479万円のエントリー版やクロスカントリーなど魅力的なモデルを展開

ボルボのフル電動コンパクトSUV、EX30のラインアップが2026年モデル(MY26)の導入で1グレードから5グレードに拡大した。2023年のデビュー以降はシングルモーターの最上位モデル、EX30 Ultra Single Motor Extended Rangeのみの設定だったが、装備が簡略化されたEX30 Plus Single Motor Extended Rangeが追加された。「Ultra」の希望小売価格(税込)が579万円なのに対し「Plus」は539万円で、その差は40万円だ。

EX30 Ultra Single Motor Extended Range
EX30 Ultra Single Motor Extended Range
EX30 Plus Single Motor Extended Range
EX30 Plus Single Motor Extended Range

そのUltraよりさらに60万円安い479万円のEX30 Plus Single Motorも追加された。低価格実現の立役者はバッテリーで、Extended Rangeが三元系(NMC)のリチウムイオンバッテリーを搭載しているのに対し、素のPlusは正極材にリン酸鉄(LFP)を使うリチウムイオンバッテリーを搭載している。両車の特性の違いにより、バッテリー容量とWLTCモードによる一充電走行距離はExtended Rangeの69kWh/560kmに対し、素のPlusは51kWh/390kmとなる。

EX30 Plus Single Motor
EX30 Plus Single Motor

EX30 Plus Single Motorはエントリーグレードの位置付けだが、安全装備を含め主要装備に上位グレードとの大きな差はなく、外観上は18インチサイズのアルミホイールが特徴となる。パワーテールゲートもHarman/Kardonのサウンドバーも付いている。ボディカラーはクリスタルホワイト、クラウドブルー、ベイパーグレーの人気3色を設定。インテリアはインディゴの一択だ。

3色のボディカラーとインディゴ一択のインテリアはPlus Extended Rangeも同じ。素のPlusとの違いは19インチアルミホイールを装着することと、エアコンがヒートポンプになることだ。Ultraになるとオニキスブラックとサンドデューンが加わってボディカラーは5色から選ぶことができ、インテリアはミストとブリーズから選択できる。さらに、パノラマガラスルーフが付き、ダークティンテッドガラスになって、フロントはパワーシートになり、シートヒーターが付いて(フロントのみ)、ステアリングヒーターも付く。

以上3グレードはシングルモーターで、最高出力200kW、最大トルク343Nmのモーターをリヤに搭載する。0-100km/h加速はPlusが5.7秒、Plus Extended RangeとUltraは5.3秒だ。EX30 Ultra Single Motor Extended Rangeには何度か乗っているが、パワー、トルクの面で不足はない。フルスロットルをくれた際の加速は強烈で、エクステリアやインテリアからスマートな印象を受けるだけにイメージとの落差は大きく、衝撃的ですらある。

ツインモーターは0-100km/hをボルボ史上最速で駆け抜ける

シングルモーターでさえそういう状況であるのにツインモーターを追加するなんざ、どうしたボルボという感じだ。EX30 Ultra Twin Motor Performanceの価格はUltra Single Motor比50万円増しの629万円。フロントに最高出力115kW、最大トルク200Nmのモーターが追加され(つまりAWD)、システム最高で出力は315kW、最大トルクは543Nmとなり、0-100km/h加速はボルボ史上最速の3.6秒でクリアする。高性能スポーツカー顔負けの数値だ。装備はUltra Single Motor Extended Rangeに準じており、違いはアルミホイールが20インチになることくらいだ。

EX30 Ultra Twin Motor Performance
EX30 Ultra Twin Motor Performance
EX30 Ultra Twin Motor Performance

ツインモーターは、通常時はリヤ駆動で走り、強い加速などの際にフロントモーターのクラッチをつないでAWDとする制御だそう。センターディスプレイの右下にあるドライブモードのボタンを押し、メニューから「パフォーマンス」を選択すると(他に「レンジ」「標準」がある)、常時AWDとなる。

また、MY26ではワンペダルドライブの設定に「OFF(オフ)」が追加され、従来からある「LOW(低)」「HIGH(高)」と合わせて3段階から選べるようになった。LOWはアクセルペダルを離すと最大0.1G程度の減速度が発生し、完全停止させることが可能。HIGHを選択すると、最大で0.3G程度の強い減速度が発生。オフは回生ブレーキがかからずコースティングする設定だ。ステアリング左側にある□をふたつ重ねたグラフィックのボタンを押すことで切り換えができる。

EX30 Ultra Twin Motor Performance
EX30 Ultra Twin Motor Performance

神奈川県の大磯港から西湘バイパスを通って箱根ターンパイクの中途で折り返して戻ってきたが(さんざん乗り回したかったが時間がなかったので)、ツインモーターで走るターンパイクの楽しいことといったらありゃしない。パワーがあるので、急勾配の登り坂もなんのそのだし、電気自動車だから当然といえば当然なのだが、エンジン車のようなうなり音を立てず、平地を走るときの静けさそのままにグイグイ加速していく。

そして、キビキビ曲がる。ワンペダルドライブをHIGHにしておくとアクセルオフしたときの荷重移動を生かした姿勢コントロールがしやすく、おもしろいように曲がっていく。Performanceのグレード名はただパワーとトルクが大きいだけではないことが、走らせてみるとわかる。そんじょそこらのスポーツカー顔負けの走りを楽しむことが可能だ。

ドライブモードは「標準」、省電力走行の「レンジ」、常時AWD状態となる「パフォーマンス」の3種類。
ワンペダルドライブ時の回生ブレーキの強さは3段階。ペダルマーク下の四角の数で表される。
フロントサスペンション:ストラット
リヤサスペンション:マルチリンク

Bセグメントの電気自動車に絞って見渡してみると、AWDは貴重な存在であることに気づく。スズキのeビターラにもAWDの設定はあるが、「プレミアム」のカテゴリーではEX30が唯一の存在。降雪地域に住む人たちにとって歓迎すべきモデルであるらしく、実際、引き合いがあるという。後輪駆動モデルでも雪道を安心して走れることは体験済みだが、AWDならより安心して走れるのは間違いない。

EX30 Ultra Twin Motor Performance

ボルボEX30 Ultra Twin Motor Performance
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4235mm×1835mm×1550mm
ホイールベース:2650mm
サスペンション形式:前マクファーソン式ストラット 後マルチリンク
車両重量:1880kg
フロントモーター最高出力:115kW(156PS)/6000-6500rpm
フロントモーター最大トルク:200Nm(20.4kgm)/5000rpm
リヤモーター最高出力:200kW(272PS)/6500-8000rpm
リヤモーター最大トルク:343Nm(35.0kgm)/5345rpm
駆動方式:AWD
バッテリー容量:69kWh
WLTC航続距離:535km
交流電力量消費率:145Wh/km
タイヤサイズ:前後245/40R20
車両本体価格:629万円

アウトドアテイストがプラスされたクロスカントリーがいい雰囲気!

異色ともいえるグレードがEX30 Cross Country Ultra Single Motor Performanceだ。ツインモーターをベースにオフローダー風に仕立てたモデルで、ツインモーター比20万円高の649万円である。基準車に対して最低地上高を20mm上げ(175→195mm)、ホイールアーチにエクステンションを施し、フロントグリルとリヤゲートをブラックアウトするなど、専用のエクステリアが与えられている。タイヤはUltra Twin Motor Performanceのが245/40R20サイズに対し、クロスカントリーは235/50R19サイズを履く(オプションで18インチオールテレインタイヤの設定もある)。

ボディカラーはUltraからクラウドブルーを抜いた4色を展開。インテリアはクロスカントリー専用のパインである。スカンジナビアの森に育つ常緑樹の松やモミの葉からインスピレーションを得た色彩でコーディネートしたという。

EX30 Cross Country Ultra Single Motor Performance
EX30 Cross Country Ultra Single Motor Performance
EX30 Cross Country Ultra Single Motor Performance

サスペンションはソフトな味つけ。スプリングのレートは下げられ、リヤのアンチロールバーは径を細くし、ダンパーにも手が入っている。電動パワーステアリングの制御は、ソフトな乗り味に合わせてチューニングが行なわれた。

たった20mmの違いだが、乗り込んでみると、視界が高くなり、見下ろし感が強くなったのを意識させられる。クルマの動きはおだやかだ。振幅は大きいし、収まりが悪いという意地悪な見方もできるかもしれないが、これはこれで味である。クロスカントリーのネーミングにふさわしい大らかな乗り味を上手にまとめ上げていると感じた。

ボルボEX30は5グレードにラインアップを拡大したことにより、守備範囲が格段に広くなった。多様なニーズや好み、条件に応えられるようになったことで、より多くの支持を集めることになる。そんな予感がする。

EX30 Cross Country Ultra Single Motor Performance

ボルボEX30 Cross Country Ultra Single Motor Performance
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4235mm×1850mm×1565mm
ホイールベース:2650mm
サスペンション形式:前マクファーソン式ストラット 後マルチリンク
車両重量:1880kg
フロントモーター最高出力:115kW(156PS)/6000-6500rpm
フロントモーター最大トルク:200Nm(20.4kgm)/5000rpm
リヤモーター最高出力:200kW(272PS)/6500-8000rpm
リヤモーター最大トルク:343Nm(35.0kgm)/5345rpm
駆動方式:AWD
バッテリー容量:69kWh
WLTC航続距離:500km
交流電力量消費率:161Wh/km
タイヤサイズ:前後235/50R19
車両本体価格:649万円