台数を記録。
・9代目(1991年~):バブル崩壊とともにデビューし、上級グレード「マジェスタ」が登場して話題に。
・10代目(1995年~):ボディサイズは大きくなったものの、4ドアハードトップはモノコックボディ構造となり、100kgを超える軽量化に成功。


若年層向けにスポーティさをアピールしたアスリート
そして11代目クラウンは、21世紀へ時代が変わろうとしていた1999年9月のこの日にデビューした。

11代目からは、その前6代にわたって採用されてきた4ドア(ピラード)ハードトップのボディスタイルを廃止し、ガラスサッシ付ドアを持つ一般的セダンのスタイルに変わった。ただし、センターピラーをブラックアウト処理してハードトップ風のスタイリッシュさは維持された。

また、若年層向けとして11代目はスポーティモデルの「アスリート」を8年ぶりに復活させ、ラインナップはロイヤル(含、マジェスタ)とアスリートの2シリーズに整理された。アスリートはクラウンの高級感をそのままに、専用のエアロパーツとサスペンションを装備して、スポーティな走りが楽しめる高級車に仕上げられた。


パワートレインは、アスリートの最強モデルには最高出力280ps/最大トルク38.5kgmを発揮する2.5L 直6 DOHCターボ、200ps/26.0kgmのNA(自然吸気)仕様、220ps/30.0kgmの3.0L 直6 DOHCの3種エンジンと、4速/5速ATの組み合わせ。駆動方式はFRとフルタイム4WDが用意された。

車両価格は、2WDの3.0L搭載仕様が425.0万円(ロイヤルサルーンG)/378.0万円(アスリートG)、高性能グレードの2.5Lターボ搭載仕様が375万円(アスリートV)に設定。また、ロイヤルの最上位マジェスタの3.0L搭載車は463.0万円だった。
ロイヤルにマイルドハイブリッド登場

2年後の2001年8月のマイナーチェンジでは、ロイヤルシリーズの一部にマイルドハイブリッドが設定された。
マイルドハイブリッドは、3.0L 直6エンジンに36Vモーター/ジェネレーターを組み合わせたTHS-Mと呼ばれるシステムで、高価なニッケル水素電池ではなく、36Vの鉛蓄電池を使った低コストで簡易的なマイルドハイブリッドである。
減速回生を積極的に行ないバッテリーに充電し、その電力でエンジン効率が悪い発進時には、まずモーター駆動させ、次にエンジンを始動させる。またアイドルストップを採用し、室内の快適性を維持するためアイドルストップ時にもモーターを駆動させ、エアコンを作動させることができる。
マイルドハイブリッド化によって、燃費はベース車よりも1.6km/Lほど優れた13.0km/L(10・15モード)を達成、価格は約15万円高く設定された。
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バブルが崩壊した1990年代からセダン人気は低迷し、クラウンの販売も伸び悩んだ。セダンは、中高年の言わばおっさんのクルマというイメージが定着していたので、多くのセダンが目指したようにクラウンもユーザー層の若返りが主要テーマとなった。その結果、セダンだけでなく、クロスオーバー、スポーツ、エステートとユーザー層の拡大を狙った現行クラウンの誕生に繋がったのだ。
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