『カッコかわいい』路線にシフトして、男女問わず選んでもらえるクルマに

スズキのコンパクトSUV「クロスビー」が2017年12月のデビューから8年を経て、大規模なモデルチェンジを迎えた。改良のメニューは多岐にわたる。

従来型はそのデザインが高く評価される一方で、「運転を楽にする機能」や「燃費の良さ」といった項目に対しては低評価に甘んじていた。そこで新型クロスビーはエンジンをK10C型1.0L3気筒ターボからZ12E型1.2L3気筒自然吸気に換装することで、燃費を25%向上。さらに衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポートII」や電動パーキングブレーキ、ステアリングヒーターの新採用による安全性や使い勝手の向上など、商品力が大幅に強化されている。

10月2日から販売が始まった新型クロスビー。

では、デザインが好評だったにもかかわらず、新型ではフロントマスクを中心に大きな変更の手が加えられたのはなぜか。市場調査によると、従来型は「カジュアルでかわいい」というイメージが強い一方、「かっこいい」という評価が低い点が課題となっていた。「そこで新型では、クロスビーがもつキャラクターを再定義することとしました。従来型の『かわいい』要素を捨てるのではなく、その魅力を継承しながら、SUVにもつながる『カッコいい』イメージを融合させる『カッコかわいい』路線へとシフトして、男女問わずに選択してもらえるモデルを目指すこととしました」と語るのは、エクステリアデザインを担当した福島耕一郎さんだ。

エクステリアデザイン担当の福島耕一郎さん(商品企画本部 四輪デザイン部 エクステリア課 主任)

新型クロスビーのデザインコンセプトは「Mind Safari(マインドサファリ) #新しい自分を見つける」。このコンセプトは、従来型から継承した「ユニーク」「アクティブ」に加えて、「ゆっくり時間をかけて心が満たされる上質な体験を楽しむ」という意味を持つ「スロー」という三要素で構成されている。

新型クロスビーのエクステリアのデザインスケッチ。

では、その三要素を基に、具体的なエクステリアデザインの変更点を見ていこう。まずは「ユニーク(愛着のわくアイコニックなグラフィック)」から。従来型が丸や楕円をモチーフにしているのに対して、新型では「角を丸めた四角」を用いることで、たくましいイメージを創出。グリルからヘッドライトにつながるラインやアンダーグリル、フォグランプベゼルといった箇所から、その片鱗を窺い知ることができる。

新型クロスビー
従来型クロスビー

ヘッドランプは、「とにかく目ヂカラが強い個性的なもの」を実現しようと特に力が入った部分だ。全体がブラックアウトされた中に、上部を切り取ったサークル状のポジションランプが配置されており、クロスビーとひと目でわかる個性的な表情づくりに貢献している。

新型の特徴となっているヘッドランプ。
新型クロスビーのリヤビュー。フロントまわりと比べると変更点は少ないが、テールランプやリヤバンパー、エンブレムが新しくなっている。
従来型クロスビー

「アクティブ(適度なタフ表現)」の要素はというと、フードセンター位置を上げ、バンパーの車体色面積を増やすことで厚みを増した顔まわりが筆頭だ。さらに大型化されたフロントグリルはドットパターンを採用して、遊びココロのあるアクティブさを表現。このフロントグリルはメッキではなくホットスタンプ(金属箔の転写技術)を用いることで、汚染物質の排出を防止している点もトピックだ。

ドットパターンのフロントグリルは、ホットスタンプを採用することで汚染物質の排出を防止する。

アルミホイールも新デザイン。上級仕様には切削加工とソリッドブラックを組み合わせたホイールを設定し、クロスビーの「X」をモチーフとしたタフな意匠としている。

上級グレード(HYBRID MZ)に標準装備される16インチ・アルミホイール。

そして「スロー(おおらかで情緒豊かな造形)」の要素は、フロントグリルからヘッドランプにつながる平面カーブをシンプルに変更して、大らかかつワイド感を強調する造形とすることで表現。また、従来型では先端が下がるフード形状だったのに対し、新型は水平基調で前に抜けるデザインとし、より伸びやかなシルエットを創出したのもポイントだ。

左が新型クロスビー。ボンネット先端に至るまでのラインが、右の従来型よりも水平に近くなっている。

上質感があってリラックスできる、温かみのある空間づくり

続いて、インテリアデザインを担当した中西 啓さんに新型のコンセプトを聞いてみよう。「従来型のクロスビーは、当初のコンセプトに対してはしっかりと応えられていたと思います。ただ、いろいろと時代も変化していく中で、大人っぽいものが求められるようになってきました。そういう声に応えるべく、上質感があってリラックスできる、温かみを感じられる空間を目指しました」

そしてエクステリアと同様、新型のインテリアは「ユニーク」「アクティブ」「スロー」の三要素に基づきながら、SUVらしい上質な空間を目指して大きな変更が加えられた。

インテリアデザイン担当の中西 啓さん(商品企画本部 四輪デザイン部 インテリア課)

具体的には、各所に反復させた“角丸長方形”グラフィック、水平基調で力強さを表現したダッシュボードにあしらったシルバー加飾、そして革とステッチを模した樹脂オーナメントの採用といった点が挙げられる。特に樹脂オーナメントは家具のような温かみを表現するため、実際に椅子を購入して革とステッチの仕立てを研究し、デザインに反映させたという力の入れようだ。

新型クロスビーのインパネ。水平基調で構成され、落ち着いた雰囲気が感じられる。
従来型クロスビー

実際に新型クロスビーの運転席に座ってみると、ダッシュボードが水平基調のデザインに変更されたおかげで、見た目の広さ感が強まったように思われる。それには、ブラウンの樹脂オーナメントがダッシュからぐるっとドアまでつながるような仕立てになっているのも効いているようだ。

また、上級仕様にはスズキ初となる2段式センターコンソールが新設されたのもトピック。スマートフォンや小物を上下に分けて収納できる。また、インパネのミドル部には630mlペットボトルやティッシュボックスの収納スペースが設けられるなど、実用的なコンパクトカーとしても使い勝手の向上が図られている。

2段式のセンターコンソールは「HYBRID MZ」に標準装備。

光の当たり方で多彩な表情を見せる新色「ミスティックブルー」

最後に、カラーデザインについてご紹介したい。デザインコンセプトである「マインドサファリ」の世界観を表現した新色がミスティックブルーだ。「早朝の雲海の中、霧が晴れた一瞬を捉えた幻想的なブルー」で、街中では洗練された雰囲気を、アウトドアではタフなキャラクターを際立たせるという。

右端と左から2番目がミスティックブルーメタリック。左端は、現行型スイフトとともに登場したクールイエローメタリック。

カラーデザイン担当の高井良未波さんは、ミスティックブルーの特徴を次のように教えてくれた。「ソリッドを基調に大粒の光輝材を多く配合したことで、光の当たり方によって印象が大きく変化するカラーです。光が当たると彩度が高まり華やかに輝く一方、影では彩度・明度が落ちて周囲に溶け込むようなソリッド調の表情を見せる、独特の色味になっています」

CMF担当の高井良未波さん(商品企画本部 四輪デザイン部 CMFデザイン課)

また、新型ではアクセントカラーとしてウォームシルバーも新開発された。その名のとおり温かみのあるシルバーで、フォグランプ加飾やエンブレムに採用。あえて使用面積を抑えることで、アクセント色として際立たせることを狙っている。

インテリアでは、インパネとドアトリムに新規開発のブラウン樹脂を採用。レザーの表情を再現するため、ステッチのシボ(凹凸)加工を施している。アクセントとして高輝度ウォームシルバーを使用し、エクステリアとの一体感を演出した。

上級グレードの「ハイブリッドMZ」に用意される「アップグレードパッケージ装着車」は、よりプレミアムで大人のこだわりを追求した空間を実現するため、インパネ加飾に新開発の塗料「サファリカーキ」を採用。光が当たると黄味の粒子が輝き、エモーショナルな雰囲気を演出する。

シートにはヘリンボーン柄の織物表皮を採用。あえて横向きに張り込むことで、室内のワイド感を強調しつつ、絶妙なメランジ感で程良い抜き感を演出したのがこだわりだ。また、アップグレードパッケージ装着車では、シートのボルスター部とドアアームレストに新規のブラウン合成皮革を採用する。

標準シートの表皮はヘリンボーン柄のファブリックで撥水機能付き。ブラウンステッチもあしらわれる。
「HYBRID MZ」のアップグレードパッケージ装着車は、シートの一部にブラウンの合成皮革を採用する。
ヘリンボーン柄は横向きとすることで広がり感を演出する。

ちなみに、車名の「クロスビー(Xbee)」は、「ワクワクするクロスオーバー(X-over) to be」からの造語。今回、クルマに乗っている時以外にもワクワクを感じてもらうため、「スズキコレクション」として、アパレルグッズなどが新たに設定された。新型のヘッドライトをモチーフにしたミミズクの新キャラクターがユーザーにどのように受けいられるかも楽しみだ。

新型クロスビーの顔まわりをモチーフにしたミミズクのキャラクター。
ポロシャツやキャップ、エコバッグなどがスズキのオンラインショップで発売されている。