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今日は何の日?■ホンダが本格4WDオフローダーのクロスロードを投入
1993(平成5)年10月13日、ホンダは英国ローバー社の「ランドローバー・ディスカバリー」のOEMモデルである「クロスロード」を発表(発売は11月1日)した。クロスロードは、3.9L V8ガソリンエンジンを搭載し、センターデフ・ロック付きフルタイムを装備した本格オフローダーである。

1990年代初頭、ホンダは車種展開をOEMで推進
1991年にバブルが崩壊、日本市場はスポーティなクーペや高級車からRVブームへと移行、特に市場では三菱「パジェロ」やトヨタ「ハイラックスサーフ」など4WDのオフロード車が大きな人気を集めていた。
当時4WDオフローダーを持たなかったホンダはRVブームに上手く乗れず、販売シェアは急降下。RVの開発に注力し始めるが、当面の急場を乗り切るため、他社からのOEM供給で穴を埋めることにした。OEM相手先は、当時提携関係にあった英国ローバー社といすゞ自動車だった。

1993年にいすゞとの間で商品の相互補完に関する契約を締結し、同年にいすゞ「ミュー」をコンパクトなSUV「ジャズ」の車名で、1994年には「ビッグホーン」を本格オフローダー「ホライゾン」として販売を始めた。またクライスラー社の「Jeepチェロキー」をホンダの販売店で輸入車として販売していたこともあった。
初代クロスロードは、ディスカバリーのOEM車
ホンダは欧州での4輪生産の足掛かりとするため1979年にBL(ブリティッシュ・レイランド)社と技術提携を締結、1990年には資本提携を結び、コラボモデルも投入された。例えば、「レジェンド」と「ローバー800シリーズ」、「アコード」と「ローバー600」などがある。ちなみにBL社は、1986年にローバーグループ社と改称したが、その間もホンダとローバー社の関係は続いた。

1990年にはホンダはローバー社とOEM契約を結び、1993年11月からディスカバリーをクロスロードとして国内で販売を始めた。クロスロードは、基本的にはディスカバリーと同じスペックを持つ本格的な4WDオフローダーだ。

パワートレインは、最高出力180ps/最大トルク31.8kgmを発揮するトルクフルな3.9L V8 OHVエンジンとロックアップ機構付き電子制御4速ATの組み合わせ。駆動方式は、センターデフ・ロック付フルタイム4WDが装備された。
さらに、堅牢なラダーフレームや4輪ビームアクセルリジット&コイルサスペンションなどにより、本格的なオフロード走行と走破性が魅力だった。車両価格は、399万円(5ドア)/389万円(3ドア)に設定。当時の大卒初任給は18.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約496万円/484万円に相当する。


初代クロスロードはオフロード走行を好むユーザーから評価され堅調な販売を続けたが、1998年に販売を終えた。この年、ローバー社がBMWに売却されてホンダとの提携関係が解消したためだった。
2代目は、自社開発でクロスオーバーSUVに変貌
初代の販売終了から9年後の2007年に登場した2代目クロスロードは、ホンダの自社開発で初代の頑強なオフローダーから日常ユースを重視したクロスオーバーSUVへと変貌した。すでに市場ではRVブームは去り、ライトな都会派SUVが人気を獲得していたことが背景にある。


新しいクロスロードは、ミニバン「ストリーム」のプラットフォームをベースに、“スカルプチャル(彫刻のような)・タフ・フォルム”と呼んだシャープなスタイルによって、都会的なイメージを強調。パワートレインは、140psの1.8L&160psの2.0L 直4 DOHC i-VTECエンジンと5速ATの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDが採用された。

車両価格は、184万~234万円(FF)/215万~278万円(4WD)と、一般ファミリー層にも入手しやすい価格となった。しかし、当時はトヨタ「RAV4」やホンダ「CR-V」のような都会的な雰囲気のソフトなSUVが流行っていたため、ややオフローダーよりだったクロスロードの人気は限定的だった。

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初代クロスロードは、ディスカバリーのOEMだけに本格的なオフローダーだったので、当時人気だったRVよりも頑強なイメージが強過ぎた。マニアックで街乗りには不向きで日常では使いづらかったこと、また高額で燃費も良くなかったことがRVブームに上手く乗れなかった理由だった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。