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今日は何の日?

■超小型EVハイパーミニが共同実証試験プロジェクトに参加

1999(平成11)年9月27日、日産自動車は都市コミューターとして開発した超小型EV「ハイパーミニ」で、翌2000年2月の販売開始に先立ち、横浜みなとみらい地区と神奈川県海老名市で行なわれる2つの共同実証実験プロジェクトに参加することを表明した。ハイパーミニは、最高出力24kW(33ps)/最大トルク130Nm(13.3kgm)を発揮し、満充電走行距離115km(10・15モード)、最高速度100km/hを発揮する。

日産「ハイパーミニ」
1999年に共同実証プログラムに参加した超小型EV「ハイパーミニ」

たま電気自動車からハイパーミニまでの日産EVの歴史

日産自動車のEVの歴史は、1947年に東京電気自動車から発売された「たま電気自動車」まで遡り、これは同時に、日本の電気自動車の始まりでもあった。東京電気自動車は後にプリンス自動車となり、1966年に日産と合併したので、東京電気自動車は日産の源流のひとつである。

たま自動車
1947年に東京電気自動車で生産された「たま自動車」

たま電気自動車は、ミッドシップされたモーターとカートリッジごと交換できる鉛蓄電池を搭載。最高出力は4.5psを発揮し、最高速度35km/hで満充電時の航続距離は65kmだった。ガソリンが入手しづらい戦後に主にタクシーとして活用されたが、3年余り1099台を販売して1951年に生産を終了した。

プレジデントEV
プレジデントEV/1990年発売の3代目プレジデント(JHG50型)をベースに、オープンボディ化と電動化の大幅な改造を施した特殊車両。市販化はされなかったが、主にパレード用として使用され、大型なプレジデントのボディサイズをいかして、大相撲の力士を後席に乗せての祝勝パレードのような場面に多く登場し、お茶の間にも親しまれた。当時の日産では、日産が世界で初めて実用化に成功し、現代の電気自動車の技術標準にまでなった「自動車用リチウムイオンバッテリー」の開発を積極的に進めていたが、このクルマに関しては用途が限定的なためにそのような最新技術の採用はなく、コンベンショナルな鉛バッテリーが採用された。最高時速は40km/h

その後、なかなか日の目を見ることができなかったEVだが、1970年代のオイルショックを機に、また1980年代の米国カリフォルニア州が提唱した“ゼロエミッション規制”の影響でEV待望論が浮上。この間も日産は、さまざまなEVのコンセプトモデルを開発し、1991年には「プレジデントEV」をマラソンの先導車として貸し出し、1993年には「セドリックEV」を環境庁に約1年の期間限定で貸与するなど、まだ鉛電池だったが開発は継続した。

プレーリージョイEV
世界で初めてリチウムイオン電池を採用し、1997年にリース販売した「プレーリージョイEV」

1990年代に入ると、リチウムイオン電池が発明され、携帯電話やPCに使われ始めて普及が始まった。そのような中、日産は1997年2月リチウムイオン電池を世界で初めて搭載した「プレーリージョイEV」を、主に関連企業・団体などの法人向けにリース販売を始めた。

プレーリージョイEV 国立極地研究所 北極観測センター車
プレーリージョイEV 国立極地研究所 北極観測センター車/この車両は2000年から国立極地研究所北極観測センターの支援車として使用された個体で、極寒の気象条件でも6年間無故障で稼働し、高い信頼性で関係者を驚かせた

リチウムイオン電池を使った超小型EVのハイパーミニ

プレーリージョイEVに続いて、1997年の東京モーターショーでハイパーミニのプロトタイプが公開された。

超小型EV「ハイパーミニ」
1999年に共同実証プログラムに参加した超小型EV「ハイパーミニ」

ハイパーミニのサイズは、全長2665mm/全幅1475mm(軽自動車は3395mm/1475mm)と、現在の「超小型モビリティ(型式指定車)」規格に近いサイズである。

日産「ハイパーミニ」
「ハイパーミニ」のリアビュー
超小型EV「ハイパーミニ」
超小型EV「ハイパーミニ」のボディサイズ

最高出力24kw(33ps)/最大トルク130Nm(13.3kgm)のネオジム磁石同期モーターをリアミッドシップし、駆動方式はRRが採用された。駆動バッテリーは、容量90Ahのリチウムイオン電池を床下に4つ搭載して総電力量8.1kWhで、満充電航続距離は115km(10・15モード)が達成された。また、充電システムは、非接触電磁誘導方式のインダクティブ充電が採用され、フル充電は200Vで約4時間を要した。

「ハイパーミニ」のコクピット
「ハイパーミニ」のコクピット

アルミの軽量フレームに、サスペンションは4輪独立ストラットの独立懸架、車速感応型電動パワステ、ブレーキはベンチレーテッドディスク、リアがディスク、さらにタイヤはスペアタイヤ搭載を省くためランフラットタイヤを装着。車重が840kgと軽量だったので、十分なモーター走行が楽しめた。

EVとして初めて型式指定を取得して市販化を果たしたハイパーミニ

1997年の東京モーターショーで公開した後、ハイパーミニは完成度を高めて、1999年には生産モデルが出来上がり、1999年9月のこの日に発売に先立ち、ハイパーミニを使った実証試験の開始が発表された。

都心レンタカーシステムは、横浜みなとみらい21地区に勤務される人を対象に業務用としてハイパーミニを使用してもらうシステム。車両ステーションでは無人で貸出/返却が行なわれ、管理センターでは予約受付の他、車両状態管理、利用者認証を行ない、車両には通信機能付カーナビゲーションシステムが搭載され、情報通信によって車両、管理センター、利用者の三者間で効率的で利便性の高い運用が行われる。

海老名プロジェクトは、海老名市で行なわれるパークアンドライド実験である。実験では市民モニターを募集し、ハイパーミニを朝夕の通勤に利用してもらうとともに、市役所の公用車両として利用することにより、共有化における効果や課題の整理が行なわれた。

そして、ハイパーミニは本格的な生産のために国が定める型式指定をEVとして初めて取得し、2000年2月から市販化を開始。2000年~2002年の間に主に官公庁や自治体、法人向けに約350台を販売した。車両価格は、400万~401.5万円だった。

初代「リーフ」
2010年にデビューした初代「リーフ」
初代「リーフ」
2010年にデビューした初代「リーフ」

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ハイパーミニは、特定ユーザーへの少量生産だったので、世界初のEVという称号を与えられなかったが、その開発や生産手法、市場からフィードバックされたノウハウは、後の本格量産車「リーフ」に繋がったことは確かである。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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