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今日は何の日?■高級グレードのオデッセイ・プレステージ

1997(平成9)年10月2日、ホンダは1994年にデビューした背の低い乗用車ライクなミニバン「オデッセイ」の高級グレード「オデッセイ・プレステージ」を発売した。3.0Lエンジンを搭載して余裕の走りを実現した上で、ミニバントップクラスの高級感のあるデザインやインテリアでベースのオデッセイと差別化した。

乗用車ベースのミニバンを先導した「プレーリー」と「エスティマ」
1990年以前のミニバンは商用車ベースが一般的だったが、乗用車ベースのミニバンの始祖は、1982年8月にデビューした日産のFFベースの「プレーリー」とされている。プレーリーは1980年代に始まったアウトドアブームを背景に、マルチパーパスビークルを謳ったミニバンとして人気を獲得。続いて、1983年には同様のコンセプトの三菱「シャリオ」とホンダ「シビック・シャトル」も登場し、マルチビークルという言葉が流行った。

1990年5月には、それまでのミニバンとはまったく異なる新発想のミニバン、トヨタ「エスティマ」が“天才タマゴ”のキャッチコピーとともにデビューした。全体を曲面で構成したワンモーションの、まさに卵のようなスタイリッシュなフォルムと、広い3列シートおよびラウンディッシュなコクピットを配した近未来的なインテリアが大きな注目を集めた。

エスティマは販売開始とともに一般のファミリー層からも人気を獲得し、好調な販売を記録してミニバンブームの火付け役となった。
大ヒットした背の低い乗用車感覚のミニバン、オデッセイ
エスティマに先を越されたホンダは、1994年10月にエスティマよりさらに乗用車感覚で、ステーションワゴンの背を高くしたような独特なスタイルの「オデッセイ」を発売した。

アコード用のシャシーやエンジンを使ってボディを可能な限り低くし、全高1650mm程度の空力に優れたスタイリングが特徴で、後席ドアはミニバンの特徴であるスライド式ではなく、乗用車感覚を大事にしてあえて乗用車と同じヒンジ式だった。
ボディタイプは、2/2/2人の6人乗りと2/3/2人の7人乗りを用意し、パワートレインは最高出力145ps/最大トルク20.0kgmを発揮する2.2L 直4 SOHCエンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はボンネット内にエンジンを搭載したFFベースとデュアルポンプ式4WDも用意された。ボンネット内にエンジンを収めることによって、車高が低くても広々として車室内空間が確保されたのだ。
車両価格は、179.5万円/205.5万円/245.5万円の3つのグレードがあり、従来のミニバンの常識を覆した乗用車感覚のオデッセイは、1995年には販売台数12万を超える空前の大ヒットを記録した。
豪華になったオデッセイ・プレステージを追加


大ヒットしてミニバンブームをけん引していたオデッセイだが、1997年8月のマイナーチェンジで、新開発の150ps/20.8kgmの2.3L 直4 DOHC VTECエンジンを搭載して走行性能の向上を図った。さらに1997年10月のこの日、パワーアップと上級化を図った「オデッセイ・プレステージ」を追加した。

オデッセイ・プレステージは、新開発の200ps/27.0kgmを発揮する3.0L V6 DOHC VTECエンジンと4速ATを組み合わせ、駆動方式はFFのみ。これによりセダン感覚の余裕ある動力性能と、ミニバントップクラスの静粛性、快適な乗り心地が確保された。

具体的なオデッセイとの相違点は、車格感あるフロントマスクなど洗練されたエクステリア・デザインや高い質感のインテリア・デザイン、さらに高級感あふれる本革シート&革巻きシフトノブ(一部のみ)を採用。また、全方位安全設計ボディや新開発のブレーキシステム、EBD(電子制御制動力配分システム)を備えたABS、運転席用&助手席用SRSエアバッグシステムの採用により、世界レベルの安全性が確保された。
車両価格は、2グレードで264.5万円/294.5万円だった。当時の大卒初任給は19.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約310万円/346万円に相当する。

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オデッセイの高級グレードとしてデビューしたオデッセイ・プレステージだったが、一方日産は1997年に高級ミニバン「エルグランド」、2002年にはトヨタから「アルファード」が発売され、高級ミニバンという新たなジャンルが開拓された。おかげでオデッセイ・プレステージの存在は、中途半端になって影が薄くなってしまった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

