
2025年10月8日(水)から10日(金)まで開催されていた国際福祉機器展(H.C.R.:Home Care & Rehabilitation Exhibition)は、福祉・介護・リハビリテーション分野の最新機器・技術・サービスを紹介するアジア最大級の展示会。全国社会福祉協議会と保健福祉広報協会が主催しており、国内外から多くのメーカーや団体が出展し、最新の福祉機器や介護ソリューションを体験・商談できる場として注目されている。
出展されていたのは国際福祉機器展(H.C.R.)2025
H.C.R.は、会場展示(リアル展)とオンライン展示(WEB展)で構成されるハイブリッド形式の展示会。2020年からWEB展を導入し、来場が難しい国内外の関係者にも情報発信できる仕組みとなっている。リアル展は毎年10月に東京ビッグサイトで開催され、約400社が最新の福祉機器や介護用品を出展。その出展製品は総計1万点を超える大規模なもの。一方、WEB展は会期前後を含む約2か月間公開され、企業や製品情報、動画、資料の閲覧が可能で、年間で約200万ビューを記録するなど多くの利用がある。両展示が連携し、対面とオンライン双方で商談や情報収集を行えるのも特徴となっている。
例年、自動車メーカー各社がリアル展、WEB展に出展しており、今年はリアル展にトヨタ、日産(日産モータースポーツ&カスタマイズ)、スズキ、ダイハツの出展があった。
各社ブースには、運転補助装置付きの車両や、車いす乗車が可能なスロープ車両/リフト付き車両、乗り降りをサポートするスライドアップ/チルトアップシート車などが展示されていた。
最近のトレンドとしては、車いす乗車が可能な車両で、軽自動車ベースでも後席位置で介助者などが隣に並んで座ることができるシートレイアウトのものが増えてきていることがいえる。また車椅子簡易固定標準化コンソーシアムによる車いすワンタッチ固定装置の普及も進んでいる。
トヨタのリフト付き乗降補助シートには2種類ある
そんなH.C.R.に気になるコンセプトカーが出展されていた。
それは、トヨタ・アルファードのリフトアップシート コンセプト。
乗降補助のリフトがついたシートには主に2タイプがある。
トヨタで主流になっている「リフトアップチルトシート」と、従来からある「リフトアップシート」だ。
近年、トヨタのミニバン系はリフトアップチルトシート装着車が主流となっていた。
助手席または助手席側セカンドシートが、左へ回転しながら車外へせり出し、スライドダウン&チルトするタイプだ。
リフトアップチルトシートは、上下・横・傾斜の複合動作によりせり出し量を抑えられるため、狭いスペースでも利用可能で、座った状態から車外に向かって回転しつつ、膝を伸ばして立ち上がる動作のサポートに優れる。その反面、座面のせり出しが少ない影響で低い位置で座面を水平にできないため、車いすへの移乗には工夫が必要となる場合がある。



一方、リフトアップシートは、座面が大きく車外にせり出して低い位置まで降りるため、車いすなどへの移乗が容易となる反面、せり出し量が大きいため乗降スペースに十分な幅が必要で、雨天時には座面全体が濡れやすいという弱点がある。
どちらが優れているという話ではなく、両者は乗降補助の方式としてサポートしやすい環境が異なるもの。
トヨタでは現在、アルファード・ヴェルファイアとノア・ヴォクシーという大きめのミニバンには、リフトアップチルトシートが用意されており、いずれも助手席後方部のセカンドシートが可動する「サイドリフトアップシート車」をラインアップ。ノア・ヴォクシーには助手席が可動する「助手席リフトアップチルトシート車」も用意される。
また、ルーミーにはせり出し量が多く、座面がフラットになる「従来型」のリフトアップシートが装着される「助手席リフトアップシート車」がラインアップされている。
H.C.R.に「開発中」の札が貼られたアルファードのコンセプトカーが!
今回、開発中としてH.C.R.のトヨタブースに出展されたのは「リフトアップシート コンセプト」。
一見、このルーミーと同じタイプのシートが装着されているモデルかと思うようなネーミングではあるのだが、実は助手席側セカンドシートに「リフトアップチルトシート」と「リフトアップシート」、双方の機能を持たせたハイブリッドモデルとなっていたのだ。




ブース・スタッフにお話を伺ったとところ、リフトアップチルトシートの機動性の高さを評価する声もあるが、リフトアップシートが大きめのミニバンからなくなってしまったことに対して、ユーザーから復活のリクエストもあったという。そこで、リフトアップシートの機構を盛り込めないかということで開発が始まったという。
会場におかれたコンセプトカーの動作を見ると、これで販売してくれれば助かる人もいるのではないかと思えるが、市販化までにまだまだハードルは高いとのこと。

今回展示したことで来場者からの反響も多く寄せられ、あらためて市販化のリクエストの声を拾えたようだ。
リフトアップシートとリフトアップチルトシートのハイブリッド化。
乗降介助の中でいずれも必要となる2つのサポートを1台で実現する技術。
その開発作業は続くとのことで、この技術がいずれ市販化されることに期待したい。



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