VR30DDTTの真価を引き出す
冷却系セットアップも含めたトータルチューンに注目!
V37スカイライン400RでVR30DDTTのチューニングをスタートし、そこで培ったノウハウを投入することで誕生したRZ34のデモカー。オリジナルパーツの開発や各種テストに使われる一台は、ブーストアップに始まり、現状タービンは純正ベースのハイフロー仕様が組まれている。

それに合わせて、インタークーラーも純正の水冷式を完全キャンセル。冷却性能の大幅アップを狙ってパイピングを新設し、フロントバンパー奥に左右バンク独立式のワンオフコアをセットした空冷式へと改められている。

「制御はオリジナルの純正ECU書き替え。最大ブースト圧1.6キロで520psを超えてます」とメカニックの北村さん。
RZ34のVR30DDTTはノーマルでもブースト圧が1.4キロと高く、1.45〜1.5キロ付近でフェイルセーフが介入する。それも個体差があるため、ブースト圧を高めるなら純正ECUで対応するのがベストな選択肢というわけだ。また、燃料供給が直噴(筒内噴射)のためインジェクターはノーマルを使用。すでに全噴射に近い状態でパワーが頭打ちになっている。

北村さんいわく、「ここからさらにパワーアップするには燃料増量が必須。ただ、大容量の直噴インジェクターが存在しないので、ポートに追加インジェクターを打つことになりますね。それを見越して、HKSパワーエディターRとアディショナルインジェクタードライバーを用意してあるんですよ」。
そのパワーを活かし切るため、ファイナルギヤの選択にも余念がない。RZ34 6速MT車のファイナル比は3.538。それに加えて、RZ34 9速AT用3.133とZ34 7速AT用3.357と計3種類を用意する。
もちろん、走るステージによってマッチングの良し悪しが出てくるけど、「最高速に関して言えば、中間の3.357が良さそうやね」というのがエスプリ代表、前川さんの見解だ。

マフラーはメインパイプ径60.5φのフルデュアル構造を採用したHKSスーパーターボマフラーに交換。本来はメインサイレンサー直前にサイレントチャンバーが付くけど、純正タービンがブローした際に回ったエンジンオイルが抜けきれなかったため、取り外されることになった。その分、排気音がやや大きめに。

車高調はHKSハイパーマックスRをセット。バネレートは標準のフロント22kg/mm、リヤ26kg/mmとなる。フロントアッパーアームはエスプリオリジナルの調整式に交換。セッティング幅を拡げている。また、ブレーキはフロントがエンドレスMONO6 TAキット、リヤがV36スカイライン純正キャリパーで強化済み。

ホイールはアルミ鍛造1ピースのポテンザRW007。19インチでフロント9.5Jプラス27、リヤ10.5Jプラス35を履く。そこに組み合わされるのはフロント245/40、リヤ275/35サイズのポテンザRE-71RS。また、フロントフェンダーにはアウトレットダクト処理も施される。

ステアリングホイールやシフトノブまで含めてダッシュボード周りはフルノーマル。追加メーターも装着されず、500psオーバーのチューンドカーを感じさせるものは何もない。

シートは2シーター車に向けて専用設計されたブリッドA.i.Rを装着。シートバックにはエスプリのロゴも入る。

ノーマルで容量をほぼ使い切っている純正タービンだと、たとえブーストアップしても“その先”には多くを望めない。かと言って、フルタービンを組むのはやっぱり敷居が高い。そんな風に考えているRZ34のチューニング予備軍は決して少なくないはずだ。そうなると、コストまで含めた現実的なパワーアップ術として、純正改ハイフロータービン仕様に注目が集まるに違いない。
エスプリが突いてきたのは、まさにそこ。トータルバランスを考えたパッケージングで、十分な発展性も備えたチューニング内容は、老舗ならではのアプローチと言う他にない。
●取材協力:エスプリ 三重県鈴鹿市住吉3-19-1 TEL:0593-70-8080
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