「かわいい」から「かっこいい」へ、8年ぶりのフルモデルチェンジ

スズキ・新型クロスビー 全長×全幅×全高:3760×1670×1705mm ホイールベース:2435mm

ワゴンとSUVを融合させた「新ジャンルクロスオーバー」として2017年12月に誕生したスズキ・クロスビーが、ほぼ8年ぶりにフルモデルチェンジする。ワゴンのパッケージングにSUVのテイストを付加したキャラクターに変更はないが、エクステリアを見れば明白で、イメージは一新。これにはもちろんワケがある。

初代クロスビーのユーザー調査をしてみると、「カジュアル」で「かわいい」というイメージを持たれていることがわかった。いっぽうで、「かっこいい」という印象を持つユーザーは少数派だったことも判明。ヘッドライトを含め丸っこいデザインやシルエットが「かわいい」と感じさせる要因だと考えられた。

クロスビーのかわいらしさは女性ユーザーに支持された。いっぽうで、発売から時間が経過するにつれ、男性ユーザーが寄りつかなくなり、当初半々だった男女比率は次第に女性上位になっていったという。2019年にモデルチェンジしたダイハツ・ロッキーが精悍なルックスをまとってデビューし、男性ユーザーがそちらに流れたとも推察できる。

スズキ・新型クロスビー ボディカラー:クールイエローメタリック ガンメタリック2トーンルーフ

タフで精悍な表情、丸目を継承しつつ進化したヘッドライト

新型クロスビーはカジュアルでかわいらしいイメージを残しつつ、「かっこいい」「スポーティ」と思ってもらえるような転換を図るべく企画・開発された。その狙いは、SUVらしいタフさや力強さを強調したフロントマスクのデザインに反映されている。

スズキ・新型クロスビー

ヘッドライトは先代と同様に丸を基本としているが、上部を切り欠いてにらみを利かせた表情としている。白いリング状部分は標準仕様ではライトの機能を持っていないが、上級仕様はポジションランプとターンランプが兼用となり、眼力をより強調する仕掛け。光っていなくても白いリング状部分が際立ち、目を引く。

スズキ・新型クロスビー

タフさや力強さを強調するため、新型クロスビーではボンネットフード先端の位置を上げてフロントマスクに厚みを持たせた。また、バンパーには車体色を追加することで、マスクの厚みを強調すると同時に上質感を高めている(リヤバンパーにも車体色を追加)。Aピラーの位置や角度、フロントオーバーハングの長さは先代と変わっておらず、単純にフード前端の位置を高くしただけだという。

スズキ・新型クロスビー

コンパクトながら広い室内空間を確保

インテリアも大きく変更した。センターの高い位置にディスプレイを置き、その下の右側にセレクターレバー、左側に空調パネルを置く基本レイアウトは踏襲しているが、インパネやドアトリムは新しい意匠となっており、上質感を高めている。ステアリングホイールも新デザインだ。先代はエクステリアと同様にインテリアにも丸をモチーフとした形状が多用されていたが、新型はエクステリアと同様、空調吹き出し口に代表されるように角を落とした長方形を反復させている。

インテリアはセンターの高い位置にディスプレイを置き、インパネやドアトリムなどデザインを刷新。

インパネとドアトリムは樹脂成形ながら、シボやステッチ、縁の造形に工夫を凝らすことで革を使った家具に特有の温かみのある質感を表現している。とても樹脂とは思えない、見事な仕上がりだ。開発にあたっては革の家具を実際に購入し、革の表情やステッチ、仕立ての特徴を研究したという。

縁の造形に工夫を凝らすことで革のような質感とステッチを表現。

カップホルダーには630ml入りの大きなペットボトルのほか、500ml入りの紙パックが入るよう設計されている。助手席側のトレイはティッシュボックスがすっぽり収まるサイズだ。先代にはなかったセンターコンソールが設けられたのも、大きな変化点(上級仕様)。上段のトレイはスマホを置くのに便利だ。センターコンソールの後端には、新設定された電動パーキングブレーキのスイッチとシートヒーターのスイッチが設置されている。

カップホルダーには500ml入りの紙パックなど使い勝手が良い。

上級仕様にはステアリングヒーターも新設定されており、スイッチはステアリングホイールの右側にアイドリングストップのオンオフスイッチなどとともに設置されている。先代でアナログだったメーターは7インチのデジタルになっており、基本画面、タコメーター画面、シンプル画面の3種類に切り替えが可能だ。

スズキ・新型クロスビー

全長4m以下のコンパクトなボディながら、広い室内空間を実現しているのは先代と同様。リヤシートは左右独立で165mmのスライドが可能で、10段階でリクライニングできる(先代と同じ)。スライドを最後端にすると、身長184cmの筆者が座ってもひざ前にこぶし2個は入るほどのスペースが残る。頭上も余裕だ。スライドとリクライニングは肩口のレバーで調整。リヤシートを最後端までスライドさせると荷室が狭くなるため、リヤシートにゆったり座って荷物もたっぷりというわけにはいかないが、乗車人数や荷物の量に合わせて多彩な使い方が可能ではある。

新型エンジン+CVTで約25%の燃費向上

パワートレーンは一新された。先代はK10C型の1.0L直列3気筒ターボエンジンと6速ATの組み合わせだったが、新型はZ12E型の1.2L直列3気筒自然吸気エンジンとCVTの組み合わせになった。2023年にデビューした現行スイフトで投入された高効率エンジンに切り替わったことになる。モーター機能付き発電機(ISG)で減速時のエネルギーを電気エネルギーに変換して助手席下に設置した専用リチウムイオンバッテリーに蓄え、加速時にエンジンをアシストするマイルドハイブリッドは先代と同様に搭載する。

1.2L直列3気筒自然吸気エンジン「Z12E型」

高効率エンジンと、変速比を事実上無段階に制御できるCVTの組み合わせに変更した効果は大きく、WLTCモード燃費は22.8km/L(2WD)と大きく向上。先代は18.2 km/L(2WD)だったので約25%の向上だ。先代と同様に4WDも設定する。新型での変化点は、従来4WDにのみに設定されていた走行モードが2WDの上級仕様にも設定されたこと。これまで4WD専用だったスポーツモードやスノーモードの切り替えに加え、ぬかるみなどでの発進をサポートするグリップコントロールや、急な下り坂で車速をコントロールするヒルディセントコントロールも使えるようになった。

スズキ・新型クロスビー

フロントがストラット式、リヤがトーションビーム式(2WD)のサスペンション形式は先代を受け継ぐが、前後ダンパーのピストンバルブをチューニングし、フロントはリバウンドスプリングの追加とスタビライザーリンクの剛性アップ、リヤはサスペンション締め付けトルクのアップを施すなど、走りを鍛え上げている。また、ボディには減衰接着材を新たに適用し、静粛性や乗り心地の面でも手を打った。

アクティブコーナリングサポートは新機能のひとつで、カーブ走行時に外側にふくらみそうになったとき、内輪に軽くブレーキをかけることで内向きのヨーモーメントを発生させ、ステアリングの切り増し操作量低減を図り、安心してカーブを曲がれるよう運転をサポートする。安全装備では衝突被害軽減ブレーキ(DSBS II)やブラインドスポットモニター(BSM)、車線逸脱抑制機能(LDP)を新規に設定したほか、アダプティブクルーズコントロール(ACC)には完全停止保持機能を追加(上級仕様)。車線維持支援機能(LKA)にはカーブでの車速コントロールを追加し、発進お知らせ機能には信号切り替わり検知機能を追加している。

見た目の印象を「かわいい」から「かっこいい」に変えるだけでなく、時代進化分の技術をふんだんに取り入れ、燃費や走りに加え快適性や安全性など、全方位で磨きをかけたのが新型クロスビーだ。