最新の排ガス規制に対応して欧州再登場

欧州で発表されたWR125Rの2025年型は、ヤマハのデュアルスポーツ世界における新たな入り口となる。かつて Euro-4 規制導入を機に姿を消したWR125Rを、現代の技術と規制対応力をもって甦らせた。
WR125R 復活の核となるのが、125 cc の水冷SOHC 4バルブエンジンである。ヤマハはこのエンジンに可変バルブ作動機構(VVA)を組み込むことで、低回転域から中回転域の出力を底上げしつつ、高回転側でも性能を維持する制御を実現。最大出力は約10.7 kW(14.5 PS)@1万rpm、最大トルクは11 Nm程度を発生する仕様とされている。
環境規制対応も図られ、二重触媒、O₂センサー、蒸発ガス管理システムを備え、EUの最新排ガス基準(Euro 5+)をクリア。
車体面ではセミダブルクレードル鋼管フレームを採用し、足回りには前41 mmのKYB正立フォーク、後ろにはリンク式モノクロスサスペンションを備える。 タイヤは前21インチ、後18インチのデュアルスポーツ仕様を持たせ、舗装路/非舗装路双方での運動性を確保。
シート高は875 mmと公表され、小柄なライダーにも配慮された設計。 装備面ではLCDマルチファンクションメーター、ABS、スマホ連携機能(MyRideアプリ対応)も導入される予定である。
デュアルスポーツとしての方向性と乗り味の狙い

WR125Rの復活は、ヤマハが「軽排気量でオフロードを楽しみたいユーザー層」にアプローチする意図を色濃く示している。発表記事でも「若いライダーがアドベンチャーの世界への入り口を持てるように」との狙いが明記されている。
このモデルはレース用途を想定した過度なセッティングではなく、街乗りから林道まで広く対応可能な“使いやすいデュアルスポーツ”として設計されており、サスペンションは底突き耐性の設計を含む柔軟性を持つ。 車体設計と外装意匠も、立ち乗り/座り乗りの移行がしやすいよう、シェイプとパーツ配置に工夫を凝らしている。
また、軽量性とのバランスを取りつつ、ライダーに安心感を与える挙動も重視された設計だ。たとえば ABS 装備やタイヤ選定、剛性配分といった点において、初心者や初めてオフロードに触れる層にも敷居を下げる仕様が見受けられる。
戦略的意義と市場ポジショニング

WR125R復活は、ヤマハにとってブランド戦略上も幾つかの意味を持つ。まず、かつてのWR125Rは2009年に登場し、2016年のEuro-4規制導入により国内欧州市場モデルは生産終了された。
再びのこのモデルが登場することで、新たな顧客層、特に若者や免許取得直後の層をデュアルスポーツ・アドベンチャーシリーズへ誘導する役割を果たす。より上位モデル(たとえば Ténéré シリーズや WR/YZF 系列)へのステップアップへの“導線”としても位置づけられる。
今後の課題と期待する展開

日本への導入だが、残念ながら現時点での導入発表はない。セロー250の生産終了からしばらくたち、現在のヤマハには大型のデュアルパーパスモデルしかラインアップされておらず、かつてのセローのような入門モデルがないのは寂しい。
もしWR125Rが日本に導入されれば、軽量・入門オフロードクラスの活性化が見込まれるだけでなく、アフターパーツマーケット市場も反応をみせるだろう。ちなみに欧州では、ヤマハ公式もバリエーション展開やアクセサリー展開を準備中とのことだ。
WR125R の復活は、ヤマハのラインアップに「手の届く冒険心」を再び取り戻す試みと言える。125 cc という枠を越えて、泥道も舗装路も楽しめるデュアルスポーツとしての可能性を感じさせるモデルだ。もし日本市場への導入が実現すれば、軽量オフローダー好きを刺激することになるだろう。価格はまだ公表されておらず、発表が待ち遠しい。
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