求められる高精度化・迅速化
現在、EVの普及拡大や自動運転技術、SDV※1戦略の進展など、次世代モビリティに関わる技術革新が加速度的に進んでいる。これに伴い、タイヤに求められる性能も高度化しており、静粛性、低転がり抵抗、耐摩耗性のさらなる向上に加え、センサ統合やリアルタイムデータ連携といった新たな機能要求にも対応した製品を高精度かつ迅速に開発することが求められている。
新技術体系「THiiiNK(シンク)」の確立
これまでトーヨータイヤが長年にわたり培ってきた各種技術のうち、「材料技術」「シミュレーション技術」「デザイン技術」の3分野は、同社の考える次代のタイヤづくりにおいて基軸となるコア技術である。これらを統合的に体系として整理したのが新技術体系「THiiiNK」であり、トーヨータイヤは、今後開発するすべての製品に「THiiiNK(シンク)」の技術体系を適用していく方針としている。

[Nano Balance Technology] ~次世代のライフスタイルに応える「材料技術」
トーヨータイヤはゴム材料の開発において、ナノスケールでの材料設計を可能にする独自の基盤技術「Nano Balance Technology」を活用している。この技術は、「分析」「解析」「素材設計」「加工」の4領域を横断的に統合し、ゴム材料をナノ(分子)レベルで「観察」「予測」「機能創造」「精密制御」することで、理想的な材料設計を可能にするものである。乗用車用低燃費タイヤの開発においては、「転がり抵抗の低減(低燃費性能)」と「制動性の向上(ウェットグリップ性能)」という背反する性能を高次元で両立。環境性能と安全性能を兼ね備えたより付加価値の高い商品群を市場に提供している。さらに、トラック・バス用タイヤにおいても、素材設計技術の活用により、燃費向上と環境負荷低減に貢献している。
[T-MODE] ~お客様が求める高い性能を実現する「シミュレーション技術」
トーヨータイヤは1987年、国内タイヤメーカーとして初めてスーパーコンピューターを導入し、以来、継続的に最新機種への更新を重ねている。これは、シミュレーション技術をタイヤ開発における設計支援の中核として位置づけ、独自に積極活用してきたものであり。2000年にはドライビングシミュレーションとタイヤシミュレーションを融合した設計技術「T-mode」を発表。さらに2019年には、CAE※2による従来の設計基盤技術にAI技術を統合し、設計精度とスピードを飛躍的に向上させた新「T-MODE」へと進化させた。これにより、次世代モビリティに求められる複雑かつ高度な性能要件に対応可能な開発体制を確立している。
[パターン設計技術] ~機能性と意匠性の両立をさらに進化させる「デザイン技術」
トーヨータイヤは、性能とアグレッシブなデザインを兼ね備えたタイヤ製品の開発・生産・販売を通じて、北米市場において確固たるプレゼンスを築いている。2004年、米国ジョージア州に初の海外生産拠点「TOYO TIRE NORTH AMERICA MANUFACTURING INC.」を設立以来、「TOYO TIRES」「NITTO」の2ブランドを展開し、ライトトラックからトラック・バス用まで幅広いニーズに応えている。中でも、SUV向け主力ブランド「OPEN COUNTRY」シリーズは北米市場で高い評価を獲得しており、2016年に導入した国内市場でも高い好評を得ています。こうしたデザイン技術は、トーヨータイヤの競争力の源泉であり、ブランド価値向上にも大きく貢献している。
【注釈】
Software Defined Vehicleの略。ソフトウェアをアップデートすることでモビリティとしての機能を最新化できる自動車
Computer Aided Engineeringの略。コンピューター支援工学。製品設計・開発段階でコンピューター上に仮想モデルを作成し、物理現象をシミュレーション、解析する技術