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今日は何の日?■ダイハツ初のターボ車、ミラターボをリリース
1983(昭和58)年10月6日、ダイハツは軽ボンネットバン(商用車)というコンセプトで人気を獲得していた「ミラクオーレ」のターボ車「ミラターボ」を発売した。軽初のターボ車としては、同年3月に三菱から「ミニカターボ」が市場デビューしていたが、ミラターボはそれを上回る性能を発揮した。

スズキのアルトに対抗したダイハツのミラクオーレ

1979年、スズキから軽ボンネットバンの「アルト」が発売され大ヒットした。軽ボンネットバンは、商用車でありながら乗用車スタイルの軽自動車であり、物品税が免除されることから車両価格が抑えられるメリットがあった。

一方ダイハツは、アルトに対抗する形で翌1980年に同じく軽ボンネットバンの「ミラクオーレ」を投入した。ミラクオーレは、ハッチバックながら1.5ボックスというレイアウトで、エンジンが収まるフロント部をコンパクトに仕上げたうえで全高を高くして、室内空間と荷室空間を広くしたことが特徴。この設計思想でアルトとの差別化を図った。
パワートレインは、最高出力29ps/最大トルク4.0kgmを発生する550cc 直2 SOHCエンジンと4速MTおよびオートクラッチ4速の組み合わせ。オートクラッチは、MTをベースにしてクラッチを自動で断続する2ペダルである。ミラクオーレは、バキューム式(通常は電磁クラッチ)でクラッチを自動断続する。
車両価格は、アルトよりやや高いがそれでも49.3万円という低価格と優れた燃費性能、加えて1.5ボックスの実用性の高さから大ヒット。乗用車仕様「クオーレ」の販売台数を大きく上回り、アルトに負けない販売を記録してダイハツの大黒柱へと成長した。
軽自動車もターボ時代到来
1967年のホンダ「N360」の登場以降、軽自動車は高性能を追求し続けた。1970年代前半にはオイルショックと排ガス規制強化という逆風によって、高性能競争はいったん影を潜めた。そして、排ガス規制対応が一段落した1980年を迎える頃には、高性能化時代が再来することになった。

そのような中で1983年3月、三菱から軽自動車初のターボエンジンを搭載した「ミニカアミLターボ/ミニカエコノターボ」が発売された。550cc 直2 SOHCターボエンジンは、最高出力39ps/最大トルク5.5kgmを発揮、これにより軽自動車にターボ旋風が巻き起こったのだ。
対するダイハツは、1982年にミラクオーレから単独ネーム「ミラ」に改名し、1983年10月のこの日に“ペパーミント・ターボ”と謳った「ミラターボ」を投入した。エンジンは、550cc 直2 SOHCターボで、41ps/5.7kgmを発揮。これにより、NA(ノンターボ)の30ps/4.2kgmに比べて30%以上もパワーアップしたのだ。

車両価格は、64.2万円(標準グレード)/72.5万円(ハイレード)に設定。当時の大卒初任給は、13万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約113.6万円/128.3万円に相当する。また標準グレードのNA仕様は、51.2万円だったので、ターボ化によって価格は13万円アップしたことになる。
ちなみにスズキは、翌1984年11月に、ターボ車を加えるが、車種はアルトではなくスペシャリティカーの「セルボ」で、最高出力40ps/最大トルク4.2kgmを発揮した。
過激さを増した軽の高性能競争
ダイハツの高性能化はさら加速して、1985年8月のフルモデルチェンジと同時に「ミラターボTR」を投入。エンジンは、550cc 直3 SOHC インタークーラーターボで52ps/7.1kgmを発揮し、走り好きの若者から大きな注目を集めた。

さらに真打は、1985年10月に追加された「TR-XX(ダブルエックス)」だ。動力性能は同一だが、エアスポイラー一体式の大型樹脂パンパ−、バックドアスポイラーなど、空気抵抗を軽減して高速走行を追求したエクステリアも注目を浴びた。

ライバルのスズキもTR-XXに負けてはいない。スズキは、1987年に軽初となるDOHCターボの550cc 直3 DOHC インタークーラーターボエンジンを搭載した「アルトワークス」を投入。当時の最新技術を盛り込んだ高性能エンジンは、最高出力64ps/最大トルク7.3kgmを発揮した。あまりの高出力ぶりに、この64psが最高出力規制のきっかけになり、現在でも軽自動車の自主規制値になっている。

その他にも高性能なターボ車が続々と発売され、軽市場は活況を呈した。この頃の軽ターボ車は、軽いクルマにハイパワーエンジンを搭載することで、その加速はまさに空を飛ぶような迫力があった。
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排ガス規制が一段落した1980年代に入ると、日本経済はバブル景気に向かって絶好調期を迎えた。メーカーは潤沢な資金を背景に活発な開発が進められ、市場もそれに応えるようにターボ化やDOHC化、高機能化を求めたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。