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今日は何の日?■5ドアハッチバックのティーダ
2004(平成16)年9月30日、日産自動車は世界戦略車の5ドアハッチバック「ティーダ」を発売した。”コンパクトの質をシフトする”をコンセプトに、通常のコンパクトにはない、広く上質な室内空間が特徴で人気を獲得したが、コンパクトカーのノートに統合されるかたちで1代で国内販売を終えた。

日産再生の切り札となる世界戦略車のひとつ、ティーダ
1990年代初頭のバブル崩壊以降、経営悪化に苦しんでいた日産は、1999年にルノーと提携して傘下に収まることになった。最高経営責任者に、当時ルノーの副社長であったカルロス・ゴーン氏を迎え、大胆なリストラ策などの“日産リバイバルプラン”を敢行。V字回復によって2003年に負債を完済し、再生は成功した。
その勢いで、日産は世界戦略車の開発に注力し、2004年から以下の6台の新型車を次々と投入した。
・ムラーノ:ラージサイズのクロスオーバーSUV
・フーガ:セドリック/グロリアの後継となる高級セダン
・ティーダ:パルサーの後継となるハッチバック
・ラティオ:ティーの派生車の小型セダン
・ラフェスタ:リバティの後継となる7人乗りミニバン
・ノート:ファミリー向けのコンパクトカー
高級コンパクトカーをアピールして人気を得るも1世代で消えたティーダ

初代ティーダは2004年9月のこの日にデビューした。“コンパクトの質をシフトする”というキャッチコピーで生まれたティーダは、5ナンバーサイズの空間をより広く、よりクオリティ高く仕立てた5人乗りのコンパクトハッチバックである。

ティーダは、ホイールベースをマーチより170mm延長し、前後に240mmのスライドが可能なリアシートを装備。シーマ並みの広い足元空間と、ステーションワゴン「ウイングロード」並みの荷室長が両立された。さらに、フロントシートには大型タイプを採用したほか、ソフトパッドやアルミ調パネルを効果的に用いてクラスを超える高級感が訴求ポイントだった。


また安全装備として、全車にSRSデュアルエアバッグやEBD(電子制御制動力配分システム)&ブレーキアシスト付ABS、前席アクティブヘッドレストが採用された。

パワートレインは、新開発の最高出力109ps/最大トルク15.1kgmを発揮する1.5L 直4 DOHCエンジンと4速ATおよびCVTの組み合わせ。駆動方式は、FFと電動4WD「e-4WD」が設定された。また翌2005年1月には、128ps/17.9kgmの1.8L直4 DOHCエンジン+CVTの高性能のトップグレードが追加された。
車両価格は、2WDの標準グレードが142.8万円、電動4WDが163.8万円に設定。派手さはないが、上品で世界戦略車らしいフォルムや高級車に負けない室内空間を特徴とするディーダは、ヒットモデルにはならなかったが堅調な販売を続けた。
しかし、2011年4月に海外で2代目モデルが発表されたものの国内には投入されず、2012年8月にワンクラス下のコンパクトカー「ノート」に統合される形で国内販売は終了した。
2代目以降は海外で活躍、国内ではオーラが継承
1代限りで国内販売を止めたティーダだが、2代目以降は中国を皮切りに世界展開は続けられ、世界戦略車として堅調な販売を続けた。

一方で、国内では消えたティーダだが、2012年8月にデビューした2代目ノートは、“現行ノートとティーダの幅広いカバーをするモデル”とされ、特にティーダの高級なコンパクトカーというコンセプトは、ノートの最上級グレード「メダリスト」に引き継がれた。メダリストもティーダに負けない上質な室内空間と使い勝手の良さが魅力だった。

そしてメダリストは、2021年8月に登場した3代目ノートから派生した上級モデルの「オーラ」へと発展を遂げた。オーラは、ツイード調ファブリックや木目調パネルといった上質な素材で仕立てられたインテリア、パワーアップした第2世代「e-POWER」システムを搭載。その内外装の質感、静粛性、そして走りの性能のすべてを徹底的に作り込み、“小さな高級車”と呼ぶにふさわしいプレミアムなコンパクトカーという位置付けで人気を獲得している。
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同時期にデビューした“若いファミリー層向けのコンパクトカー”のノートと、“小さな高級車の”ティーダは上手く棲み分けができていたが、日本市場では小さな高級車はなかなか人気を得るのは難しい。そのような背景から、ラインナップ展開の中で国内についてはノートをコンパクトカーの柱としたかったのかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

