既存のラインアップにテコ入れ

スズキが2026年型モデルの第2弾ラインナップを欧州で発表した。今回の発表では、スポーツバイク、ストリート、ツーリング、アドベンチャー、デュアルスポーツと、多様なジャンルにわたる車両が揃う。40周年記念仕様、特別エディション、装備強化モデルなどを含む構成となっており、同社の性能・技術・幅を訴求する意図が透けて見える。以下、モデル分類ごとに注目点を整理する。

Hayabusa|Special Edition

2026年モデルの中心的存在となるのが、伝説的なハヤブサである。最新世代の1,340 cc直列4気筒エンジンを搭載し、調整可能なKYBサスペンション、Brembo Stylemaブレーキ、トラクションコントロール、双方向クイックシフター、ローンチコントロール、スマートクルーズコントロール、全LED照明など先進機能を標準装備する。 

そして今回、ハヤブサSpecial Editionが新設される。この特別仕様はパールヴィガーブルーの専用カラーと、専用グラフィック/シートカウルを特徴とする。車体の基本構成は通常版ハヤブサと共通だが、装飾面で強く差別化される。販売価格は通常版より高めに設定されており、コレクター性・存在感を高めるモデルと位置づけられている。 

標準ハヤブサのカラーリングも刷新され、キャンディレッド+グラススパークルブラック、パールヴィガーブルー+パールブリリアントホワイトなど複数選択肢が用意される。

GSX-R 40周年記念仕様(GSX-R750Z, GSX-R600)

スズキはGSX-Rシリーズ誕生40周年を祝し、GSX-R750Z 40th AnniversaryとGSX-R600 40th Anniversaryのリミテッドモデルを投入する。パールヴィガーブルーとパールテックホワイトを基調とした専用カラーリングおよび40周年ロゴが施され、往年のGSX-Rを彷彿とさせる意匠を現代に再現している。 

GSX-R750Z 40thは750 cc 直列4気筒エンジンを搭載し、ツインスパーフレーム、Showa製BPFフォークとリモートリザーバーショック、2モードエンジンマップ、ラップタイマー、プログラム可能なシフトライト、ミラー統合式ウインカーなどを備える。前ウインカーをバックミラーに統合する仕様がユニークさを際立たせている。

GSX-S1000 / GSX-S1000GT+

ストリートネイキッドモデルのGSX-S1000は、999 ccのGSX-R系エンジンをベースに、ツインスパーフレーム、KYB 製調整式サスペンション、Brembo モノブロックABS、3ライドモード、5段トラクションコントロール、East Start、Low RPM Assist、スズキクラッチアシストシステム、双方向クイックシフター、MotoGP風ウイングレットなどを装備する。5インチTFT液晶メーターや先進安全機構も搭載され、市街地走行とスポーツライディングの両立を目指す仕様だ。

スポーツツーリングモデルGSX-S1000GT+は、長距離走行にも耐える性能を重視。GSX-R系999ccエンジンを採用しつつ、調整式サスペンション、ABS搭載ブレンボブレーキ、スマートクルーズ、3種ライディングモード、5段トラクションコントロール、アシスト機構、TFT ディスプレイ、そして車体バランスを調整した設計を備える。サイドケースを標準装備し、ロングツーリング用途を想定した仕様となっている。

DR-Z4S|DR-Z4S+を追加設定

デュアルスポーツジャンルでも刷新が行われる。2025年に大幅改良されたDR-Z4Sは、398ccエンジンの燃料噴射化、スチールツインスパーフレーム、KYB製調整式サスペンション、IRCデュアルパーパスタイヤ、3モードライドモード、4段トラクションコントロール(Gravel モード含む)、ABS切替機構、スズキEasy Start、バイファンクション LED ヘッドライトなどを搭載しており、オフ/オン両面で高い汎用性を示す。 

新たに追加される DR-Z4S+は、標準仕様に加えて純正アクセサリーを盛り込んだ仕様だ。スキッドプレート、ハンドガード、フロント/リアブレーキローターガードなどが標準装備され、ツーリングや軽トレイルでの耐久性を強化している。

V-Strom1050/1050DE/800

アドベンチャーツアラーとして V-Strom1050/1050DE を、ミドルレンジアドベンチャーとして V-Strom800系(800/800DE/800DE Adventure) をラインナップ。V-Strom1050/1050DE は 1037cc V型ツインエンジンを搭載し、クルーズ制御、双方向クイックシフター、リーンセンス ABS、5インチTFTメーター、USBポート、調整式スクリーン、可変シート高などを装備。1050DEはスポークホイール、グラベルトラクションモード、リアABS切替機能などを追加装備。

V-Strom 800系は 776cc並列ツインエンジンを搭載し、トラクションコントロール、2段ABS、双方向クイックシフター、Easy Start、ローRPMアシスト、カラーTFTメーター、可変スクリーンなどを備える。DEモデルおよび Adventureモデルには 21インチスポーク前輪、ロングトラベルサスペンション、グラベルモード、リアABS切替機能、スキッドプレート、アクセサリバー、クイックリリース式アルミパニアなどを備える。

第2弾が描く戦略と展望

今回の発表は、スズキのモデル戦略における深耕と多層展開をあらためて示すものだ。すでに第1弾で導入された中量ネイキッド/スポーツモデル(GSX-8T/GSX-8TT など)に加えて、今回のラインナップで「伝統」「記念」「ツーリング」「冒険」「デュアル」まで網羅させる形となる。

記念仕様(GSX-R40周年、ハヤブサSpecial Edition)はブランドの歴史とファン層への訴求を濃く打ち出し、DR-Z4S+のような装備強化モデルは実用性と差別化を狙う。アドベンチャーモデルの充実、スポーツ・ストリート・ツアラーの設置も重層性を持たせており、購入層を幅広く取り込もうという意図が明白だ。

日本国内に導入される仕様や価格、カラーオプションがどうなるかは現時点では確定していないが、発表内容を見る限り、スズキは 2026 年に向けて強い伏線を張っているとみられる。