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今日は何の日?■デボネアが最終モデル3代目を迎える
1992(平成4)年10月26日、三菱自動車は最高級セダン「デボネア」の3代目を発売した。1964年の誕生以降、主に三菱グループ幹部のためのショーファーカーとして活躍していたデボネアは、2代目を経て3代目にモデルチェンジ。3代目は、フラッグシップらしく先進技術満載で登場したが、1999年に生産を終えてデボネア35年の歴史に幕を降ろした。

アメ車風の斬新なスタイリングで登場したデボネア
1960年代初頭の三菱重工は、本格的に自動車事業に参入し、軽の「ミニカ」、大衆車の「三菱500」や「コルト600 &1000」を発売した。そして、総合自動車メーカーを目指す三菱が1964年に投入したのが、最高級セダン「デボネア」だ。

デボネアは、トヨタの「トヨペットクラウン」や日産自動車「セドリック/グロリア」に対抗できる日本を代表する最高級車。特に会社の幹部や政府の要人が運転手付きで乗るようなショーファーカーだった。注目されたのは、元GMの設計者がデザインした斬新なアメ車風スタイルと、ボンネットとテールの両サイドにエッジを立て、太いフロントバンパーに広いフロントグリルなどの豪華さは目を見張るものがあった。

パワートレインは、クラストップを誇る最高出力105ps/最大トルク16.6kgmを発揮する2.0L 直6 OHVエンジンと4速MT(後に3速ATを追加)の組み合わせで、駆動方式はFR。車両価格は、クラウンより20万円高い125万円に設定。当時の価値では、約1370万円に相当する。

その斬新なスタイリングから、道を走れば確実に注目される存在だったが、残念ながらトヨタと日産が主導する高級車市場で存在感を示すことはできなかった。その後、22年間ほぼそのまま、基本設計やデザインを変えずに販売されたことから“走るシーラカンス”と称された。
現代風のスタイリングとなった2代目デボネアV
1986年8月、22年ぶりにモデルチェンジして「デボネアV」が発売された。VIPとVICTORY、そしてV型エンジンを意味する「V」を冠したデボネアは、オーソドックスな現代風で風格あるスタイリングに変貌した。

パワートレインは、新開発の105ps/16.1kgmを発揮する2.0L V6 SOHC、150ps/22.5kgmの3.0L V6 SOHCの2種エンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFに変更され、より広い室内空間が実現された。


装備については、高級車にふさわしい先進性の高いものを搭載。ドアの開閉に連動してステアリングホイールが上がり、乗り降りを容易にするハイチルト機構が国産車で初めて採用。またデュアルフルオートエアコンにはシガーライターをオンにすると自動的に強制排気装置が起動して室内をクリーンに保つ機能などが装備された。
また、ドイツのチューニングメーカーAMG社とタイアップしコラボしてチューンナップした「3000ロイヤルAMG」が追加された話題を集めた。
三菱の先進技術をすべて投入した3代目
2代目デボネアVに続く3代目は、1992年10月のこの日に発売。当時の三菱は、パジェロに代表されるRVブームをけん引して絶好調! そんな時期に登場した3代目は、三菱が持てる先進技術のすべてを注ぎ、サイズ、スタイル、性能において最高レベルを追求した。

ボディは、全長110mm、全幅90mmを拡大し、スタイリングは高級車らしい大型の縦桟基調グリルや厚みのあるフード、伸びやかなラインで形成されたダイナミックな曲線美構成によって堂々としたイメージを強調。またインテリアはラウンディッシュなインパネや厳選された素材を使用し、ゆとりのある広い室内空間が実現された。

パワートレインは、新開発の最高出力260ps/最大トルク33.0kgmを発揮する3.5L V6 DOHC、170ps/19.0kgmの3.0L V6 SOHCの2種エンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFが踏襲された。

最先端技術としては、レーザーで先行車との車間距離が近づきすぎると、警報やエンジンブレーキによって減速する乗用車世界初の“ディスタンスウォーニング”、後退時に後方映像をコンソールの画面に表示する“リアビューモニター”、GPSとジャイロセンサーを利用したカーナビ、酸素濃度の高い空気を送り出す“O₂リッチャー”など、フラッグシップにふさわしい装備が搭載された。

車両価格は、310.8万~669.0万円で1999年12月まで販売されたが、これをもってデボネアは35年にわたる歴史に幕を降ろした。
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デボネアの後継の役目は、2000年2月にデビューした「プラウディア」と「ディグニティ」に引き継がれたが、1年余りで生産を終えた。2012年に2代目が復活したが、2代目はプラウディアが日産「フーガ」、ディグニティは「シーマ」のOEMモデルとなり、こちらも2016年には販売を終え、三菱の最高級セダンはここで幕を降ろしたのだ。
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