左から順に、Dio110 Lite、スーパーカブ 110 Lite、スーパーカブ 110 プロ Lite、そしてクロスカブ 110 Lite。

新型デビューは3機種、全4モデル。

新登場は、スーパーカブ Lite 2車種とクロスカブ Lite、そしてDio Liteの4モデル。スーパーカブ Lite には同プロが含まれて全4車種となる。各正式名称と発売日は次の通りである。

いずれも110モデルをベースに開発された。新基準原付つまり「Lite(ライト)」シリーズに相応しい最適化が施されている。

原付一種の変遷を語るホンダモーターサイクルジャパンの室岡克博社長。

1958年登場のスーパーカブ C100以来、ホンダは原付一種に数多くのヒットモデルをリリースしてきた。

発表会でまず登壇された室岡社長のお話を要約すると、今回発表された4モデルは今年4月に追加された「新基準原付(一種)に適合させたモデル。原付一種は通勤通学などのパーソナルユースから、集配業務にも活躍する生活に密着した移動手段であることに加えて、自動二輪車(より大きなバイク)へのステップアップにつながるエントリーモデルとしてもバイク市場の形成に大きな役割を担ってきた。と語る。
確かに1980年前後のバイクブームを牽引したのはゼロハン(50cc)人気が主役であった。その後多岐に渡る豊富なバリエーション展開へと発展したことは良く知られている。多くのライダー、つまり多くのバイクユーザーを育てた功績の大きさも見逃せない。何しろ原付免許はもちろんのこと、4輪の普通免許でも運転できる気軽さは侮れない。
そんな原付一種が、新基準に変革されたのはご存知の通り。従来区分だったエンジン排気量50cc以下(0,6kW以下)から次に掲げる新基準に刷新されたのである。
その背景のひとつとしては、2025年11月以降の生産車から適応される国内第4次排出ガス規制がある。従来の50ccでも、技術的に規制クリアは不可能ではないだろう。しかしコストをはじめとする課題や避けられないマイナス要素を考慮するとゼロハンバイクでバランス良く成立する事業継続は難しい。
一方、原付一種の国内保有台数は約418万台に上るそう。従来の原付(一種)愛用者やエントリーユーザーの期待に応える新商品として今回、新基準原付に適応する新型車がリリースされたと言うわけだ。
ラインナップは4モデル。多くの人々の役にたつ原付一種の手軽さや親しみやすさへの思いを込めて各車ネーミングには「Lite(ライト)」の名称が付け加えられた。排気量区分として親しまれた“ゼロハン”(通称)が、今後は「ライト」に変わって行く?! 今回の発表会はその第一歩を踏み出す内容だったと捉えることができるだろう。

区分基準こそ変わったが、原付一種が多くの人の「生活に密着した移動手段」であることに変わりは無い。

50cc(ゼロハン)から「Lite(ライト)」へ

原付一種の通称を、ホンダでは「Lite」と表現することにした。

今発表会でデビューした新型4モデル

ホンダ・Dio 110 Lite(ライト)。

ホンダ・スーパーカブ 110 Lite(ライト)。

ホンダ・スーパーカブ 110 プロ Lite(ライト)。

ホンダ・クロスカブ 110 Lite(ライト)。

各モデルを紹介。カブ Lite シリーズ開発責任者の八木 崇さんが解説。

伝統のスーパーカブ。レトロモダンなそのスタイリングは多くのユーザーに評価されており、高い人気がある、説明するまでもなく今回のスーパーカブ 110 Liteは、同110モデル(原付二種)をベースに造られている。かつての同50も、多くの部分で使用部品が共用化されていたのはご存知の通りだと思うが、今回は前後キャストホイールとチューブレスタイヤをそのまま採用。タイヤ寸法(太さ)も共通化された他、フロントにはABS付き油圧ディスクブレーキを装備し安心感の高い仕上がり。逆に異なっているのは、原付一種に対応した専用メーターを採用。下の写真からもわかる通り、右上部分に速度警告灯を装備。その他液晶デジタル表示によるギアポジションや時計、平均燃費など充実の表示機能を誇っている。
注目のエンジンは、各諸元値や圧縮比も共通であり、基本的にハード部分のほとんどは同じと考えて良いだろう。主な変更点は、吸排気系に若干の手直しを加え、燃調と点火を制御するECUのプログラミングを変更しているもよう。詳細についての公表は控えられたので、あくまで推測の域を出ないが、110比で空気流入量をセーブし、燃料供給を抑えるかたちで下記のグラフで示す出力特性を発揮したと思われる。あるいは専用カムを搭載した可能性も否定はできないが、商品戦略上ユーザー負担を軽減すべく価格を低く抑えることも実現されたので、ECUソフトの調教で賄われたと考えるのが妥当だろう。いずれにせよ下記のエンジン性能曲線図は、50との比較が表現されたもので、排気量的な優位性を存分に活かした太いトルクを発揮し、発進時から余力を感じさせてくれる走行性能が期待できそう。ミッションのギア比も共通、2次減速比は2.500から同Liteは2.642へ低められているから、中低速域ではかえって柔軟で扱いやすいのではないかと想像する。当然ながら最高速性能は原付一種と同様ながら、発進や登坂、加速時では扱いやすくタフな走りを披露してくれることだろう。

スーパーカブ 110 Lite

フロントセンターには新たにLiteのロゴが。
メーターも変更。速度警告灯やギアボジション他の充実表示を誇る。

スーパーカブ 110 プロ Lite

クロスカブ 110 Lite

ABSを採用したディスクブレーキを装備。
吸排気系やECUの手直しで燃焼が調節された。
一人乗り化。前後キャストホイールを装備。

スーパー/クロス カブ Lite のカラーバリエーション

主要諸元(クロスカブ 110 Lite)

クロスカブ 110 Lite

車名・型式:ホンダ・8BH-JA79
全長(mm):1,935
全幅(mm):795
全高(mm):1,110
軸距(mm):1,230
最低地上高(mm):163
シート高(mm):784
車両重量(kg):107
乗車定員(人):1

燃料消費率(km/L):103.0(30km/h)〈1名乗車時〉
WMTCモード値:67.5(クラス 1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m):2.0
エンジン型式:JA76E
エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量(㎤):109
内径×行程(mm):47.0×63.1
圧縮比:10.0
最高出力(kW[PS]/rpm):3.5[4.8] /6,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):6.9[0.70] /3,750
始動方式:セルフ式(キック式併設)
点火方式:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式:圧送飛沫併用式

燃料タンク容量(L):4.1
変速機形式:常時噛合式4段リターン
変速比:
 1速:3.142
 2速:1.833
 3速:1.333
 4速:1.071
減速比(1次/2次):3.421 / 2.642

キャスター(度):27
トレール(mm):78
タイヤ(前/後):80/90-17 M/C 44P / 80/90-17 M/C 44P
ブレーキ形式(前/後):油圧式ディスク(ABS) / 機械式リーディング・トレーリング
サスペンション形式(前/後):テレスコピック式 / スイングアーム式
フレーム形式:バックボーン

製造国:日本
Screenshot

Dio 110 Lite 開発責任者の石田 慎一郎さん。

スーパーカブと同様にDio 110をベースに開発されている。下記に示す通り、“気軽に使える日常の移動手段を守る”をキーワードに開発。従来の原付一種ユーザーの特徴を考慮し、ライダーを選ばない親しみやすさを大切にされたそう。車体や足回りの基本はDio 110(原付二種)を流用。ユニットスイングで搭載されるeSPエンジンも
同じだそう。ただし空気の流入量をおさえ、燃調もセーブ。つまりそれらを制御するECUのプログラミングが変更されているもよう。結果として下記に示す性能曲線図ではTACT(50cc)との比較ながら、中低速域に確かな優位性を披露する豊かなトルクを発揮していることがわかる。
特にこだわったのは、シートベースから新設計することで、クッション厚を薄くすることなく、足つき性の良い快適なシートが専用開発された点にある。メットインスペースが18Lから17Lへと若干小さくなっているが、より多くの人にとって違和感なく着座できる気軽な乗り味が追求された点は見逃せない魅力点となるだろう。

スーパーカブと同様にベースは原付二種のDio 110。

多くのユーザーにとって親しみやすい様、Lite 専用にデザインされたシート。

3タイプ用意されたDio Lite のカラーバリエーション

主要諸元

Dio 110 Lite

車名・型式:ホンダ・2BH-JK46
全長(mm):1,870
全幅(mm):685
全高(mm):1,100
軸距(mm):1,255
最低地上高(mm):150
シート高(mm):745
車両重量(kg):95
乗車定員(人):1

燃料消費率(km/L):72.5(30km/h)〈1名乗車時〉
WMTCモード値:56.6(クラス 1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m):1.8
エンジン型式:JK46E
エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量(㎤):109
内径×行程(mm):47.0×63.1
圧縮比:10.0
最高出力(kW[PS]/rpm):3.7[5.0] /5,250
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):7.6[0.77] /4,000
始動方式:セルフ式
点火方式:フルトランジスタ式バッテリー点火

燃料タンク容量(L):4.9
変速機形式:無段変速式(Vマチック)
タイヤ(前/後):80/90-14 M/C 40P / 90/90-14 M/C 46P
ブレーキ形式(前/後):油圧式ディスク / 機械式リーディング・トレーリング
サスペンション形式(前/後):テレスコピック式 / ユニットスイング式
フレーム形式:アンダーボーン

製造国:ベトナム
Screenshot

好調な滑り出しの販売状況を伝える営業領域責任者の木村康太さん。

下記に示す通り、今回の新しい4モデルは、コミューター及びドリーム店のホンダショップ約3700店舗で販売される。まだ発売前の10月16日時点で順調な受注状況にあるそう。やはり誰にも親しみやすいバイクのニーズは確実に存在していることの証だろう。外観上は原付二種の110モデルと共通するが、「Lite」のロゴが原付一種であることを示してる。
また新基準原付の理解を広めるために、ホンダの公式ホームページ内に「特設ページ」が設けられているので、一度その内容を確認しておくと良いだろう。

新基準原付についての詳細はこちら。

当該ホームページURL:https://www.honda.co.jp/Lite/