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今日は何の日?■扱いやすくて燃費が良いコンパクトセダンのラティオ
2012(平成24)年10月5日、日産はコンパクトハッチバックの「ティーダ」をベースに2004年に誕生したコンパクトセダン「ティーダラティオ」の2代目となる「ラティオ」を発売した。コンパクトながら広い室内、ダウンサイジングによる優れた燃費性能が訴求ポイントである。

日産再生の切り札となる世界戦略車、ティーダラティオ
1990年代初頭のバブル崩壊以降、経営悪化に苦しんでいた日産は、1999年にルノーと提携して傘下に収まることになった。最高経営責任者に、当時ルノーの副社長であったカルロス・ゴーン氏を迎え、大胆なリストラ策などの“日産リバイバルプラン”を敢行。V字回復によって2003年に負債を完済し、再生は成功した。
その勢いで、日産は世界戦略車の開発に注力し、2004年から以下の6台の新型車を次々と投入した。

・ムラーノ:ラージサイズのクロスオーバーSUV
・フーガ:セドリック/グロリアの後継となる高級セダン
・ティーダ:パルサーの後継となるハッチバックモデル
・ティーダラティオ:ティーダの派生車でサニーの後継の小型セダン
・ラフェスタ:リバティの後継となる7人乗りミニバン
・ノート:ファミリー向けのコンパクトカー
名車サニーの後継として登場したティーダラティオ
コンパクトセダンのティーダラティオは、ハッチバックのティーダより1ヶ月遅れの2004年10月にデビューした。日産における小型エントリーセダンだった「サニー」の後継車という位置付けだった。

ティーダラティオは、ティーダと別デザインのフロントグリルによって差別化され、インテリアはティーダと共通だが、ティーダがメタル調、ティーダラティオは木目調のフィニッシャーが採用された。プラットフォームは、ティーダ同様アライアンス関係のルノーと共同開発したBプラットフォームのロングホイールベース版が採用された。
パワートレインは、最高出力109ps/最大トルク15.1kgmを発揮する1.5L 直4 DOHC(後に128ps/17.9kgmの1.8Lを追加)と、エクストロニックCVTおよび電子制御4速AT、6速MTの組み合わせ。駆動方式はFFと4WDが用意された。
ティーダラティオは、5ナンバーながら上級クラスに匹敵する広い室内が売りで、サニーやパルサーの後継車として、セダン冬の時代ながら比較的健闘して人気を獲得した。
ラティオは1代限りで国内販売から撤退

2012年10月にティーダラティオが国内向けのフルモデルチェンジを行なった際、ティーダが2代目ノートに統合されるかたちで国内向けの販売を終了したことから、2012年10日のこの日にラティオの単独ネームに改称され生まれ変わった。

生まれ変わったとはいえ、5ナンバー枠におさまるコンパクトセダンという基本コンセプトは継承され、「ブルーバードシルフィ」や「ティアナ」、「スカイライン」などを含めた日産セダンの中では、最も手頃なコンパクトセダンという位置付けだった。

スタイリングは、見るからに広そうなイメージを印象付けることを大切にして、押し出し感のあるフロントまわりや、フェンダー上部のキャラクターラインで個性を演出。サイズ的には先代とほとんど変わらないが、車高が40mm低くなった分、スマートに見えた。
パワートレインは、国内仕様はダウンサイジングを進めて、最高出力79ps/最大トルク10.8kgmの1.2L 直3 DOHCエンジンと副変速機付きCVTの組み合わせ、駆動方式はFFのみだった。車重約70kgの軽量化や空力性能の改良、効率を高めたCVT、アイドリングストップ機構の採用などによって、燃費は18.0km/Lから22.6km/L(JC08モード)に改善された。ダウンサイジングを進めたことで性能的には低下したが、軽量化のおかげもあって従来並みの動力性能が得られた。

車両価格は、標準グレードで138.8万円に設定された。ラティオは、ダウンサイジングによって先代のウリだった広い室内や上質なインテリアもグレードダウンとなったため、先代のような人気を獲得できなかった。

結局、2016年に国内販売を終え、以降ミャンマーなど海外で販売を続けたが、現在は統合されてラインナップから消えている。
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ラティオは、燃費を重視してダウンサイジングとともにダウングレードしたために、先代の上級なコンパクトセダンの魅力が失せてしまった。さらに日本国内における小型セダンの市場縮小などという悪条件が重なり、存在感をアピールすることができなかった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。




