J-クレジットはヤマハ初
ヤマハは、自然の恵みに支えられて多くの事業活動を展開しており、2050年にカーボンニュートラルをめざす「ヤマハ発動機グループ環境計画 2050」を策定している。
当計画に於ける重点取り組み分野のひとつである、生物多様性保全の活動に取り組む中で、ヤマハの技術や知見を活用して地域の森林保全とネイチャーポジティブ、およびカーボンニュートラル推進に貢献することをめざし、本協定に至ったという。

この協定は、西表石垣国立公園とその周辺地域の石垣市所有林に由来するJ-クレジットを、それらの森林経営を担う八重山森林組合が創出・販売するプロジェクトに於いて、森林保全およびカーボンニュートラルに向けた産官連携の取り組みを行なうものだ。
ヤマハはJ-クレジット認証に不可欠な森林のモニタリングを森林計測技術によってサポートする。
また、創出されたJ-クレジットの一部をヤマハが購入することで地域への資金循環にもつなげると同時に、同・国立公園をはじめとする地域資源を活用したアドベンチャーツーリズムの振興も支援する。
協定に基づき、ヤマハは次の3つの取り組みを想定している。
1.森林保全活動のひとつである巡視活動に於ける無人ヘリコプターによる写真撮影・計測と、それによって得られたデータの活用。
2.J-クレジット創出による地域への資金循環と林業支援。
3.カーボンニュートラルモビリティを活用した地域循環型アドベンチャーツーリズムの推進。
「J-クレジット」に耳なじみのない方も多いと思うが、正式には「J-クレジット制度」と呼ばれる。
これはCO2に代表される温室効果ガスの排出削減量を数値化し、企業間で売買することをできるようにしたしくみ「カーボンクレジット」のうちのひとつ。
カーボンクレジットには2種あり、国が認証するのが「J-クレジット制度」で、民間が認証するものに「ボランタリークレジット」がある。
J-クレジットは、省エネ設備導入(ボイラーなど)や再生可能エネルギー(太陽光発電設備など)の利用でCO2排出量削減、もしくは森林管理(植林、間伐など)によるCO2を吸収するなどしてCO2の削減量を数値化し、「クレジット」として国が認証する制度をいう。
この取り組みでクレジットを蓄積した側(クレジット創出者)は、カーボンオフセットなどを行ないたい企業(クレジット購入者)にJ-クレジットを売却することができる。
いっぽうのボランタリークレジットも大枠はJ-クレジットと似たようなものだが、その定義には細かい部分で民間ごとに違いがある。
今回石垣市と手を組んだヤマハが創出するカーボンクレジットはJ-クレジット。
これはヤマハの同類プロジェクトとしては初のことで、ヤマハはJ-クレジット発行は今年2025年を予定している。
石垣市、八重山森林組合、ヤマハが共同で行なうのは、西表石垣国立公園およびその周辺地域にある約900haの天然生林が吸収した温室効果ガスを算出し、クレジット化するというものだ。
このエリアには天然記念物指定の動植物が多いゆえ、その保全と森林業の収益化(林業経営)の両立が困難という悩みがあった。
ここで森林管理の実施でカーボンクレジット創出と森林管理資金の確保を目指すことになったわけだ。
石垣市は森林整備の基本方針策定、市から依頼を受けた八重山森林組合はその策定に基づいて石垣市有林の施業や巡視活動でJ-クレジットを創出などを行なうが、八重山森林組合の巡視活動には、カメラを載せたヤマハの産業用無人ヘリコプターが用いられる(その操作も当然ヤマハ。)。
カメラといっても、カメラレンズを向けてただ上空から木々を撮るのではない、同社が行なう森林デジタル化サービス「RINTO」のカメラで撮影し、この計測で得たデジタルデータがフル活用される。

この協定は、石垣市有林の収益化が目的だが、このカーボンクレジットに関する取り組み以外に、国立公園内での電動アシストマウンテンバイクを利用した脱炭素型アドベンチャートラベル創出などへの協力も今後の視野に入れているという。