デュアルモーターの4MATIC全輪駆動システムは470PS/350kWに近い出力を発揮

メルセデス・ベンツ ヴィジョンV

メルセデス・ベンツは現在、老朽化し​​たMPVの「EQV」を、2台の新型電気自動車に置き換える準備を進めている。それが「VLE」と、さらに高級な「VLS」だ。どちらもメルセデス・ベンツの将来のミニバンラインナップ専用に設計された、クリーンシートEVプラットフォームを採用した、同ブランドのVAN.EA(バン・エレクトリック・アーキテクチャ)戦略の一環となる。

メルセデス・ベンツ ヴィジョンV

これまでスクープ班は、すでに軽いカモフラージュを施した状態でテスト走行を行うVLEのプロトタイプを北極圏で捉えている。そこで正式デビューを前に、これらのモデルがどのような特徴を備えているのか、詳しく見ていこう。

メルセデス・ベンツの「Vision V」コンセプトカーとして先行公開されたVLEだが、衝撃と畏怖の念を軽減しつつも、いくつかの重要なディテールは健在だ。フロントエンドは、3灯式DRLヘッドライトに囲まれたグリルパネルが特徴的で、低い位置にクロームアクセント、そして彫刻的なバンパーが配置されている。

サイドビューは、リアクォーターガラスが下に向かって流れ落ちるダイナミックなデザインを採用しており、これはほぼ忘れ去られたメルセデス・ベンツ「Rクラス」を彷彿とさせる。さらに下方では、フロントとリアのホイールエリアの上部に意図的に強調されたショルダーラインが、他のMPVに見られる平凡なサイドラインの印象を軽減している。

リアセクションでは、コンセプトカーに搭載されていたハロースタイルのLEDテールライトクラスターがほぼ完全に量産モデルに移行し、テールゲートのエッジは面取りが施され、より彫刻的で立体的な外観を実現している。

ハイライトと言えるインテリアでは、Vision Vコンセプトと量産モデルのEQSから多くのデザイン要素を継承している。メルセデス・ベンツ(MB.OS)の最新バージョンのオペレーティングシステムを搭載した、ピラー・トゥ・ピラーの直立型MBUXハイパースクリーンもそのひとつだ。

リサイクルレザーや天然木のベニヤなど、持続可能な高級素材の採用も予定されている。シートレイアウトは多様化が見込まれ、柔軟な3列シートレイアウトで大人数のグループにも対応する。一方、VLSは、個別のキャプテンシート、ラウンジスタイルのシート、一体型のワークトップを備え、運転手付きの顧客をターゲットにしているはずだ。

主な技術ハイライトとしては、レベル2+(レベル3は後日対応予定)の運転支援機能、拡張現実(AR)ナビゲーション、スマートアンビエントライティング、ストリーミング統合型4Kリアエンターテイメントスクリーンなどが挙げられる。ワイヤレス充電パッド、先進のBurmesterサウンドシステム、そして無線によるソフトウェアアップデートがパッケージを完成させる。

両ミニバンの基盤となるのは、新開発のモジュラー式VAN.EAだ。フロント、センター、リアの3つのコアセクションからなるプラットフォームを採用することで、基本コンポーネントを共有しながら、様々な車両サイズや仕様に対応している。バッテリーを優先したパッケージングを基本に設計されたこのアーキテクチャーは、フラットなフロア、広いキャビンスペース、そして低い重心を実現している。

リアアクスルステアリングは操縦性を向上させ、このサイズの車両にとって実用的な利点となる。一方、メルセデスのより実用的な商用バンは、引き続き独立したVAN.CA内燃機関プラットフォームを採用している。

最終的な仕様は未定だが、ラインナップにはシングルモーターとデュアルモーターの両方のセットアップが含まれる。エントリーモデルではリアに搭載されたモーターが約268PS/200kWを発揮し、デュアルモーターの4MATIC全輪駆動システムは470PS/350kWに近い出力を発揮すると予想されている。

バッテリー容量は90kWh程度から始まり、長距離仕様では116kWhを超え、WLTPモードで311マイル(500km)以上の航続距離を実現。800Vの電気システムにより、両モデルとも22kWのAC充電器に加え、最大350kWの超急速DC充電が可能だ。V2G(Vehicle to Grid)充電と双方向充電も搭載される予定となっている。

日本から始まった高級ミニバン市場の競争は世界で激化している。北米以外の市場では、VLEはハイブリッドのレクサスLM、EVのボルボEM90、そして中国で販売されている姉妹車Zeekr 009といったライバルと競合することになる。一方、より遊び心のあるモデルでは競合が少ない米国では、フォルクスワーゲンのID. Buzz LWBもVLEと競合する可能性がある。しかし、量産型ではこれらのライバルを圧倒し、地球上で最も豪華なミニバンになるとも噂されている。

VLEとVLSはどちらも今年後半に正式発表される予定で、北米、欧州、中国では2026年初頭の発売が計画されている。また、今後日本市場への導入も有力視されている。