連載
今日は何の日?■ファンカーゴの後継で、広くて使いやすい室内を持つラクティス
2005(平成17)年10月3日、トヨタはファンカーゴの後継車であるラクティスを発売した。1999年にデビューして大ヒットしたヴィッツの派生車として誕生したファンカーゴは、2列シートのミニバン風ハイトワゴン。ラクティスはそのファンカーゴの後継車であり、また2代目ヴィッツの派生車である。

コンパクトカーのイメージを刷新した初代ヴィッツ
1999年にデビューしたヴィッツは、“世界に通じるコンパクトクラスの新ベンチマークとなる”をコンセプトに掲げて、プラットフォームや主要コンポーネントすべてを一新した新世代コンパクトカーとして誕生した。

従来のシンプルな2BOXスタイルではなく、丸みを帯びた世界に通用する欧州車風のハッチバックスタイルを採用。ロングホイールベース化することで広い室内空間を実現し、さらにワンランク上のインテリアで上質感をアピールした。
パワートレインは、小型・軽量化を図った最高出力70ps/最大トルク9.7kgmを発揮する1.0L 直4 DOHC VVT-iエンジンと、5速MTと4速ATの組み合わせ。駆動方式は基本FFだが、遅れて4WDも用意された。また4WDのために、88ps/12.3kgmの1.3L 直4 DOHCエンジンも追加された。

ヴィッツは世界戦略車に相応しいように、走行性能や安全性能、快適性などが高められ、海外では「ヤリス」とネーミングして世界中で人気を獲得した。発売当初から月販1万台を越え、初年度はカローラに続く15万台を達成し、ヴィッツの出現がそれまでのコントパクトカーのイメージを一掃。すべてにおいてワンランク上の革新的なコンパクトカーだった。
ヴィッツの派生車プラッツとファンカーゴ
ヴィッツから7ヶ月遅れの1999年8月、ヴィッツをベースにした派生車の4ドアセダン「プラッツ」とハイトワゴン「ファンカーゴ」がデビューした。
・プラッツ

全長はヴィッツより535mm長く、独立したトランクルームを設けて、フロントとリヤ周りを専用デザインとしたが、ホイールベースや全幅、全高のサイズはヴィッツと共通。トランクルーム容積は、先代の「コルサ」に比べて30%も大きかった。
スタイリングは、専用デザインのヘッドライトとグリル形状にすることで、ヴィッツよりややソフトな雰囲気となった。パワートレインは、ヴィッツ搭載の1.0Lと1.3Lエンジンに、トランスミッションはヴィッツと同じ5速MTと4速ATが組み合わされ、駆動方式もFFおよび4WDが選べた。
・ファンカーゴ

2列シートのハイトワゴンで、フロントまわりはヴィッツのイメージを持ち、ルーフラインは前席頭上からわずかにキックアップしていた。全高は、ヴィッツより180mm高く、ホイールベースが130mm、全長は250mm伸ばして広いキャビンが実現された。また広くフラットな荷室には、一般的な自転車だけでなく大型のクロスバイクなどのスポーツ系自転車もそのまま楽に収容できた。
パワートレインは、ヴィッツ搭載の1.3L&1.5Lエンジンと電子制御4速ATの組み合わせ。ファンカーゴは、レジャーやビジネス用途に使えるマルチパーパスなコンパクトカーとして人気を獲得し、ヴィッツとプラッツとともに“1999~2000年日本カー・オブ・ザ・イヤー”を受賞した。
2代目ファンカーゴはラクティスに車名変更
2005年2月にヴィッツはモデルチェンジし、その8ヶ月後にファンカーゴもモデルチェンジを迎えたが、同時に車名はラクティスに変更された。


“携帯空間”をキャッチフレーズにしたラクティスは、先代ファンカーゴ同様ミニバン風のシルエットを持つ5人乗りで、全高は先代より40mmほど低い1640mm。セカンドシートは、シートバックを倒した状態でシートクッションごと前方へ送り込んで収納し、フラットフロアの大スペースをつくるダイブインシート方式が採用された。

パワートレインは、87ps/11.8kgmの1.3L 直4 DOHC、110ps/14.4kgmの2種エンジンと、CVTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFまたは4WD(1.5Lのみ)だった。
車両価格は、2WDの標準グレードで138.6万円(1.3L)/151.2万円(1.5L)に設定。ラクティスは、発売から1ヶ月で約2.1万台を受注して順調なスタートを切った。

・・・・・・・・・
順調に滑り出したラクティスだったが、2013年以降は販売が落ち込み、2016年8月に販売を終えた。コンパクトなワゴンやミニバンであっても、最近はスライドドアが必須であり、ヒンジドアだったラクティスが敬遠される一因だった。また、同じトヨタの「ルーミー」や「シエンタ」が絶好調なので、ラクティスは車種整理されたと思われる。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

