革新のトランスミッション「Y-AMT」を搭載

Yamahaが中量級スポーツツアラー「Tracer 7」と「Tracer 7 GT」に新開発のY-AMT(Yamaha Automated Manual Transmission)を搭載した。クラッチ操作を完全に排除しながらも、内部構造は従来の6速マニュアルをベースとした電子制御式自動変速機構である点が特徴だ。DCTのような複雑な二重クラッチ構造を採らず、軽量かつコンパクトに仕上げられている。
ライダーは「オートモード」と「マニュアルモード」を自由に切り替え可能。オートモードではECUがスロットル開度や車速、回転数を解析して最適なギアを自動選択し、滑らかな加速を実現する。一方、マニュアルモードでは左手側のボタン操作で任意のシフトアップ/ダウンができ、スポーティな制御感を楽しめる。クラッチ操作が不要なため、渋滞路や市街地走行でのストレスを大幅に軽減する一方、峠道やツーリング先ではライダーの意思による能動的な変速も堪能できるという、まさに「二面性」を備えたシステムだ。
既存プラットフォームを深化させたY-AMT専用設計

Y-AMT導入にあたり、Tracer 7/7 GTはトランスミッション制御ユニットや電子スロットルのマッピングを再構築。これにより低回転域でのトルク特性がより滑らかになり、変速時のショックを感じさせない調整が施されている。搭載エンジンは270度クランクの並列2気筒「CP2」ユニット(689 cc)で、最大出力73.4PS/8750 rpm、最大トルク67Nm/6500rpmを発揮。Euro 5+規制にも適合しており、環境性能とパフォーマンスを高次元で両立している。
Y-AMTユニットは極めて軽量で、従来のクラッチ機構との差はわずか数kgにとどまる。そのため車体バランスを崩すことなく、ハンドリングやサスペンション設定にも大幅な変更を必要としない点がヤマハらしい巧妙な設計哲学といえる。結果として、Tracer 7 Y-AMTとTracer 7 GT Y-AMTはいずれも軽快な操縦性を維持しながら利便性を飛躍的に高めている。
電子制御装備とツアラーとしての完成度

Y-AMT搭載モデルは単なるトランスミッションの進化にとどまらず、装備面でも最新世代へとアップデートされた。ライダーの負担を軽減するクルーズコントロール、走行状況に応じたトラクションコントロール、そして3モードのライディングモードを標準装備。フルLEDヘッドライトや5インチTFTディスプレイも備え、スマートフォン連携による通知表示など利便性を追求している。
「GT」仕様ではさらに快適性を重視し、大型ウインドスクリーン、ハードサイドケース、快適シートなどを標準装備。ロングツーリングでの快適性を格段に高めている。Tracer 7 GT Y-AMTはまさに“オートマチック・ツーリング・ミドル”の完成形と呼ぶにふさわしい存在だ。
Y-AMTを設定したヤマハの狙い

ヤマハはこれまでDCT技術を持つホンダに対して、軽量かつシンプルな自動変速機構で新たなアプローチを打ち出した。Y-AMTは内部的には既存MTをベースとしているため、整備性に優れ、重量増を最小限に抑えられるという優位性を持つ。今後はこの技術を他のミドル〜ビッグクラスモデルへ水平展開する可能性も高い。
Tracer 7/7 GT Y-AMTは、ツーリング志向と利便性を重視するライダーに新たな選択肢を提示しただけでなく、「クラッチレス・スポーツ」という新しい走行スタイルの幕開けを示した存在でもある。クラッチ操作の煩わしさを解放しながらも、走る愉しみを損なわない――Y-AMTはまさに、ヤマハが描く“自由自在なライディング”の象徴といえる。
