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今日は何の日?

■日産のフラッグシップとして誕生したインフィニティQ45

1989(平成元)年10月17日、日産は米国で立ち上げた高級車ブランドであるインフィニティの開業と同時に、フラッグシップセダン「インフィニティQ45」を11月8日に日米で同時に発売すると発表した。インフィニティは、欧米の高級車に対抗するために、ホンダ“アキュラ”、トヨタ“レクサス”に続いた高級車ブランドである。

日産「インフィニティQ45」
1989年にデビューした「インフィニティQ45」

海外向け高級車ブランドとして“インフィニティ”を設立

日本市場がバブル景気で絶好調だった1986年3月、ホンダが米国で高級車ブランド“アキュラ”を立ち上げ、1989年9月にトヨタが“レクサス”、そして日産自動車は同年11月8日に“インフィニティ”を立ち上げた。小型車の成功で世界を席巻した日本車だが、“安くて丈夫で燃費が良い”といったかつての小型大衆車のイメージを払拭するには、高級ブランドの立ち上げが必要だったのだ。

日産「インフィニティQ45」
1989年にデビューした「インフィニティQ45」

3社が立ち上げた高級車ブランドは、欧米を中心に世界各国での高級車市場に展開を図り、特にメルセデス・ベンツやBMWに対抗できるクルマづくりを目指して開業された。アキュラは、最初に「アキュラ・インテグラ」と「アキュラ・レジェンド」を発売、レクサスは「レクサスLS400」を発売し、LS400は日本では「セルシオ」としてデビューした。

そして、セルシオに対抗する形で日産は日本でも「インフィニティQ45」を投入した。

高級車ブランドに相応しいインフィニティQ45

1989年10月のこの日に発表された「インフィニティQ45」は、“ジャパンオリジナル”をコンセプトに開発され、世界に通用する日本独自の価値を追及したインフィニティのフラッグシップセダンである。

日産「インフィニティQ45」
1989年にデビューした「インフィニティQ45」

メルセデス・ベンツ「Sクラス」よりわずかに大きいボディに、ウインカーを含んだ横長のヘッドライトやグリルレスの個性的なフロントフェイス、七宝焼きのエンブレムなど日本の伝統工芸も採用。インテリアも豪華に仕立てられ、前後シートは本革張りとウールファブリックが選べ、インパネやセンターコンソールは欧州高級車を想わせるものがあった。

初代「インフィニティQ45」の七宝焼きエンブレム
初代「インフィニティQ45」の七宝焼きエンブレム

パワートレインは、新開発の最高出力280ps/最大トルク40.8kgmを発揮する4.5L V8 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はFRのみ。足まわりは、4輪マルチリンクが採用され、路面追従性に優れ乗り心地を優先したセッティングとなっていた。

日産「インフィニティQ45」
1989年にデビューした「インフィニティQ45」

さらに、市販車としては世界初の油圧アクティブサスペンションを一部のグレードに設定。車速や走行状況、路面状況に応じてサスペンションのバネレートや減衰力を制御することで、優れた走行安定性と乗り心地が両立された。

車両価格は3グレードが用意され、520万円/560万円/630万円に設定された。当時の大卒初任給は16.4万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で万円約729万円/785万円/884万円に相当する。

ライバルのセルシオは強かった

同時期にレクサスブランド開業とともに登場した「レクサスLS400」は、日本では「セルシオ」を名乗ってデビューした。セルシオは、クラウンでは満足できなかったユーザーに、センチュリーとクラウンの中間に位置する高級セダンを提供するのが狙い。そのためインフィニティQ45同様、特に欧米の高級車に負けない質感や乗り心地、静粛性が重視された。簡単に両モデルの比較をしておく。

日産「インフィニティQ45」
1989年にデビューした「インフィニティQ45」
トヨタ「セルシオ」(海外名:レクサスLS400)
1989年にデビューしたトヨタ「セルシオ」(海外名:レクサスLS400)

◇内外装
・セルシオ:高級セダンらしい重厚なスタイリングと鏡面のような輝きを放つボディ、高級素材を使った豪華なインテリア。
・インフィニティQ45:グリルレスの個性的なフロントマスクや見る角度によって色合いが変わる“トワイライトカラー”を採用、曲線基調の室内空間によって高級感と質感をアピール。

「インフィニティQ45」のコクピット
「インフィニティQ45」のコクピット
初代「インフィニティQ45」の前後シート
初代「インフィニティQ45」の前後シート
トヨタ初代「セルシオ」のコクピット
1989年にデビューしたトヨタ初代「セルシオ」のコクピット
1989年にデビューしたトヨタ初代「セルシオ」のシート
1989年にデビューしたトヨタ初代「セルシオ」のフロントシート
1989年にデビューしたトヨタ初代「セルシオ」のシート
1989年にデビューしたトヨタ初代「セルシオ」のリヤシート

◇パワートレイン
・セルシオ
:最高出力260ps/最大トルク36.0kgmを発揮する4.0L V8 DOHCエンジンとETC-i制御4速ATの組み合わせ。
・インフィニティQ45:最高出力280ps/最大トルク40.8kgmを発揮する4.5L V8 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ。

「インフィニティQ45」搭載の4.5L V8 DOHCエンジン
「インフィニティQ45」搭載の4.5L V8 DOHCエンジン
トヨタ初代「セルシオ」に搭載された新開発の4.0L V8 DOHCエンジン(1UZ-FE型)
トヨタ初代「セルシオ」に搭載された新開発の4.0L V8 DOHCエンジン(1UZ-FE型)

◇足回り
・セルシオ
:4輪ダブルウィッシュボーンで、上級モデルにはピエゾ式電子制御サスペンション、さらにフラッグシップモデルには電子制御エアサスペンションを採用して、高級車らしい快適な乗り心地を実現。
・インフィニティQ45:4輪マルチリンクが採用され、路面追従性に優れ、乗り心地を優先したセッティング。さらに、市販車としては世界初の油圧アクティブサスペンションを一部のグレードに設定。

初代「インフィニティQ45」の油圧アクティブサスペンション
初代「インフィニティQ45」の油圧アクティブサスペンション
トヨタ初代「セルシオ」のサスペンション
トヨタ初代「セルシオ」のサスペンション

◇グレード別車両価格
・セルシオ
:455万円/530万円/550万円/620万円
・インフィニティQ45:520万円/560万円/630万円

・・・・・・・・・
日本の新たな最高級車を競ったインフィニティQ45とセルシオだったが、結果はセルシオが圧倒した。決定的だったのは、インフィニティQ45のフロントグリルレスが高級車の顔として受け入れられなかったのだ。1993年には、マイナーチェンジでメッキグリルに変更したが、時すでに遅しで1996年には生産を終え、3代目「シーマ(FY33型)」が海外向けの2代目インフィニティQ45となった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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