ニンジャ7ハイブリッド……1,848,000円

車名はニンジャ7ハイブリッドだが、モーターのみで走行可能なこのモデルは、分類としてはストロングハイブリッドとなる。なおモーターがアシストのみに徹する場合は、マイルドハイブリッド。

電子制御式自動クラッチの完成度に感心

フロントマスクはニンジャ400やニンジャ600に通じる雰囲気だが、アッパーカウル中央に備わるリバーマークは、カワサキが最新技術を投入した高性能車の証。既存のモデルでは、H2シリーズやZX-10R/RRなどが採用。

話がややこしくなりそうなので、第1回目には記さなかったけれど、ニンジャ7ハイブリッドは世界初のストロングハイブリッドバイクにして、カワサキにとっては電子制御式自動クラッチ+パドルシフトの初採用車である。

しかもエコHVモードには2種類の変速システム、6速マニュアルシフトと6速オートマチックが存在する(スポーツHVモードは6速マニュアルシフトのみで、EVモードは4速オートマチックのみ)。

ちなみに、近年の2輪の世界ではクラッチとミッションの改革が進行中で、ホンダは既存のDCTに加えてEクラッチの導入を開始しているし、ヤマハやBMWは電子制御式クラッチ+オートマチックに積極的な姿勢を示している。

もっともマニュアルシフトを面倒と感じたことがない僕は、そういった便利機構に対して、諸手を挙げて大歓迎というスタンスではないのだが……。

このバイクの場合は電子制御式自動クラッチ+パドルシフトとオートマチックが、パワーユニットの特性に合っていて、先進性と独創性に大いに貢献していると思った。

ただし、アップもダウンもサクサク行えるパドルシフトに感心する一方で、当初の僕はオートマチックのシフトタイミングに疑問を抱いたものの(発進直後のアップが早すぎるうえに、走行中は高めのギアを維持したがる傾向で、強めの減速をした際はダウンがちょっと雑)、慣れが進んでからはイージーさをしっかり満喫。

なおニンジャ7ハイブリッドの電子制御式自動クラッチは、動力の断続に加えて、エンジンとモーターが生み出すパワーの配分調整も行っているのだが(さらに言うなら、バッテリーに電力を蓄える回生システムのキモでもある)、作動感は至ってナチュラルで、走行中の違和感は一切ナシ。

初めての採用となるメカニズムで、よくぞここまで高い完成度を実現できたものだと思う。

エコランに徹したら、37.1km/ℓをマーク‼  

ハイブリッド=高燃費。世間ではそれが定説になっている。

確かに、ニンジャ7ハイブリッドの燃費はなかなか良好で、エコHVモードでは実測で28.7km/ℓをマークしたのだが(スポーツHVモードの実測は24.7km/ℓ)、過去にガチ1000km試乗で取り上げたニンジャ400が、トータルで29km/ℓをマークしたことを考えると、そこはかとない物足りなさを感じなくはない。

そこでエコランを意識して、市街地の移動でEVモードをメインに140kmほど走ってみたところ……(バッテリー残量が少なくなったら、エコHVモードのオートマチックで走行して電力回復)、予想以上の数値となる37.1km/ℓを記録‼ こういうチャレンジで達成感が味わえることも、ニンジャ7ハイブリッド特有の魅力だろう。

運動性と快適性はいまひとつ……?

さて、そんなわけでパワーユニットには大いに感心したものの(エンジンとモーターの詳細は第1回目に掲載)、峠道におけるハンドリングは抜群とは言い難かった。

コーナー進入時にはフロントまわりの内向性を強く感じるし、車体を倒し込む際はミッション上部に備わるモーターとシート下のバッテリーの重さが心身に伝わってくるので、思い切ったアクションが起こしづらい。そして軸間距離が非常に長いため、コーナーの後半では想定より曲がっていない?と感じる場面に何度か遭遇した。

スチール製トレリスフレームは専用設計。ミッション上部には12ps・3.7kgf-mを発揮する駆動用モーター、シート下には50.4Vのリチウムイオンバッテリー(13.4kg)が備わる。

また、車重の重さによる姿勢変化の大きさを嫌ったのか、前後サスペンションの設定はやや硬めで、ロングランの終盤では腕と足腰にジンワリとした痛みが発生。

ニンジャ400のストリップ。ニンジャ7ハイブリッドと比べると、かなりスッキリした印象。

そういった車体の挙動を認識している最中、僕の頭に浮かんだ車両は、どんな場面でもナチュラルにして軽快で、ワインディングロードではパラレルツインならではの旋回性が堪能できる、ニンジャ400とニンジャ650だった。

素性も価格も違うのだから比較するべきではないと思いつつも、このバイクの運動性と快適性は既存のニンジャ400とニンジャ650に及んでいないのだ。

ちなみに各車の重量とホイールベースは、ニンジャ7ハイブリッド:228kg・1535mm、ニンジャ400:167kg・1370mm、ニンジャ650:194kg・1410mmである。

プラス要素がマイナス要素を凌駕

ただしそのあたりは、個人的には取るに足らないことと思えなくはなかった。などと書くと、普段はハンドリングや快適性に関して、アレコレ書いているヤツが何を言っているんだとツッコミが入りそうな気がするが……。

そういった面でのマイナス要素よりも、僕にとってはストロングハイブリッド/電子制御式自動クラッチ/パドルシフト/オートマチックがライダーに与えてくれるプラス要素のほうが、圧倒的に大きかったのだ。

なおニンジャ7ハイブリッドが採用した新機軸に対して、当初の僕は過去に体験したことがない新鮮な組み合わせだから面白いのかも?と考えていたのだが、今回の試乗で飽きを感じることはまったく無かった。

と言ってもオーナーになって走行距離が伸びれば、新鮮さは徐々に失われていくのかもしれないが、現在の僕は2輪の新しい世界を切り開いてくれたカワサキを称賛したい気分だし、今後も機会があれば、このバイクでもっといろいろな場面を走ってみたいと思っている。

リアサスペンション周辺に注目すると、スイングアームはもっと短くできそうな気配。逆に開発陣がスイングアームを長めにした背景には、安定性確保や前後重量配分の適正化、豪快な加速の発進eブースト対策、などという事情があったのではないかと思う。

※近日中に掲載予定の第3回目では、筆者独自の視点で行う各部の解説に加えて、約1000kmを走っての実測燃費を紹介します。

EVモード+エコHVモードで、37.1km/ℓをマーク‼ ニンジャ7ハイブリッド 1000kmガチ試乗【3/3】

3種のモードを駆使してさまざまな場面を走った筆者は、ストロングハイブリッドバイクの魅力に大いに感心。もっともこの車両がロングランに向いているのかと言うと……、それはなかなか微妙かもしれない? REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

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https://motor-fan.jp/article/1296605/

主要諸元

車名:ニンジャ7ハイブリッド
型式:8AL-CX500A
全長×全幅×全高:2145mm×750mm×1135mm
軸間距離:1535mm
最低地上高:130mm
シート高:795mm
キャスター/トレール:25°/104mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:451cc
内径×行程:70mm×58.6mm
圧縮比:11.7
エンジン最高出力:43kW(58ps)/10500rpm
エンジン最大トルク:43N・m(4.4kgf・m)/7500rpm
モーター最高出力:9kW(12ps)/2600~4000rpm
モーター最大トルク:36N・m(3.7kgf・m)/0~2400rpm
システム最高出力:51kW(69ps)/10500rpm
システム最大トルク:60N・m(6.1kgf・m)/2800rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
(電子制御式マニュアルモード付きオートマチック)
クラッチ形式:電子制御式
ギヤ・レシオ
 1速:2.235
 2速:1.8000
 3速:1.500
 4速:1.240
 5速:1.074
 6速:0.964
1・2次減速比:2.218・3.071
フレーム形式:ダイヤモンド(トレリス)
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:スイングアーム・モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:160/60ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:228kg
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
燃料タンク容量:14L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:31.0km/L(2名乗車時・SPORT-HV)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-2:23.6km/L(1名乗車時・SPORTS-HV)